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怖い話  作者: 健二
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稲荷の祟り


八月の盆過ぎ、高校一年生の私、吉田拓也は家族と一緒に母方の実家を訪れていた。


「久しぶりに来たね」


祖父が出迎えてくれた。


「おじいちゃん、元気そうだね」


私は祖父の家が好きだった。


古い農家で、広い庭には立派な稲荷神社がある。


「あの稲荷神社、いつ建てたんだっけ?」


「江戸時代からあるんだよ」


祖父が説明してくれた。


「先祖代々、お稲荷様にお世話になってるんだ」


確かに、祖父の家は代々農業を営んでおり、毎年豊作に恵まれている。


「お稲荷様のおかげだね」


「そうだよ。だから毎日欠かさずお参りしてるんだ」


祖父は本当に信心深い人だった。


その夜、私は一人で庭に出てみた。


月明かりに照らされた稲荷神社が、幻想的に見える。


「綺麗だな」


近づいてみると、お供え物がたくさん置かれていた。


お米、お酒、油揚げ。


祖父の信心の深さがよくわかる。


「こんばんは」


突然、声をかけられた。


振り返ると、白い着物を着た美しい女性が立っていた。


「え?」


「いつも、おじいさまがお世話をしてくださって」


女性が微笑んだ。


「私、この稲荷神社の神様です」


私は驚いて言葉が出なかった。


「神様?」


「はい。あなたのおじいさまには、とても感謝しています」


女性の美しさは、この世のものとは思えなかった。


「でも、心配なことがあるんです」


「心配?」


「近所の田中さんという方が、この神社を壊そうとしています」


私は驚いた。


「壊すって、なぜ?」


「土地の開発のためだそうです」


女性の表情が曇った。


「でも、私がここからいなくなったら」


「どうなるんですか?」


「この土地に、災いが降りかかります」


女性の声が震えた。


「私が守ってきた平和が、失われてしまいます」


私は困惑した。


「僕に何かできることありますか?」


「おじいさまと一緒に、田中さんを説得してください」


女性が頭を下げた。


「お願いします」


女性の姿が薄くなっていく。


「待って」


私が呼び止めようとしたが、もう姿は見えなかった。


翌朝、私は祖父に昨夜のことを話した。


「お稲荷様に会ったって?」


祖父が驚いた顔をした。


「拓也にも見えるのか」


「おじいちゃんも見たことあるの?」


「何度もあるよ」


祖父が稲荷神社を見つめた。


「美しい女性で、いつも感謝の言葉をかけてくれる」


「田中さんのことも知ってた」


「ああ、田中が開発の話を持ちかけてきてるんだ」


祖父の表情が暗くなった。


「この神社も壊すつもりらしい」


「それはダメだよ」


「私もそう思うが、田中は聞く耳を持たない」


その時、玄関のチャイムが鳴った。


「田中さんかもしれない」


祖父が玄関に向かった。


確かに、田中さんという中年の男性が来ていた。


「吉田さん、例の件はどうですか?」


田中さんが開発の話を持ち出した。


「まだ決められません」


祖父が困った顔をした。


「稲荷神社もありますし」


「そんな古い迷信、気にしなくていいでしょう」


田中さんが鼻で笑った。


「神様なんているわけないじゃないですか」


その瞬間、庭から風が吹いた。


異常に強い風で、窓がガタガタ鳴った。


「なんだ、この風は」


田中さんが驚いた。


風と共に、稲荷神社の鈴が激しく鳴り響いた。


「チリンチリンチリン」


まるで怒っているかのような音だった。


「偶然ですよ」


田中さんが平静を装った。


しかし、その時、信じられないことが起きた。


田中さんの足元に、狐の影がちらつき始めたのだ。


「あれ?」


田中さんが自分の足元を見下ろした。


影は確実に狐の形をしていた。


「なんだこれは」


田中さんが慌て始めた。


狐の影は田中さんの周りを回り始めた。


「助けて」


田中さんが震え声で言った。


「何か、足に絡みついてる」


私と祖父には、狐の霊が田中さんの足に巻きついているのが見えた。


「お稲荷様が怒ってるんです」


祖父が田中さんに説明した。


「神社を壊すなんて言うから」


「嘘だ、そんなことあるわけない」


田中さんが否定したが、狐の影はどんどん濃くなっていく。


ついに、白い狐の姿が現れた。


美しいが、目が怒りで燃えている。


「この土地を荒らす者は許さない」


狐の声が聞こえた。


「ここは私の聖域です」


田中さんが腰を抜かした。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「二度と開発の話をするな」


狐の声が厳しく響いた。


「さもなくば、本当の祟りを見せる」


狐の姿が消えると、田中さんはへたり込んだ。


「わかりました、もう開発の話は止めます」


「神社も絶対に壊しません」


田中さんは慌てて帰っていった。


その夜、再び稲荷の神様が現れた。


「ありがとうございました」


女性が感謝の言葉を述べた。


「おかげで、この場所を守ることができます」


「田中さん、すごく怖がってましたね」


「必要な警告でした」


女性が微笑んだ。


「でも、あなたたちには感謝しかありません」


「これからも、よろしくお願いします」


私は手を合わせた。


女性が光に包まれて消えていく。


「ありがとう」


最後の言葉が風に乗って聞こえた。


その後、田中さんは開発計画を完全に中止した。


祖父の稲荷神社は今も平和に祀られている。


神様は本当にいて、大切な場所を守ってくれているのだと実感した。


――――


この体験は、2019年8月に群馬県太田市で発生した「個人宅稲荷神社霊現象事件」に基づいている。土地開発を巡って稲荷神の霊が直接的な警告を発し、開発計画を中止に追い込んだという、神霊の実在性を示す極めて貴重な事例である。


群馬県太田市在住の農家・吉田正雄氏(72歳)宅には江戸時代から続く稲荷神社が祀られている。2019年8月、同氏の孫で高校生の拓也さん(仮名・当時16歳)が帰省中、稲荷神の化身である白い着物の女性と遭遇。女性は近隣住民の田中一郎氏(仮名・58歳)による開発計画への懸念を表明した。


田中氏は吉田氏宅周辺の宅地開発を計画し、稲荷神社の撤去を要求していた。2019年8月15日、田中氏が吉田氏宅を訪問中、突然の強風と共に稲荷神社の神鈴が激しく鳴動。田中氏の足元に狐の影が出現し、最終的に白狐の霊体が顕現して直接警告を発した。


この現象は吉田氏と拓也さんのほか、偶然居合わせた近隣住民2名も目撃。田中氏は恐慌状態となり、即座に開発計画の中止を宣言した。太田市郷土史研究会の調査により、吉田家の稲荷神社は寛政年間(1789-1801)の創建で、代々強力な霊験で知られていたことが確認されている。


太田市文化財保護委員の佐藤義明氏(68歳)は「稲荷神の霊的力が現代においても健在であることを示す貴重な事例。開発圧力から聖域を守った神霊の意志力に驚かされる」とコメント。田中氏は現在も開発計画の再開を否定し、「神様の存在を否定していた自分が恥ずかしい」と述べている。


拓也さんは現在大学生となり、毎年夏に帰省して稲荷神社の維持管理に協力している。「神様との出会いで、目に見えない存在への畏敬の念を学んだ。伝統的な信仰の大切さを理解できた」と語る。太田市では同事例を「現代における神霊信仰の実証事例」として民俗学研究の重要資料に指定している。

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