第四十八話
その日の魔導士評議会の本会議は激震から始まった。ギル議員から動議の提出が為されたのだ。
「尊敬される評議会のメンバーの皆様、私たちは重要な決断を迫られています。現在のウィルギット王国は危険な状況に直面しており、我々はその解決に向けた行動を起こさなければなりません。しかし、そのためには新たな指導者の下での方針転換が不可欠です。聖王レイモンドに対しては、残念ながら私たちは彼の指導力に疑問を抱かざるを得ません。彼の決定や行動は不適切であり、我々の王国を危険にさらしています。彼は変化に対応する能力に欠け、闇の勢力との戦いにおいても十分な指導を示すことができませんでした。私たち魔導士はウィルギット王国の未来と市民の安全を最優先に考える立場から、この不信任決議案を提出いたしました。我々は新たな指導者の下での方針転換を求め、闇の勢力との戦いにおいて真の勝利を手にする決意を持っています。私たちが選ぶ次期聖王は、強さと知恵を兼ね備えたバンデル・ミラーです。彼は魔法の力を駆使し、戦略的な判断を下すことができる指導者です。バンデル・ミラーの指導の下、我々はウィルギット王国の繁栄と安定を取り戻し、闇の勢力を徹底的に打ち破ることができるでしょう。皆様のご理解と支持をお願いいたします。ウィルギット王国の未来は私たちの手にかかっています。共に進んで闇の影を払い、新たな光の時代を切り開きましょう。私はここに、聖王レイモンドの不信任決議案を提出するものであります!」
無形の爆発物が議場内で炸裂した。ヤジや怒号が飛び交う一方、大きな拍手が議場を圧倒した。
そして投票の結果、レイモンドは解任され、新たにバンデル・ミラーが聖王の座に就くことになったのだ。
ネット上では市民たちの不安の声が溢れていた。
「聖王レイモンドに不信任決議案が提出されたなんて……本当に信じられない! 彼は私たちの聖王であり、王国を守るはずの存在です。どうしてこんなことが起きてしまったのでしょうか?」
「闇の勢力の影響がこんなにも深刻だったなんて……もう本当に怖くて何も信じられません。新しい指導者が必要なのは確かですが、バンデル・ミラーが本当に信頼できる存在なのか心配です」
「不安しか感じられません。闇の勢力が拡大し、聖王レイモンドが不信任されてしまったのですから、我々市民はどうすればいいのでしょうか? 自衛のために何か行動すべきなのか、迷ってしまいます」
「この混乱はどうやって収束させればいいのでしょうか? 私たち市民は真実を知りたいし、自分たちの安全を守りたい。メディアや情報源を信じることができなくなってしまいました。誰かが私たちに明確な方針や行動を示してくれることを願います」
「闇の勢力への警戒感が高まっています。市民同士で連携し、情報を共有しながら自己防衛の準備を進めるべきです。私たち市民も力を合わせて闇の勢力に対抗しなければなりません。団結して立ち向かいましょう!」
「信じられない出来事です。聖王レイモンドは私たちの希望の象徴であり、闇の勢力との戦いを指導してきたはずです。今後どうなるのか不安ですが、私たちは冷静に判断し、自分たちの命と王国の未来を守るために行動しなければなりません」
「この状況に対して悲しみと怒りを感じます。聖王レイモンドは私たちの信頼を裏切ったのでしょうか? 闇の勢力によって操られていたのでしょうか? 真実を知りたいです」
「心が揺れ動いています。信じられた指導者が不信任され、新たな指導者が現れるなんて、まるでドラマのようです。でもこれは現実なんですね。私たちは今、自分たちの判断力を信じ、将来への希望を失わずに進まなければなりません」
「市民の声を聞いてほしい! 私たちは混乱しています。闇の勢力が台頭し、政府や指導者が揺れ動く中で、私たちの生活や安全はどうなるのでしょうか?政府に対して行動を起こすべきではないのでしょうか?」
「希望を失ってはいけません。闇の勢力が力を持ち始めた今こそ、私たちは団結し、光と勇気を示すべきです。私たち市民も行動を起こし、闇の勢力に対抗するために立ち上がりましょう! 一人ひとりが変化を起こせるはずです!」
……などなど。
アルフレッド達も中継をホテルのテレビで見ていて、この不意打ちに驚きを隠せなかった。
「やってくれるな。まさかこんな手を使ってくるとは」
アルフレッドは壁に軽く拳を叩きつけた。
「魔導士評議会の過半数が闇の勢力に乗っ取られているなんて」
アリシアは信じられない様子であった。クラリスもまたこの不意打ち言葉が中々出なかった。
「こうなると……世論は今のところ混乱しているけれど……私たちがやろうとしていることは内政干渉や反乱になってしまうのではないかしら」
「まだ終わったわけじゃない。奴らの実効支配が強まれば酷いことになるのは目に見えている。ここは強硬手段もありだな」
エリオットの言葉にエイブラハムは思案顔。
「そうだな。他の抵抗勢力とも話し合う必要があるだろう」
ライオネルは言った。
「だが悪くすれば内戦になりかねないぞ。そこまでの覚悟を我々の陣営に求めることは出来るのか」
