第5章:円安が背中を押す
「今、日本に行くのが一番お得だ」──
この言葉は、観光客向けガイドブックのキャッチコピーではありません。
2025年春、海外の旅行者たちの間で、現実に交わされている感覚です。
なぜなら、日本円は、今──安い。
経済の構造は時に冷酷です。
けれどその分、明確でもあります。
為替相場が1ドル=150円台を超えた現在、海外から見た日本は、
**「魅力がある国」ではなく、「手が届く国」**に変わりました。
それはつまり──
“行ける場所”から“今、行くべき場所”へと、意味が変わったということです。
この変化は、万博というイベントの性格と、驚くほど相性が良い。
万博とは、テーマや展示の豪華さではなく、
「今、この時期に世界中が集まっている」という空気そのものが価値になるイベントです。
そして、その空気を感じに行こうとしたとき、
「予算的に不可能ではない」と思えるかどうかは、構造的に極めて重要な要因です。
今、日本はそのハードルを下げている。
物価の安さ、旅行コストの安さ、交通網の整備、治安の良さ──
そこに万博という“開催理由”が乗る。
つまり、「行ける上に、行く口実まである」という構造が、今まさに整っているのです。
構造として考えてみましょう。
かつて、欧州や北米から見た日本旅行は「人生に一度あるかどうか」の高嶺の花でした。
けれど2025年春、為替という構造の変化によって、それは**“年に一度でも行ける選択肢”**に近づいています。
この差は、観光地にとっては決定的です。
そしてその構造変化のなかで開催されるのが──万博です。
さらに、為替が生むもう一つの効果があります。
それは、「海外勢の万博へのコミットの高さ」です。
出展国側から見れば、建設資材・人件費・宿泊・広報・すべてが割安で済む。
だからこそ、ギリギリまで調整を重ね、驚くほどの完成率で会期初日を迎えられた。
そう──
円安は、来場者だけでなく、運営側・出展側のパフォーマンスまで底上げした構造的後押しでもあったのです。
訪れやすい。
完成度も高い。
国際的な空気が満ちている。
しかも、今ならお得。
それが、2025年春の日本であり、大阪・関西万博なのです。
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補足:2025年の円安と訪日旅行の割安感 ~ナレーターより~
2025年春時点での円相場は、1ドル=150円台と、2019年の110円台に比べて約35%の円安となっている。これは、ドルやユーロ、ウォン、豪ドルなど主要通貨を持つ旅行者にとって、日本での支出が大幅に割安になることを意味する。
たとえば、同じ1000ドルを使う場合、2019年には約11万円分だったが、2025年には15万円分の購買力がある計算となる。実際、2024年後半から訪日客数は大きく回復し、2025年春にはパンデミック前を上回る水準に達している。
日本は今、「物価は変わらず、為替で得する国」として、観光地図上での魅力が再評価されつつある。