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第三十話

 帝国軍の行軍縦隊が行く。ガンダンパレスに向かうこの軍団の中にアルフレッドらもいた。


「確か、ガンダンパレスの入り口に岩石巨人がいるという話だったな」


 鞍上からアルフレッドはエスメラルダに問うた。


「そうだ。兵士達ではまともな戦いにならない。我々神光の戦士たちの出番だな」


「それほどにでかいのか」


「全長二十メートル、いや三十メートル以上はあるかな」


「いい的じゃないか。魔法でどうにかならないのか」


「魔法で削り切る前に奴が放つ岩の弾丸でこちらの戦力は大きなダメージを受ける」


「そういうことか……」



 そうして、近方にガンダンパレスが見えてくると、縦隊は速度を落とし、アルフレッドら神光の戦士たちは馬を下りて近付くことにする。


 門が見える。その前に、岩石巨人が座り込んでいて、大きな寝息を立てて眠っている。


「奴が件の岩石巨人か」


 エイブラハムが魔剣を抜く。


「大きいわね、どこを狙うべき?」


 アリシアの問いにエスメラルダは答える。


「とりあえず腕をどうにかしないと。神気の霊鎧をまとっているとはいえ、あの腕の一撃を食らうのはぞっとしないな」


「頭部を狙うのは無しかしら」クラリスが言った。「魔法ダメージが通らないわけじゃないんでしょ」


 クラリスであった。エスメラルダは頷く。


「クラリスほどの魔術であれば大丈夫だろう」


 そうして、アルフレッドらは歩いて岩石巨人に向かって歩き出す。


 その気配を察知した岩石巨人は、目を開くと、「客人か」と地響きのような声を上げた。岩石巨人は呼吸する。大気が震える。


「ここは通せない。そこのエルフ、前にも来たな。分かっているはずだが」


「前とは事情が異なるのでな。お前の首、もらっていく」


 エスメラルダは言って、レーヴァテインを構える。


「やれやれ……それにしてもたった六人とはな。六人で何が出来る」


「六人だからこそさ」アルフレッドは言った。「俺たちは神光の戦士だ」


「ほう……なるほど。ワドエルティナ夫人から話には聞いた。あのお方と互角に戦ったそうだな。それでは、わしも全力でかからねばなるまい」


「それが賢明だな。何れにしても、岩石巨人が粉々になるのは避けられん」


 エリオットは言ってクラウ・ソラスを構える。


「では始めるぞ」アルフレッドはエクスカリバーを突き付ける。「行くぞ!」



 戦闘開始。例によってクラリスが多重詠唱によるバフ効果を仲間たちにかけ、全員深紅の覚醒せらに能力を上昇させる。


 岩石巨人は「何をやっても無駄だ。わしの体に剣が通るものか」そう言うと、体の岩石を無数の弾丸に変えて放ってくる。


 アルフレッドらは全弾回避する。


「どんなものかな」


 アルフレッドは加速すると、剣技・無刃でアクロバットに空を舞い、蹴り、巨人の腕を切り裂いた。しかし、さすがに固い。ただの岩ではない。


 アリシアもまた加速し、剣技・風陣連弾の連撃を叩き込む。エリオットの剣技・巨人籠手による巨大な霊体拳、エイブラハムの剣技・無双連撃が続き、エスメラルダの剣技・覇皇斬と激烈な連続剣技が巨人の腕に叩き込まれる。


