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500の問答  作者: Mukuro03
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2.愚答

2.愚答


 ヌエが一番に動く。

 二人の前に立ち塞がり、罰枝を構える。

「…教会関係者には見えないが、彼女に何用かな? 」

 ヌエは背も体格もかなりある。

 その上、いつもは少し屈んで二メートル。

 両肩が内側に入って、左右二メートル。

 その体格が完全に背筋を伸ばし、肩も伸ばせば、巨漢。

 壁だ。

「わ、私達は…」

 真ん中の小太りが話し出す。

 ヌエの顔は黒子の様な布で隠されている。

 その顔布の向こうから、ギロリと視線が向けられる。

 気圧され、小太りの男は怯みかけて、踏みとどまる。

「私達は“救済の聖女”に用があるのです。あなたでは無い。」

「私は彼女の同行者だ。用件を言え、でなければ此処はどけぬ。」

 小太りが返す。

「私達は、“救済”を求めているのです。」

「…治療できぬ病でもあるのか? 」

「そ、そうです!だからこそ“救済”を」


「ならん。」


「な、なんですと? 」

「お前達に“救済”が必要では無い。それほどの病はない。」

「な、なら何だというんだ!現に不調はある!護衛にも何かしらある!」


「ええい、邪魔するな!この僧侶めが!やれ!」


 護衛と呼ばれたチンピラモドキが前へ出る。

 当然、ヌエは通す気が無い。

 しかし、観察は終わっている。

「酒の飲み過ぎ」

 肝臓へ一撃。

「不衛生」

 強い足払い。

「塩分過多」

 胴の中心打ち。

「歯医者の仕事」

 顎へ一撃。


 そして最後に、小太りの男へ。

「肥満、運動不足」

 鳩尾に一撃。


 ヌエは振り返り、店主に向き直る。

「…騒がしくしてすまない。こいつ等は詰め所まで連れて行く。」

「いえ、いい物が見れました。お代も貰いましたので、お気になさらず。」


「それに、坊を詰め所に送りました。じきに来てくれます。ささ、お連れさんの方へ。」

「お気遣い、誠に感謝する。」


 飯屋の店主は気前が良かった。

 ちなみに、立ち塞がった途端に、カエデが多めに支払って、二人は裏口に逃げている。

 追手は撒くに限る。



 ・ ・ ・



 先にそそくさと脱出したカエデとアニラは路地裏を抜ける。

「いいんですか? ヌエ殿に任せて!」

「いいのいいの! 立ち塞がった時、後ろ手でサインを出してたでしょ!」


「“救済の聖女”サマに縋りたい馬鹿なら掃いて捨てるほどいるでしょ!」

「…すm」


「謝る必要は無いわよ!可愛い妹弟子に先輩面させなさい!」

 結構な速さで逃げたが、さっきの護衛モドキ二人が先回りして来た。

「逃がしゃしねぇよ!この町は俺たちの庭だ!」

 黄色い歯で嫌なニヤニヤ笑いを浮かべた護衛モドキはシスターを捕まえようと、手を左右に伸ばしながら立ち塞がる。


「土地勘はそっちが上なのね。アニラ、少し下がってて。」


 迷い無くカエデは“酷刀”の鯉口を切る。

 しかし、鞘からは抜いていない。

「見逃す気は無いわよね? 」


 相手が口を開く前に、カエデは地面を這う様に駆ける。

 居合抜き、二閃。


「ぐあっ!? 」

「ごほっ!? 」


 “酷刀”は片方の首、片方の胴を駆け抜けた。

 しかし、“酷刀”は切断していない。

 身体の中を駆け抜けたが、与えたのは激痛のみ。

 二人は、それぞれの部位を両断された錯覚を覚え、手で抑えたが、切れてはいない。

 カエデは後ろのアニラまで翻り、警告する。

「これが本物の武器なら、貴方達は死んでるわ。まぁ、痛みで暫く動けないでしょうけど。」

 二人とも目を白黒させてその辺に転がった。



 “酷刀”を納め、アニラの手を取って走り出す。

「このまま、逃げ切るわよ!」



 ・ ・ ・



「ふむ、カエデ、“酷刀”の扱いが上手くなっているな。」

「あの後、私も頑張ったんですよ!もっと褒めて下さい!」


「よしよし、えらいえらい。」


 ヌエに頭を撫でられ、一瞬緩みかけて…


「言葉で褒めて下さい!」


「…以前とは比べてにならん程、扱いに慣れたな。しかし、“袈裟斬り”でも良いのだぞ。そっちの方が広い分痛みは大きくなる。胴切りはいいが、首は咄嗟の混乱で呼吸が止まりかねん。」

「うっ…精進します…」



「さて、先ほどの続きだ。カエデ、“黒具”との接続とはどう言うことか説明してみろ。」

「はい!それぞれの“黒具”と同調し、自らと戦って、自身を理解する事です!」


「…及第点だな。」

「ええー…私の場合はそうでしたよ。」


「正確には、自らの辛苦と向き合い、折り合いをつける事だ。アニラ、お前は“救済の聖女”であった過去の自分と向き合え。」


「“獄鋼”は過去の所業を悔い改めさせる為の物でもある。それに”接続“すれば、乗り越えるべき壁が立ち塞がる。それと対峙し…なんとかせよ」

「なんとかって…」


「カエデは切り倒したが、同化する場合もある。アニラの前に立ち塞がる相手をどうすれば克服できるか、それは個人個人で変化する。しかし、“接続“したままにするのは危険。折り合いが着かなければ、永遠に接続したまま身動きが取れなくなる。故、一定時間の時間制限を設ける。」

「あの原始的な方法ですよね? 」

 カエデが一言挟む。


「あれ以外の方法は、私に“黒具“を託して下さった方も、知らないそうだ。」


「余計な邪魔が入るのも良くない。それに延々悩み続けるより、やった方が早い。その方が下手な修行よりもいい。」

「じゃあ、やりますか!この裏の松の木でやれますよね? 」


 ・ ・ ・


「見つけたぞ肉ダルマ!」

 アニラを接続させた後、二人して見守っていた所に、さっきの小太りと制服チンピラがやってきた。

「やれやれ、土地勘で負けているのは分が悪いな。」

「もう一辺ぶちのめしてやります!」


 しかし、連中の目線はヌエ達の背後の松の木に向いていた。

「せ、聖女様…貴様らなんて事を…」


 そこには眠っている様な表情のアニラと、木の下から“八杖“が心臓を貫いている様だった。


「殺せ!聖女様を殺めた輩に慈悲は要らん!」

 制服チンピラ共の装備が良くなっている。

 身体強化の防具、武器類。


「殺めてはいないが…邪魔はさせん。」

「そうです!もう一度成敗です!」



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