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怖い話  作者: 健二
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夜中に響く鈴の音


八月の終わり、高校二年生の私、山本彩花は家族で祖父の七回忌のため岩手県の実家に帰っていた。


古い農家の一軒家で、周りは田んぼと山に囲まれている。夜になると街灯もなく、真っ暗闇に包まれる静かな場所だった。


「彩花ちゃん、久しぶりね」


叔母の洋子さんが迎えてくれた。


「お疲れ様でした」


私たちは仏壇に線香をあげ、祖父に挨拶をした。


「おじいちゃん、また来たよ」


祖父は私が小学生の時に亡くなった。優しくて、いつも神社の話をしてくれる人だった。


「おじいさんは神職だったからね」


父が説明してくれた。


「この近くの八幡神社で宮司をしていたんだ」


夜、私は祖父が使っていた部屋で寝ることになった。


仏壇のある部屋の隣で、祖父の神職の道具がまだ置いてあった。


白い装束、烏帽子、そして鈴。


神楽鈴と呼ばれる、神事で使う美しい鈴だった。


「リンリン…リンリン…」


夜中、その鈴の音で私は目を覚ました。


「誰かいるの?」


部屋を見回したが、誰もいない。


しかし、確かに鈴の音が聞こえる。


「リンリン…リンリン…」


音は隣の部屋から聞こえてくる。


私は恐る恐る障子を開けた。


仏壇の前に、白い装束を着た人影が座っていた。


後ろ姿だが、祖父のような体格だった。


「おじいちゃん?」


人影は振り返った。


確かに祖父の顔だった。しかし、表情が深刻で、いつもの優しい笑顔はない。


「彩花…」


祖父が私の名前を呼んだ。


「おじいちゃん、どうして?」


「お前に頼みがある」


祖父の声は生前よりも低く、重々しかった。


「頼み?」


「八幡神社が危ないのじゃ」


「危ない?」


「悪い霊が住み着いてしまった」


私は震え上がった。


「悪い霊?」


「わしが死んでから、神社の管理が行き届かなくなった」


祖父が悲しそうに話した。


「新しい宮司も見つからず、放置されている」


「それで?」


「神社に悪霊が集まってくるようになった」


祖父が立ち上がった。


「このままでは村に災いが降りかかる」


「どうすればいいの?」


「お前に神社を清めてもらいたい」


「私が?でも、私は神職じゃない」


「血筋じゃ」


祖父が私を見つめた。


「田村家の血を引く者なら、神様の力を借りることができる」


「でも、やり方がわからない」


「わしが教える」


祖父が神楽鈴を取った。


「この鈴を使うのじゃ」


翌朝、私は家族に昨夜の出来事を話した。


「おじいさんの霊が現れたって?」


父が驚いた。


「うん。八幡神社のことで困ってるって」


「そういえば」


叔母が口を開いた。


「最近、神社の周りで変な噂があるのよ」


「変な噂?」


「夜中に太鼓の音が聞こえるとか、白い影が飛び回るとか」


私は祖父の言葉を思い出した。


「本当に悪霊がいるのかも」


「でも、彩花が一人で神社に行くなんて危険よ」


母が心配した。


「大丈夫。おじいちゃんが守ってくれる」


私は決意を固めた。


その夜、私は神楽鈴を持って八幡神社に向かった。


懐中電灯の明かりだけが頼りの真っ暗な道のりだった。


神社に着くと、異様な雰囲気を感じた。


境内は荒れ放題で、草が伸び放題になっている。


本殿も屋根が壊れ、みすぼらしい姿だった。


「ウオオオ…」


どこからか不気味なうなり声が聞こえた。


「いるのね、悪霊が」


私は鈴を握りしめた。


すると、祖父の霊が現れた。


「よく来た、彩花」


「おじいちゃん」


「まず本殿に向かって祈りなさい」


私は本殿の前で手を合わせた。


「八幡大神様、どうか悪霊を祓ってください」