 しかし、巨人の腕は確かに損傷したものの、破壊するには全く至らない。


 そこへクラリスの魔法が打ち込まれる。魔力・極千パーセント。強力なデバフ効果で巨人の能力が大きくダウンする。


「何だこれは……体が重い」


 岩石巨人は苛立たし気に、腕を振り回した。竜巻が巻き起こり、アルフレッドらは後退する。


「さらにダウンさせる」


 クラリスは魔力・極千パーセントからのデバフでさらに巨人の能力を低下させる。


 アルフレッドらは再度攻勢に転じる。剣技の連弾が巨人の右腕をついに破壊する。


 巨人は怒りの咆哮を上げ、再び岩石の弾丸を連射してくる。が、それらは全て回避される。


 そしてクラリスが多重詠唱に入る。


「爆炎、爆風、我が敵を撃て」


 巨大な火炎弾と風烈弾が巨人の頭部に向けて放たれる。二つの魔法の弾丸は命中して爆発炸裂した。頭部は半壊する。さらにアルフレッドらの剣技によって左腕も破壊される。


 巨人はなす術もなく膝をついた。


「おのれ……このまま終わると思うなよ」


 次の瞬間、巨人は自爆した。


「やばい!」


 クラリスとエスメラルダ、エリオットは咄嗟にシールドを張った。


 一帯は吹き飛んで大爆発の煙が立ち上り、衝撃波が全てを吹き飛ばした。その後にはクレーターが出来ていた。


「みんな無事!?」


 クラリスは叫んだ。


「クラリス!」


「兄上!」


「大丈夫か」


「ええ、それより他のみんなは?」


「私は無事だ」


 エスメラルダが地上から叫んだ。


「アルフレッド、アリシア、エイブラハムは……」


 やがて、煙が晴れて、その三人たちも生存が確認された。


「いたた……何て奴だ。神気の霊鎧が無かったら死んでたな」


 アルフレッドはアリシアを助け起こしていた。


「本当に……」


 エイブラハムは砂を払って歩いてきた。


「全く、いきなり自爆とはな」


「無事だったか傭兵王」


 エスメラルダが歩み寄る。


「何とかな。帝国軍を連れてこなくて良かったな。全滅しているところだぞ」


「そうだな……。確かに」


 岩石巨人はパワーストーンをそれなりに落としていった。


「何だこれは」


 アルフレッドが合成してみて呟く。その効果はメンタルバリアであった。


「良く分からないけど、この城と関係あるのかも」


 アリシアも合成しておく。そうして、神光の戦士たちは全員メンタルバリアを合成、強化しておいた。バリアの強度はランク三まで上がった。


「何れにしても、ガンダンパレスへの道は開いたわけだ。行こうぜ」


 そうして、アルフレッドらは、門へと歩いていった。



 帝国軍が合流し、その大きな門を数十人がかりで押して開ける。


「さて、どんな歓迎をしてくれるのかね」


 内装や作りは人間の城と大差ない。ただ、スケールを何倍にもしたもので、通路幅も十メートル以上ある。


「何て馬鹿でかい城だ」


 エイブラハムは言ったが、「何だ?」と違和感を覚える。何かに圧迫されているような感覚だ。プレッシャーを感じる。


 兵士達が全員体調不良を訴え膝をつく。


「どうやら城の中は常に精神攻撃を受けるようね。メンタルバリアはそのためね。兵隊は入れない方がいいわ」


 クラリスはエスメラルダに言った。エスメラルダはすぐに兵士たちに城外へ出るように命令を出す。


「結局六人で行くことになったか」


 エスメラルダは言って城の奥を見つめる。


「まずは千里眼で索敵ね」


 クラリスとエスメラルダは千里眼を行使して、城の中を高速で視認していく。


 場内に敵の姿はない。無人である。最奥の大広間に、豪奢な椅子に腰かけたワドエルティナの姿を捉える。


「見つけた。ワドエルティナよ」


 そうして、六人の戦士たちは動き出した。最奥の大広間を目指して足を速める。到着した時、ワドエルティナは悠然と椅子から立ち上がった。


「来たか。神光の戦士たち」


「お望み通り来てやったぞ。さあ、決着を付けようじゃないか」


 アルフレッドがエクスカリバーを抜いた。


「威勢はいいな小僧。だがここはガンダンパレス。わらわのテリトリー。お前たちの思い通りにはいかんぞ」


 ワドエルティナは指をパチンと鳴らした。すると、六人の足下から黒いオーラが沸き上がって、その身を拘束した。


「何なのこれ……動けないっ」


 アリシアが身をよじった。


「吹き飛ばしてやる。光よ、黒き禍々しきものを払い給え」


 エリオットが神聖魔法を使った。閃光が爆発した。しかし、黒いオーラは全く反応せず、エリオットを飲み込んでいく。


「神聖魔法が効かない? それじゃあ……」


 クラリスは、全体魔法を行使する。魔力・極千パーセント。


「逆転魔法、幻影撃破」


 次の瞬間、みなの黒いオーラは砕け散った。


「やっぱり、幻術ね」


 ワドエルティナは笑った。


「やるではないか小娘。だが言ったであろう。ここはわらわのテリトリー。お前達には死しかない」


 すると、ワドエルティナは巨大化し、漆黒の球体に変身した。


「な、何だ?」


 アルフレッドらは深紅の覚醒を使い、クラリスとエスメラルダは味方にバフをかける。


 と、球体は明滅し、広間全体に放電した。


 神光の戦士たちを激痛が襲う。


「何て奴だ……畜生」


 アルフレッドは加速して、剣技・聖天衝撃でエクスカリバーを突き入れた。


 魔剣は黒い球体を貫き、血が噴き出した。ワドエルティナの絶叫が響く。


 放電が弱体化したところで、戦士たちは一斉にアルフレッドに続き、全員魔剣を叩き込んだ。


 球体は切り裂かれてワドエルティナは悲鳴を上げる。


「貴様ら……わらわに痛みを……これほどの痛みを与えるとは」


 直後、球体から無数のマジックミサイルが放たれ、アルフレッドらに襲い掛かる。神気の霊鎧をまとっていることでミサイルが貫通することはないが、爆発の衝撃によるダメージを受ける。


