第七十話
神光の戦士たちは足を止めた。何かが来る。とてつもない邪悪なパワーを皆が感じていた。
そして、それは空中に現れた。暗黒のエネルギーの塊だ。その黒い球体は、ゆっくりと地上に降りてきた。
やがて、暗黒のエネルギーは、人の形へと変貌していく。闇の七騎士ダルククリスだ。
「待ちかねたぞ神光の戦士たち。私はダルククリス。最後の七騎士だ。だが、意外に早かったな。神光船か」
そこでアリシアが呼びかけた。
「クリストファー! ねえ! クリストファーなんでしょう! まだ間に合うわ! こっちに来て! 光を取り戻すの! 仲間がいる!」
「アリシアか……」
「クリストファー! お願いだから! 私あなたと戦いたくない!」
すると、ダルククリスは笑った。
「今更過去に戻って何になる。俺はな、最強の闇のパワーを手に入れたのだ。この力で世界の光を粉々に打ち砕いてやる」
「クリストファー!」
「よせアリシア」アルフレッドが彼女を止めた。「こいつはもうクリストファーじゃない。闇の七騎士ダルククリスだ」
「そんな……あなたクリストファーと戦うっていうの?」
「戦うさ。これは、俺たちが乗り越えなきゃいけない壁だ」
そしてアルフレッドは言った。
「みんな、力を貸してくれ。……闇の七騎士ダルククリスを倒す。行くぞクリストファー! 神光の戦士のパワーを以て、今ここにお前を葬ろう」
ダルククリスは暗黒剣ジグ=ラドを抜いた。
「来いアルフレッド、そして神光の戦士たち。俺がここで全てを終わらせる」
ダルククリスの体から圧倒的な闇のパワーが噴き出した。
激闘の幕が開いた。
戦いは壮絶なまでの非情なものだった。神光の戦士たちは想いを胸に秘めつつ、それでも冷徹に、全力でダルククリスと戦った。
エクスカリバーとジグ=ラドが激しくぶつかり合い、その衝撃は周囲に衝撃波を巻き起こす。アルフレッドの剣技は神速で、ダルククリスはそれに辛くも対抗する。アリシアの風と雷の舞も美しさと共に致命的で、彼女の攻撃はダルククリスの身を逸らすすら難しいものだった。
エイブラハムの氷の力が凍てつく空気を生み出し、ダルククリスの動きを一瞬でも封じる。エスメラルダの魔法は美しくも恐るべきもので、彼女の技は闇の七騎士を翻弄した。
ライオネル、スカーレット、コンラッド、マクシミリアン、クラリス、エリオット、アビゲイルもまた、それぞれの力を結集し、ダルククリスに立ち向かった。彼らの連携と巧妙な戦術が、ダルククリスを追い詰める一因となった。
ダルククリスもまた、神光の戦士たちを甘く見ていなかった。かつての仲間たちの力と連携に、彼もまた最大限の力を込めて応戦する。ジグ=ラドから放たれる闇の波動は破壊的で、神光の戦士たちはそのすさまじい攻撃を交わすのがやっとだった。
戦いは非情ながらも進んでいく。血気に逸った攻防が続き、神光の戦士たちは何度も瀕死の状態に追い込まれながらも、立ち上がり、ダルククリスに立ち向かっていった。
ダルククリスの攻撃は容赦なく続き、神光の戦士たちは次第に消耗していった。しかし、その中でも彼らの絆は揺るぎなかった。アリシアは雷光の刃を輝かせ、アビゲイルは聖なる盾で仲間たちを庇い、エリオットは光の波動を纏った剣を振るい、一致団結した神光の戦士たちはダルククリスに果敢に立ち向かった。
戦いの中、アリシアが叫んだ。「クリストファー、まだあなたの中に光が残っているはずよ! 戻って、仲間たちと共に光の中に戻って!」
ダルククリスの表情が一瞬歪む。かすかな迷いが彼の瞳に光るが、それも一瞬で闇に飲み込まれた。
スカーレットが祈りの言葉を囁きながら、仲間たちは最後の力を振り絞り、ダルククリスに猛然と襲いかかった。ダルククリスもまた、彼らの覚悟を見逃すことはなかった。彼の攻撃もまた最大限のものとなり、戦場は壮絶なエネルギーと光と影の応酬となった。