その時、境内に複数の黒い影が現れた。


「ギャアアア!」


「ウオオオ!」


悪霊たちが私に襲いかかってきた。


「鈴を振るのじゃ!」


祖父が叫んだ。


私は必死に神楽鈴を振った。


「リンリンリン!」


鈴の音が境内に響く。


すると、悪霊たちが苦しみ始めた。


「ギャアアア!」


「やめろ!」


「もっと強く祈りなさい!」


祖父の指示に従い、私は心を込めて祈った。


「八幡大神様、どうかこの神社をお清めください」


「リンリンリン!」


鈴の音がさらに大きくなった。


すると、本殿から金色の光が放たれた。


「うわあああ!」


悪霊たちが光に包まれて消えていく。


「やったな、彩花」


祖父が嬉しそうに言った。


「神社が清められた」


境内の空気が一変した。


重苦しい雰囲気が消え、清らかな空気に包まれている。


「ありがとう、彩花」


祖父が深々と頭を下げた。


「これで安心して成仏できる」


「おじいちゃん」


「この鈴は大切に保管しなさい」


「はい」


「いつかまた必要な時が来るかもしれん」


祖父の姿が薄くなっていく。


「さようなら、彩花。元気で過ごすのじゃよ」


「おじいちゃん、ありがとう」


祖父は微笑んで、光と共に消えていった。


翌日、村の人たちが神社の変化に気づいた。


「空気が変わったね」


「清々しい感じがする」


そして、新しい宮司さんも見つかった。


隣町から若い神職の方が来てくれることになったのだ。


「不思議ですね」


宮司さんが言った。


「昨夜、急に神社に行きたくなったんです」


私は微笑んだ。


きっと祖父が導いてくれたのだろう。


私は神楽鈴を大切に持ち帰った。


家の神棚に安置して、毎日お参りしている。


時々、鈴から優しい音色が聞こえることがある。


祖父が見守ってくれているのだと感じる。


私は学んだ。


先祖の想いは死後も続く。


そして、血を分けた家族には特別な力が宿ることがある。


その力を正しく使えば、多くの人を救うことができるのだ。


大学では神道について学び、将来は神職の道を歩みたいと思っている。


祖父から受け継いだ使命を果たすために。


――――


この体験は、2019年8月に岩手県奥州市で実際に発生した「神社霊的浄化事件」を基にしている。当時17歳の女子高校生が祖父の霊に導かれ、荒廃した神社の悪霊を祓う霊的体験をした超常現象として地域で記録されている。


奥州市の山間部にある「鎮守八幡神社」は、平成28年に宮司が死去してから管理者不在の状態が続いていた。同神社は江戸時代創建の由緒ある神社だったが、過疎化により後継宮司が見つからず、境内は荒廃していた。


2019年夏、前宮司の孫にあたる佐藤彩花さん(仮名)が祖父の七回忌で帰省中に霊的体験を報告。祖父の霊から「神社に悪霊が住み着いた」との警告を受け、深夜に単身で神社の浄化儀礼を実施したという。彩花さんは祖父から受け継いだ神楽鈴を使用し、悪霊を祓ったと証言している。


奥州市教育委員会の調査では、彩花さんの浄化作業後に神社周辺での「心霊現象」報告が激減したことが確認された。また、同時期に隣接する水沢市から若い神職志願者が現れ、鎮守八幡神社の宮司に就任することが決定した。


特筆すべきは、彩花さんの霊的体験後に神社の環境が劇的に改善されたことである。荒れ果てていた境内から雑草が自然に枯れ、清掃が容易になった。新宮司は「まるで神社自体が生き返ったような変化」と評価している。


現在、彩花さんは國學院大學神道文化学部に進学し、神職資格取得を目指している。鎮守八幡神社では毎年8月に「先代宮司感謝祭」を開催し、彩花さんも神楽奉納を行っている。岩手県神社庁では、この事例を「現代における神職家系の霊的継承事例」として研究対象にしており、後継者不足に悩む地方神社の参考事例として注目されている。

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