 エリオットが全体回復魔法で治癒し、神光の戦士たちは再び反撃に出る。アルフレッド、アリシア、エイブラハム、エスメラルダは再び球体に剣技を浴びせる。そしてクラリスは魔法を行使する。魔力・極千パーセント。


「貫通弾、敵を穿て、千の魔術」


 ドリル状の貫通弾が怒涛の如く漆黒の球体を貫く。


 ワドエルティナは球体から人型に戻った。体のあちこちから黒いオーラが漏れ出している。ワドエルティナは呼吸も荒く、神光の戦士たちを睨みつけていたが、突如として笑い出した。


「さすがにやるではないか。ここまで我々の攻撃を跳ね返しただけのことはある。しかしな、それもこれまでよ。お前たちはこのわらわが抹殺してくれる」


 神光の戦士たちは魔剣を構える。


「気を付けろ。まだ力を残しているかも知れん」


 アルフレッドは仲間たちに注意を促す。


 神光の戦士たちは魔剣を構える。


 ワドエルティナは手をかざすと、胸の中央に闇のオーラを集め始める。


「来るぞ」


 そして、黒呪の魔女は「暗黒破壊の怒涛、波涛となりて」そう唱えると、闇のオーラが爆発した。闇のオーラは巨大な渦となってアルフレッドらに迫りくる。回避は出来ない。クラリスとエスメラルダは味方に魔法の盾を付与する。彼らはどうにか踏みとどまって耐えるべく踏ん張った。


 そして、闇の渦が神光の戦士たちを薙ぎ払う。魔法の盾は砕け散り、爆裂的な渦が彼らを切り裂いた。全員渦に飲み込まれ、宙に巻き上げられた。そして、最後には渦は黒いオーラを放って爆発した。


 アルフレッドらは地面に叩きつけられた。


 ワドエルティナは高笑いを発した。


「見よ! この様を。所詮人間がわらわに歯向かうなど、無謀の極致」


 しかし、アルフレッドらは起き上がった。


「何だと……っ」


 ワドエルティナの口許が歪む。


「さすがに今のは効いたぞ。痛かったな」


 アルフレッドは言ってエクスカリバーを構える。


「全くだ……神気の霊鎧が無かったらどうなってることか」


 エイブラハムは言ってグラムをゆっくりと持ち上げる。


「とは言え、なかなかのダメージだ。回復しておこう」


 エリオットは全体回復魔法でダメージを全快せる。魔力回復ポーションを飲んでおく。


「それにしてもこれでは勝負がつかんな」エスメラルダが言うと、


「とにかく、攻め続けるしかない」アリシアが応じ、


「確実にダメージは通っているから、やるしかないわね」クラリスがそう答えた。


 神光の戦士たちは再び攻めに転じる。


 アルフレッド、アリシア、エリオット、エイブラハムらは超人化の加速でワドエルティナを包囲して突撃。黒呪の魔女は回避する間もなく、四本の魔剣に貫かれる。


 そして、クラリスとエスメラルダが合体魔法を繰り出す。


「金剛剛烈、破邪の刃よ、無刃となりて敵を撃て」


 空中に無数の魔法陣が展開し、そこから無数の光刃が発射される。ワドエルティナは回避する間もなく光刃に飲まれていった。光刃は命中するたびに爆発し、最後には閃光を放って炸裂した。ワドエルティナの悲鳴がかすかに響いた。


 光が晴れると、半壊して肉体が崩壊していくワドエルティナの姿があった。


「やったか……」


 アルフレッドがその姿を確認して言った。


 すると、ワドエルティナは笑い出した。


「さすがに神光の戦士か。影では相手にならぬか」


「影? どういうことだ」


「わらわはワドエルティナの影。言ってしまえば黒呪の魔女が生み出した魔物よのう」


「何だと……」


「真なる黒水晶は最上階よ。まだまだ試練は始まったばかりということじゃ……」


 そうして、ワドエルティナの影は笑声を残して崩壊していった。


「なるほど。よく分かったぜ。くそ」


 アルフレッドは毒づいた。


 すると、広間の中央に黒いオーラが降ってきて、上層階への階段に形を変えた。


「正直おかしいと思ってはいた」エスメラルダが言った。「ガンダンパレスは何層かあるはずだからな」


「ということは」エイブラハムが口を開く。「またこの上に強敵が配置されているということか。やれやれだな」


「とにかく行こう。進むしかない」


 エリオットが言って、みな頷く。


 その前に、ワドエルティナの影が落としていったパワーストーンを回収する。地水火風雷ランク六のパワーストーンがごろごろしている。彼らは魔法ランクを上げて強化出来た。


 そうして、神光の戦士たちは、ガンダンパレス第二層へと階段を上るのであった。

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