「求めるべきだろうな」エスメラルダが言った。「バンデル・ミラーを倒し、闇の勢力を退ける、これは戦だ」
「では、私たちは態勢を立て直し、戦も辞さない、そのことを皆に伝えるのね。それでいいの?」
スカーレットが仲間たちを見渡す。
「どうやらやるしかないようですね。私は同志の議員たちを引き入れるように動きましょう」
マクシミリアンは言って、覚悟を決めた。
「では、みんな、そういうことでいいか。これから俺たちが行うのは恐らく戦になるぞ。そしてバンデル・ミラーはマスコミを使って俺たちを反動勢力と称して世間に訴えるかも知れない」
アルフレッドは言った。
「いえ、メディア対応は私に任せて頂きましょう」マクシミリアンは言った。「メディアが真実を報道し、バンデル・ミラーの政権批判に回ってもらうよう、手を回しておきましょう」
「そんなことが出来るのか」
エイブラハムが問うた。
「大丈夫です。バンデル・ミラーが国内を掌握する前にことを片づけてしまえば、援護射撃をしてくれるでしょう」
マクシミリアンの言葉には確信めいたものがあった。
そうして、神光の戦士たちは、各地の抵抗勢力や魔導士評議会の同志たちと連絡を取り合い、闇の勢力と一戦交えることを話し合った。同志たちは覚悟が出来ていた。みな、この茶番劇を終わらせるべく、戦いも辞さないことで意見は一致した。
翌日、アルフレッドらは想定していなかった訪問を受けた。アレクシス、バートランド、クラーク、ディーン、ダスティン、アーヴィン、レイモンドら七人の大賢者たちである。彼らは事ここに至ったことを冷静に受け止め、アルフレッドらへの協力を申し出てきたのだ。光の陣営にとっては予想外であったが、賢者たちの加勢は特にメディア戦略において優勢に展開すると思われた。
マクシミリアンはメディアを通してバンデル・ミラー率いる闇の勢力の政権批判を展開した。彼は真実を報道し、バンデル・ミラーの欺瞞と陰謀を暴くためにメディアと連携した。
マクシミリアンは記者会見やテレビインタビューを通じて、バンデル・ミラー政権の不正や内部の闇の勢力について公に訴えたのだ。彼は証拠や目撃者の証言を持ち出し、バンデル・ミラーの正体を暴露することで世論を真実の方向へ導く狙いがあった。
メディアはマクシミリアンの発言を広く報道し、バンデル・ミラー政権に対する疑念や批判が広まった。市民たちは真実を知り、バンデル・ミラーの正体に疑問を抱くようになった。
バンデル・ミラー率いる闇の勢力はマクシミリアンの行動に対して激しく反発した。彼らはマスメディアを利用してマクシミリアンを攻撃し、偽の情報を流布することで市民の支持を得ようと試みた。しかし、神光の戦士たちとマクシミリアンの努力によって、真実は広まり、市民の信頼を勝ち取ることができた。
そして、マクシミリアンは七賢者を前面に押し出し、彼らはバンデル・ミラーは独裁者として君臨する野望の持ち主であると、闇の勢力の危険性を訴えた。
メディアを通じてバンデル・ミラー政権の欺瞞が明るみに出されたことで、闇の勢力の影響力は徐々に薄れていくことになる。市民たちは真実を求め、神光の戦士たちと共に立ち上がる覚悟を持った。これにより、バンデル・ミラー政権に対する抵抗が強まり、ウィルギット王国の未来を取り戻すための一歩が進んだ。
それから作戦の決行日に向けて、光の陣営は打てる手を打ち始めた。
まずは情報戦略。神光の戦士たちはバンデル・ミラーの闇の勢力に対抗するため、引き続きメディアやネットを通じて真実を伝え、市民や国際社会の支持を集めることで、バンデル・ミラーの支配力を不当なものだと訴えかけた。
そして抵抗勢力との連携だ。神光の戦士たちはウィルギット王国内の抵抗勢力と連携し、共同の目的のために協力した。情報共有や戦略の立案を行い、バンデル・ミラーに対抗する統一した力を形成した。
さらに経済制裁を行なった。神光の戦士たちはバンデル・ミラーの闇の勢力を経済的に圧迫するため、国内外の経済制裁を実行した。闇の勢力とつながりのある企業や個人に対して制裁措置を取ることで、彼らの資金源を断つことを試みた。
そして内部工作として、神光の戦士たちはバンデル・ミラーの闇の勢力内部に工作員を送り込み、内部からの情報収集や内部分裂を図った。闇の勢力の統制を崩し、彼らの支配力を弱めることが狙いだった。
これらの戦略は、クーデターの側面を回避しつつも、光の陣営がバンデル・ミラーの闇の勢力に対抗するための手段として考えられたものだった。
そうして表向きは政治的な駆け引きが行われている情勢の中、情報がもたらされる。バンデル・ミラーが光の陣営に属する魔導士評議会議員の逮捕を実行に移すというものだった。これにより、光の陣営は作戦決行日を早めることになる。
そうして、光の陣営の作戦決行日がやって来る。神光の戦士たちはバンデル・ミラーを撃破すること。光陣営の魔導士や抵抗勢力は首都始め各主要都市を制圧すること。
アルフレッドらは王宮に向かった。衛兵は彼らの味方であり、「健闘を祈っています」と囁き、アルフレッドらに道を開けた。
「よし、行くぞ」
アルフレッドら神光の戦士たちは宮廷に突入した。




