第五十九話
速報。貴族連合と革命政府、終戦協定に合意する。戦争の終結。
市民たちはその号外を手に、街の広場やカフェで一堂に会していた。新聞の大きな見出しを読み上げながら、笑顔と歓声が広がった。人々は肩を組み合って、長い戦争の苦しみから解放されたことを祝った。
広場では子供たちが駆け回り、花火が打ち上げられ、音楽が流れ、市民たちは一緒に踊った。苦難に満ちた日々の後、生活の喜びと輝きが戻ってきたのだ。
カフェでは友人たちが集まり、戦争の記憶について話し合った。彼らは家族や友人を失い、多くの犠牲を払ったことを思い出し、その重さを共有した。
しかし、同時に未来に向けての希望に満ちた計画も練られていた。市民たちは新しい政治体制や社会制度について議論し、国をより良い方向に導くために協力することを決意した。
そして、夕日が街を染めながら、市民たちは新たな始まりを迎えた。
夕日がゆっくりと西の空に沈む中、市民たちは新たな時代の幕開けを祝福した。広場では市民たちが手を取り合い、未来への希望を共有した。
あるカフェでは、若いカップルが将来の計画を熱く語り合っていた。彼らは自分たちの子供が平和な世界で育つことを願い、社会の一員として積極的に貢献しようと決意した。
同じく別の場所では、退役軍人たちが再び市民生活に戻り、新しいキャリアを模索していた。彼らは戦争の経験を活かし、社会に尽力する決意を胸にしていた。
一方で、市民たちは過去の傷跡から立ち直るのに時間がかかることも理解していた。多くの人々が失ったものを悼み、優しさと共感の言葉を分かち合った。傷ついた心を癒すための支えが大切だった。
その晩、市民たちは新しい未来への道を歩む覚悟を新たにした。彼らは過去の闘争から学び、より平和で公正な社会を築くために努力することを決意した。友情や連帯の絆が、彼らの新しい旅路を照らす光となるのだった。
水面下では市民に知らされない事柄もあった。
セイセス=セイセスの拠点で内乱の計画書が発見され、その真相が明らかになったことで、ドランベルト王国の両勢力、貴族連合と革命政府の首脳たちは驚きと怒りに包まれた。セイセス=セイセスの策謀によって引き起こされた内乱とは、まさに王国全体を欺く巧妙な計画であった。
貴族連合の指導者であるオリヴィエ侯爵は、怒りと悔しさの念を抱きながら、革命政府のブレイアム、カーリー、ギレット、ラーキンズらと共に、セイセス=セイセスに対する団結した怒りを感じていた。彼らは過去の敵対関係を超え、王国のために立ち上がった。
革命政府の首脳もまた、この事件がセイセス=セイセスの陰謀によるものであることを知り、怒りに燃えていた。彼らはかつての敵である貴族連合のメンバーと共に、王国の安全と平和を守るために団結した。
尤も、内乱がセイセス=セイセスの陰謀であったことは、公にはされずに極秘に扱われた。この決定は、国内外の混乱を避け、王国の安定と安全を最優先に考えた結果であった。
セイセス=セイセスの策謀を公に暴露することは、その支配下にある多くの暗黒の勢力を刺激し、さらなる混乱を招く可能性があったからだ。また、そのような情報を広めることで、その手先が国内外で暗躍し、国を不安定化させることも考えられた。
したがって、内乱の背後にある真相は、関係者と国王を含む一部の高官にしか知らされなかった。彼らはこの情報を秘密裏に保ち、セイセス=セイセスに対抗するために必要な措置を講じることになる。
この秘密は厳重に守られ、内乱が王国の歴史の中で忘れ去られ、公には決して知られることはないであろう。王国は平和と繁栄に向かって前進し、セイセス=セイセスの脅威に対抗し続けるのだ。
神光の戦士たちは、生き残ったブレイアム、カーリー、ギレット、ラーキンズ、オリヴィエ侯爵らとともに真相について語り合った。
「闇の勢力か……そんなものとは無縁だと思っていたが、まんまと踊らされていたとは。陛下は何のために犠牲になったのか」
オリヴィエ侯爵がこぼした。
「残念だったよ侯爵。だが……我々は本気で革命を起こしたのだ。貴族の特権を廃止し、民主主義による国家の構築を思い描いていたのだ」
そう言ったのはブレイアムだった。
「だが、セイセス=セイセスとやらの陰謀に乗ってしまったのは事実。そしてまた、それでも革命が起きる土壌はあったのだ」
カーリーが言った。
「過ぎ去ったことを言っても仕方ない。ひとまず和平はなったが。これからどうするか」
ギレットの言葉にラーキンズが思案顔で言った。
「これ以上の戦は無益だ。北部は我ら革命政府に、南部は貴族たちの統治を認める方向で進めてはどうかな」
それからも首脳たちの間では議論が交わされた。
神光の戦士たちはそれぞれに口を開いた。
「これ以上俺たちの出る幕はなさそうだな。政治のことはこの国の人々に任せるとしよう」
アルフレッドが言うと、アリシアも頷いた。
「ま、ぶっちゃけ私は政治のことは分からないから」
「とは言え」クラリスが言った。「闇の七騎士にセイセス=セイセスか……七騎士はともかく、セイセス=セイセスというのは厄介な敵ね」
「秘密結社だという。モンスターと違って民に紛れ込まれたら探しようがないからな」
エリオットが言うと、エイブラハムが応じた。
「秘密結社は確かに厄介だ。これまで相手にしてきた連中とは違うからな」
「しかしまあ、よくやったもんだ。民が知る由もないが、水面下では俺たちは闇の勢力を叩きのめしたんだからな」
