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エピローグ

 会場を離れ、玉津姫は雷鳴轟く雲の彼方、さらにその上の空を目指す。

 雲の層を突き抜けると――見渡す限りの雲海。その雲の群れに一つ、影が差している。雲より高い遥か上空に見覚えのある()()があった。

「――やはりお主だったか、天鳴姫(あまなるひめ)

「あぁ誰かと思えばそちか、久しいのう」

 玉津姫と同じく龍の角を持ち、すらりと伸びた体躯を 漆黒の、幾重(いくえ)にも、ひだを折り重ねたロングドレスで包んでいた。

「あいも変わらず、雷ばかり降らしおって迷惑千万じゃ」

「わざわざ、また、地上に()()()()()()()のかえ」

 玉津姫の眉間がわずかに上がるも、深く息を吸って吐くと淡々と話しを切り出した。

「今、わしの友らが大事な競り合いの真っ最中なんじゃ。雷はお主の甲斐(かい)であろうが、わしに免じて、今日のところはやめてくれんかの」

 普段の玉津姫からは考えられぬ態度。対峙するもう一人はじっと玉津姫を見つめると、はっと吐息をついて、

「やれやれつまらぬ、張り合いがあらぬ。興が醒めたわ」

 天鳴姫が手を挙げると、足元の雷雲がじょじょに薄くなっていった。

「助かるぞ、天鳴姫」

「……丸くなったのう、そち」

 晴れた空の下、天鳴姫はじろりと地上に眼を向ける。

「そちが気にかけている男の子(おのこ)のせいか――」

 一瞬で、玉津姫の姿が龍人へと顕現した。止まらぬ速さで玉津姫が天鳴姫の首めがけ、手を掛けようとした――が、却って玉津姫の手首を天鳴姫に取られてしまった。

「貴様――少しでも手を出してみよ。跡形残らず滅すぞ」

「んふ、その方が()()らしいぞ。愉快愉快」

 天鳴姫は静かに手を離す。

「再びまみえること……楽しみにしておろうぞ」

 流れる雲の中に身を隠し、天鳴姫の姿は消えた。

「ふう」

 玉津姫は一息つくと、雲の合間に見える我が街の、ここからでは見えぬはず者へ眼を向ける。

「帰るか――お主の元へ」

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