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怖い話  作者: 健二
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「夏の深夜の影」

ある夏の夜、Aは友人のBとCを呼んで、近所の公園で夜のバーベキューを楽しむことにした。外は蒸し暑く、星が瞬く中、三人は楽しみながら食事をしていた。しかし、徐々に周囲が暗くなり、夜も更けてくると不気味な雰囲気が漂ってきた。


「さぁ、花火をしよう!」とBが提案し、Cもそのアイデアに乗った。Aは少し不安を感じたが、皆で楽しむ雰囲気に乗せられ、ためらいながらも同意した。すると、Bは持ってきた花火を取り出し、空に打ち上げた。


花火が夜空を彩る中、三人は笑い合って楽しんでいた。しかし、ふと公園の奥にある古びた木の下に目をやると、何か黒い影が見えた。Aは不気味に思って「ちょっとあそこ、見てみようよ」と言ったが、BとCは「なんにもないぞ」「お前怖がりだな」と笑い飛ばした。


その後、花火の音が静まり、夜風だけが吹く中、Aは再び影に目を向けると、今度はその影が動いているのが見えた。その場の空気が一瞬重くなり、Aは背筋が寒くなった。「なんか気持ち悪い」と言って、皆に知らせたが、BとCはまだ笑っていた。


気になるAは、とうとう一人で影の方へ進むことにした。「ちょっと見に行ってくる」と言うと、「馬鹿だな」とBが言ったが、Aは意を決してその場を離れた。


暗闇の中、Aが近づくと、影はピタリと動かなくなった。心臓が高鳴る中、唐突に頭が真っ白になり、一瞬の間に声が聞こえてきた。「助けて…」その声はかすかに響くが、心に何か重たいものが乗ってくるような感覚だった。


Aは恐怖で動けず、その場で立ち尽くすと、影はゆっくりと振り向いた。顔が見えないその影は、まるでそこに存在するはずのない誰かのようだった。突然、その影は「おいで…」と言いながら、指を指した。


動悸が激しくなる中、Aは周囲を振り返った。BとCが遠くに立っているのが見える。しかし、彼らはまだ笑っているように見えた。Aはただ、逃げ出すことを考えたが、足がすくんで動けない。


その瞬間、背後から「A、戻ってきて!」とBの声が聞こえた。Aは意を決して振り返ると、Bが懸命に手を振っているのが見えた。その瞬間、影は動き出し、Aを捕まえようとしてきた。


Aは恐怖に駆られ、全力で走り出した。振り返ると、影は追いかけてきているように感じた。心臓が破裂しそうなほどの速さで走り続け、ようやくBとCの元にたどり着いた。


「どうしたの?顔色が悪いよ」とCが心配そうに言ったが、Aはその声を聞いても恐怖のあまり何も言えなかった。Bは「何かが見えたの?」と尋ねるが、Aはただ「行こう。ここから離れよう」と叫んだ。


その後、三人は無我夢中でその公園を離れ、自宅に戻った。翌日、Aはその夜の出来事を思い出しながらも、何も言わなかった。しかし、その後も毎晩寝る前に、あの影のことを頭に思い浮かべると、不気味に心がざわついた。


夏の夜、あの公園に近づくことは決してなかったが、時折、夢の中で「おいで」と囁く声が響くことに、Aは恐怖を感じ続けていた。

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