しかし、神光の戦士たちは決して希望を捨てなかった。アリシアが放った風と雷の一撃、エルフであるエスメラルダが奏でる美しいが力強い魔法、アルフレッドのエクスカリバーの閃光、仲間たちの連携した攻撃が、ダルククリスを追い詰めていった。
ダルククリスは激しい戦いの末、ついにひざまずいた。彼の体から闇の影が次第に消え去り、かつてのクリストファーの姿が浮かび上がった。
アリシアが近づき、優しく言った。「クリストファー、戻ってきてくれたのね」
クリストファーは微笑みながら頷いた。「ありがとう……みん……な……。闇に……塗られた……俺を……救ってくれて……ありがとう……」
そして、彼は力尽きるように倒れ込んだ。戦場の空気が一瞬、静まりかえった。すぐさまアリシアは回復魔法をかけようとクリストファーに手を差し伸べた。
直後、天空から闇の雷がクリストファーを撃ち貫き、彼の肉体を消滅させた。
「クリストファー!」
「アリシア!」
アルフレッドがアリシアを引き戻した。
巨大な魔法陣が空を埋め尽くす。その邪悪なパワーはこの星を包み込んだ。
「これは……」クラリスは戦慄を覚えた。
「何て邪悪なパワーだ……とてつもない……星が震えている」
エリオットは天を振り仰いだ。
「馬鹿な……何だこれは……」
エイブラハムとライオネルも空を見上げる。
「これがザカリー・グラッドストンの力か」
エスメラルダが言った。スカーレットは小さく震えながら口を開いた。
「恐ろしい……神々が恐れるのも分かります……これは……深淵の奈落……」
「まさしくだな」マクシミリアンも頷いた。
「この状況、グラッドストンはどうする気だ。奴め、姿を見せろ」
コンラッドが言うと、アビゲイルも頷いた。
「敵の出方次第だな。だがこの状況は余り好ましいとは思えん」
そうして、星を包み込んだ魔法陣から、その者は姿を見せた。黒衣の魔導士ザカリー・グラッドストン。かつての神の子にして闇の帝王。
「ようこそ天空帝都へ。余興は楽しんでもらえたようだね。クリストファーだったか。彼が闇に堕ちる瞬間は見ものだった。何と言っても神光の戦士が闇の七騎士に堕ちたのだからね」
「ザカリー・グラッドストン……」
アルフレッドは歩み寄ると、地面に突き刺さっているクリストファーの魔剣デュランダルを掴んだ。エクスカリバーとの二刀流。
「降りてこいグラッドストン! 決着をつけてやる!」
アルフレッドは怒号を発した。
すると、グラッドストンは口を開いた。その声は星の全土に響いた。
「人間よ。生きとし生ける者どもよ。我はザカリー・グラッドストン。深淵の奈落を支配する闇の帝王。ひれ伏すが良い。時は来た」
グラッドストンは手を振り上げた。
すると、星を包み込む魔法陣から無数の魔物たちが地上に襲い掛かっていった。
神光の戦士たちも虚を突かれた。
「さて神光の戦士諸君。これで地上を救う術は余を倒すしかなくなったわけだ。それが君たちに出来るかな」
グラッドストンは余裕の笑みで舞い降りてきた。
「光栄に思うがいい。闇の帝王が自ら手を下すのだ。光など、一瞬のきらめきでしかない。闇こそが世界を支配するのだ」
アルフレッドは二刀の魔剣を手に、グラッドストンを見据えた。
「お前が何者であろうとそんなことはどうでもいい。光だって一瞬のきらめきかも知れない。だがみんなその一瞬のきらめきのために懸命に生きているんだ。お前には分かるまい。ただ俺たちは、お前を倒し、この世界を闇の手から取り戻す。それだけだ!」
神光の戦士は戦闘態勢をとった。
「行くぞ! ザカリー・グラッドストン!」




