「夏のキャンプ」
ある夏、AとB、Cは友達と一緒にキャンプに出かけることにした。山の中にあるキャンプ場は、自然に囲まれた静かな場所で、みんなはバーベキューやハイキングを楽しむことにワクワクしていた。
キャンプの最初の夜、みんなが焚火を囲んでいると、Bが思い出したようにインターネットで見つけた都市伝説を話し始めた。「この山の近くには、夜になると現れる人柱の霊がいるらしいよ。夜中に呼ぶと、亡くなった人の声が聞こえるって」とBが言うと、周りは興奮しながら「本当に?」と反応した。
Aは怖がりながらも、都市伝説が面白くて聞いていたが、Cは「そんなの気にしないで楽しもうよ」と笑った。しかし、日が沈むにつれて空が暗くなると、みんなの顔に少しずつ緊張が見え始めた。
夜が更け、みんながテントに入った時、Aはふと外に出て、星空を見たくなった。外に出ると、静まりかえった山の中、月明かりだけが周囲をかすかに照らしていた。すると、微かに「助けて…」という声が聞こえた。Aは心臓がバクバクし、思わず振り返ったが、誰もいない。
それでも、好奇心が勝り、声の方へ向かうことにした。「これはBのいたずらかもしれない」と思いつつ、Aは少しずつ声のする方に近づいていく。しかし、その声はますますはっきりと聞こえ、「助けて、ここにいるから…」と繰り返された。
恐怖心が高まる中、Aは気づいた。まるで自分の内側から共鳴するような声、そしてその声がまさに自分自身の心の奥に響いているようだった。背筋に寒気が走り、Aは振り返ってテントの灯りを見つけた。
「戻らなきゃ…」と感じたAは急いでテントに戻り、BとCに話した。「外で声が聞こえた。誰かが助けを求めているみたいだ」と告げた。でも、Bは笑いながら「それ、君の思い込みだろ」と言った。
その夜、Aはなかなか眠れずにいた。すると再び、意識が夢の中に沈んでいき、「助けて、助けて…」という声が響く。目が覚めると、静寂の中、Aは恐怖に駆られて再び周囲を見渡した。
翌朝、Aは目が覚めた。BとCはキャンプファイヤーの準備をしていたが、Aは昨晩の出来事を話すのを躊躇った。でも、皆が楽しむ中で、Aの心の中には未解決の不安が潜んでいた。
昼間の活動を終え、再びキャンプファイヤーの夜が訪れた。星空の下、Aは少し勇気を出して「昨夜、外で声が聞こえたんだ」と話した。すると、Cは「その声、また聞こえたの?」と言って少し真剣な顔をした。
「この山、この地域に住んでいた人の中には、夜中に行方不明になった人がいるんだ。だから、彼の霊がさまよっているという話があるみたい」とBが言った。周りの雰囲気は一変し、少し不安になってきた。
次の日、みんなが帰る準備をしていると、Aはどうしても声の正体を確かめたくなり、BとCに一緒についてきてもらい、昨晩の声のした場所へ向かうことにした。周囲が静まり返る中、声の方向に進んでいくと、再び「助けて、…」という声が聞こえてきた。
心臓が高鳴り、Aは立ちすくんだ。「やっぱり、誰かいる…!」と言いかけたその時、Cが「行こう、一緒に戻ろう!」と急かした。だが、Aは気づいた。その声が呼ぶ先には何かが待っている気がした。
その瞬間、横過ぎた風が一瞬で周囲を変え、その声が消えた。Aは振り返ってBとCに「何かが…」と言いかけた途端、二人が消えた。周りにはただの静寂が広がるだけだった。「B、C!」と叫ぶA。だがその声は山の中に消えていく。
数時間後、Aは何とかキャンプ場に戻り、友人たちを探した。だが、二人と連絡が取れず、最後に聞いた声が「あそこにいる…」ということで頭がいっぱいになっていた。
その夏のキャンプから数年が経った今でも、BとCは連絡が付かず行方不明のまま。Aはあの声とともに友人たちの声が聞こえることを悔やみ続けていた。あの深夜の不気味な声は、今でも心の奥にまとわりついて離れないのだった。