ライオネルが言った。エスメラルダは思案顔だった。
「セイセス=セイセスもグラッドストンの手駒だとすると、次の行先でまた出くわすかも知れんな」
スカーレットは「あの魔戦士集団は脅威です。今回の作戦も、私たち神光の戦士がいなかったらどうなっていたか」
マクシミリアンは冷静に頷いた。「次の大陸で出くわすのかどうか……」
コンラッドは「ちょっと失礼するよ」
そう言って、首脳らのもとへ歩み寄った。
「オリヴィエ閣下、それから評議員の皆様。ひとまず和平はなりました。北はドランベルト共和国、南はドランベルト王国として存続させてはいかがでしょうか。別に共和国と王国が共存していても構わないでしょう」
コンラッドの提案に、首脳らは頷いた。
「革命政府の軍人の言葉としては意外だが、尤も、それしか落としどころはないだろう」
オリヴィエ侯爵は言った。
「だが」と、ブレイアムが言った。「我々の間で合意できても、全体に納得のいく終戦協定にせねばな。それには時間がかかるだろう」
「失礼しました。私などが案じることではなかったようです」
「いや、卿の考えは分かる」
そうして、コンラッドが席に戻ってくると、このタイミングで、上方から光が降ってきて、コーラスが鳴り響き、神々の神託が下った。
オリヴィエ侯爵と評議員らも一度経験しているとはいえ、何事かと上を見た。
「神光の戦士たちよ、子らよ、よくぞドランベルト王国の闇を祓いましたね」
光の神々は言った。
「神光の戦士たちよ、私たちの神託が下ったことを喜びとなさい。あなた達の勇気と忠誠、正義の心が、闇を祓い、王国に光をもたらしたことに、我らは心から感謝しています。あなた達の戦いは神聖なるものであり、その結束と信念が、この国を再び繁栄へと導いたのです。我らの祝福と導きが、汝らとともにありますように。闇の挑戦に立ち向かう汝らの冒険は、汝らの名を永遠の歴史に刻むでしょう。私たちは、王国が平和と繁栄を取り戻すことを信じており、汝らにその力が宿っていることを知っています。あなた方が進むべき道は、まだ長く険しいものであるでしょう。しかし、その道には希望と光が満ちており、我らの祝福が汝らとともにあることを、あなた達は忘れてはいけません。神光の戦士たちよ、私たちは永遠にあなた達の味方であり、汝らの戦いを見守り続けています」
これらは光の神々からの神託の言葉であり、神光の戦士たちに力と勇気を与えるものであった。
「次なる目的地は世界地図の西部、ベルドヘルト大陸のラートスヘル王国です。かの地は闇の軍勢と大陸を二分する戦いを行なっています。魔法戦士を国軍として有する堅牢な国ですが、日々闇の勢力が迫っています。ここまで明らかに闇の勢力と戦っている国はないでしょう。残りの七騎士と四天王が前線に出てきています。これほど単純な構図もないでしょう。あなた達のことはラートスヘルの国王に伝えておきましょう。そして最後の戦士が待っています。合流を果たしなさい」
そこでアリシアが言った。
「神々よ、クリストファーは、彼はどうなってしまったのですか。彼も神光の戦士のはず。戦いも間もなく終わりに近づいています。彼はどうして現れないのですか」
「クリストファーの件は、それは彼の問題です。私たちにはどうすることも出来ません。無論彼は生きています。生きていれば、再会することもあるでしょう」
そうして、神々は言った。
「さあ、あなた達は旅立つのです。今回船は危険です。セシーナブレッド号は私たちが保護しておきましょう。魔弾鉄道で王都ロストラシアへ向かいなさい。新しい祝福を授けましょう」
神光の戦士たちの体が光った。彼らは新たなパワーを得て、魔剣もまたパワーアップしていた。
「では子らよ、ラートスヘルで会いましょう。しばしの別れです……」
そうして、神々は去った。
「クリストファー、あなたはどこにいるの」
アリシアは呟いた。アルフレッドは言った。
「あいつなら絶対大丈夫だ。いきなり俺たちの前に現れて、驚かせてくれるさ」
「だといいけど……」
「ラートスヘルか、噂には聞いているが、激しい戦いのようだな」エリオットが言った。
「残りの七騎士と四天王もいるとなると、これは厳しい戦いになりそうね」
クラリスの言葉にコンラッドが応じた。
「確かにな。俺は七騎士と戦ったのは一度きりだが、あれがまだ何人もいるかと思うと、いい気はしないな」
「それはそうですが。次に合流する仲間が十二人目、最後ですからね。彼か彼女か、それは分かりませんが、心強い味方になりそうだ」
マクシミリアンは言った。
「それにしてもこの祝福は……中々のもんだぜ。大きなパワーを感じる。分かるだろ」
言ったのはエイブラハムだった。ライオネルが頷いた。
「確かにな。さらなるパワーアップだ。だが、油断はできないな。先のモルダルドとの戦いでも予想以上の苦戦を強いられたからな」
「ですがこの祝福は偉大なものです。これほどの祝福を得られることを感謝しなくては」
スカーレットが言うと、エスメラルダは肩をすくめた。
「もらえる力ならもらっておこう。競技じゃないからな。敵を圧倒できるならそれに越したことはない」
そうして、神光の戦士たちはドランベルト国を発つことになる。後のことは自国の人々が片付ける問題だ。アルフレッドらは、魔弾鉄道に乗車すると、ラートスヘル王国王都ロストラシアに向けて出発した。




