夫婦の夜
「寝よっか」
食事も済み、見てもないテレビを消した時だった。
その一言で睡眠モードに移行した。
寝室に二人で移動する。
仕事で疲れて入るのが億劫なのか、夫はお風呂に入っていない。
ま、いっか。
夏の暑い日なんかは臭くて嫌だけどさ
今日はあまり汗をかいてないのか気にならない。
「電気つけて~」
古い一軒家だからドア横スイッチは無い。
彼は闇の中、電気の紐を手探りしている。
ライトがつき、部屋を照らす。
夫がさっさと布団に入る。
シングルをふたりで使ってるので同じ布団に潜り込む。
明日は休みだから夜更かし出来るぜ、と
漫画を読み始める夫。
横になった夫の腕に頭をのせる。
夫側に背中を向ける。
頭いっこぶん下になって足を後ろに回して絡ませるのが
包まれてる感があっていたくお気に入りだ。
さて、お尻を夫にくっつけ…
…違和感。
「…これなに?」
布の感触。
夫は布団の中なのにパンツ(ボクサータイプ)をはいていた。
「だって今日寒いじゃん?ズボンはぬいだからパンツは許してよ」
「やだ~!何でよ~脱いで~」
なんて奴だ!許せぬ。
私は躊躇わず手でずらしたパンツを足で引っ掛けて下ろす。
僅かに抵抗していたが足元までくるとなすがままだ。
背伸びして彼の足首に引っかかるパンツをひったくる。
「こんなものっ!」
布団のどっかににっくきパンツを追いやる。
改めてお尻をくっつける。
あぁ、これこれ。
毛むくじゃらであっついコレがないとね~。
尾てい骨あたりがあったまって気持ちいい。
冷たいって呟きは完全無視した。
お尻じゃ飽きたらず手探りであれに触れる。
私、このふにゃふにゃのが好きなんだよね。
後ろ手でニギニギしながら夫の冷たい足を自分の足であっためる。
夫は手足の先が冷えやすい。
私、手足の先は温かいけどお尻まわりが冷えやすい。
ふたりは暖を供給しあえる仲なのだ。
あぁ、幸せ。
そんな私を尻目に
毎朝、パンツ探すの大変なんだよ
と夫は抗議していた。