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第二十八話

 アルフレッドとアリシアは帝都に帰還して、カフェで一時の休息にあった。


「ねえアルフレッド」


「何だ」


「ラモーナ様のことを思い出してしまって」


「婆様のことを? どうしたんだ」


「うん。私たちの旅の始まりを、ラモーナ様は十八年間待ち続けていたのよ。そして命がけで私たちを救ってくれた。ラモーナ様がいなかったら、私たちここにはいないわ」


「だが、そのせいで村のみんなが死んだ。今でも思い出せば怒りがわいてくる」


「それは私だってそうよ。クリストファーだってどうなったか分からない。だからこそ怒りをぶつける相手はグラッドストンよ。そして闇の眷属たちにね」


「そうだな……奴らはイズの村のみんなの仇だ。後ろを振り返っていても仕方がないしな。今できることをやるしかないな」


「その通りね。私たちの手で未来を変えなくちゃ」


「未来を変えるか……。みんなが俺たちを英雄扱いだからな。やるしかないのは分かってはいるけれど、こうして戦っていない時間は自分がただの若者だってことを思い出させるんだよ。アリシアはそんなこと考えたことはないか」


「私は……そうね。他のみんなと違って実はただの村娘だったことは否定しようもないけど、魔剣の力が自分に特別な力を与えてくれたことには感謝してる。だって、この力で世界を変えることが出来るんだから」


「アリシアを見ていると元気が湧いてくるよ。自分は一人じゃないってことを思い出させてくれるな」


「そうよ。それに、クリストファーだって、絶対どこかで生きているはず。私たち三人、神光の戦士なんだから。彼も探さなきゃ」


「クリストファーの奴、生きているならニュースでも見ていないのかな。俺たちはここにいるのに、会いに来ればいいのにな」


「何か理由があるのかも。闇の手に連れていかれてしまったから……酷い目にあっていなければいいけど」


 そこでアルフレッドはコーヒーに口を付けた。


「楽観は出来ないな。もしグラッドストンのところへ連れていかれていたら……」


「駄目。それは言わないで。クリストファーは必ず見つけるの。それに、魔剣が揃わなければグラッドストンを封じ込めることも出来ないんだから」


「そうだな。あいつもどこかで生きていることを信じるよ……」



 エリオットとクラリスは休息のひと時を帝都のセントラルパークで過ごしていた。平和な公園も、あちらこちらに闇の水晶が咲いていて、人影は少ない。


「あんなに美しいものがエルフの力を奪い取っているなんて、外見とは裏腹に邪悪な呪いね」


「黒呪の魔女とやらの趣味なんだろうか。闇水晶の花か。魔剣で破壊できないか」


 エリオットはそう言うと、クラウ・ソラスを抜いて、手近な闇水晶に向かった。クラリスが見守る中、エリオットは巨大な闇水晶の花の中心に魔剣を突き入れた。すると、光が闇水晶の中に広がっていき、ガラスが砕けたような破砕音を残してその邪悪な水晶を破壊した。


「へえ……魔剣で壊せるのね」


「そのようだな。尤も、帝国全土に広がっているこの闇水晶を破壊するには、やはりワドエルティナのもとにある真なる黒水晶とやらを破壊して一網打尽にするのが現実的だろうな」


「大樹リルデア=スーを呪いから解き放つにはそれしかないわね」


「ああ……。それにしても、俺たちの故郷ドルシアム王国は、あれからかなり闇の軍勢を退けたようだな」


 エリオットは携帯端末を取り出すと、ホログラムのニュースサイトを立ち上げた。王国軍、各地で闇の勢力を後退させる、との記事をスワイプして見ていく。クラリスはビデオ通話で王妃ドロシーに連絡を試みた。


 ドロシーはビデオ通話に顔を出し、「まあクラリス、元気にやっている?」と微笑んだ。


 クラリスは時々家族と連絡を取っていて、自らの無事を伝え本国の状況を確認しているのだ。


「母上、王国は無事ですか」


「ええ。あの人が陣頭に立ち、魔物たちを倒しているわ。魔物たちは士気を失っているようね。あなた達のおかげよ」


 そこでエリオットがやってきた。


「母上」


「まあエリオット。あなたもたまには連絡を頂戴。妹は時々連絡をくれるわよ。携帯からかけることが出来るんだから」


「すみません母上。ですが、本国が無事であるようなので安心しています」


「デリックはすっかり立ち直って、次々と魔物を倒しているのよ」


「はい。そのニュースは携帯で確認しているのですか。ですがこうしてお話しできて良かった」


「そっちはどうなの。あなたは大丈夫なのエリオット」


「俺のことなら心配ご無用ですよ母上。仲間たちも増えて、今は戦力が充実してきましたから」


「戦いだけじゃないわ。体調とかよ。疲れたら休むのよ」


「分かっていますよ母上。俺も子供じゃないんですから」


「尤も、クラリスから聞いてはいるけどね。ですが、幾ら大人になっても、あなたは私の子供なの。無理はしないように」


「確約は出来ませんが、善処します。敵は手強い奴ばかりなので。ノーダメージとはいかないんですよ」


「とにかく、無理しないように」


「はい母上」


 そしてクラリスが言った。


「安心して下さい母上、私が傍で兄上を見守っていますから」


「おいおいクラリス、俺の保護者かよ」


「クラリス、エリオットのことは頼んだわよ。そして、あなたも無事に帰ってくるのよ」


「はい母上。それじゃ、私たち行きます」


「元気で」


「お元気で、母上」


 そうして、クラリスは通話を切った。


「母上、元気そうだったな」


「そうね。父上が回復されて、また愛情が戻ったようだから。母上もすっかり良くなったのよ」


「それは何よりだな。そうだな……俺もまた通話してみるか」


「兄上、連絡一本かけないなんて、母上も父上も心配していたわよ」


「悪かったよ」


 エリオットは肩をすくめる。


「さあ、それにしても、次はどこを攻める気かしら。エスメラルダ騎士団長は」


 クラリスは言って、灰色の空を見上げるのだった。



 エスメラルダは軍議の席にいて、予備軍を預かる将軍ら、そしてエイブラハムも交えて話し合っていた。


「次の目標は決まっている。北の都システルミナだ。東のファイエルラッドはあの魔女ワドエルティナに近い。先に刺激したくはないからな」


「で、システルミナにはどんな奴が指揮官なのだ」


 エイブラハムが問うた。


「ガザルツボルドという巨人戦士だ」将軍の一人が答えた。


「巨人戦士? あのドルガルモスみたいな奴と似ているのか」


「いや」エスメラルダが言う。「ドルガルモスを更にパワー全振りしたような奴だ。その意味では尖った戦闘能力の持ち主と言える」


「ドルガルモスよりも更にか……。俺たちの超人化みたいなものか」


「ああ、それは言えてるかもな」


 エスメラルダは頷く。


「それだけではない」他の将軍が口開く。「奴は変化する。その変身は確認されているだけで第三段階まであり、奴も形態変化して黒いオーラがどんどん増していく」


「変化か」


 エスメラルダは思案顔。エスメラルダは言った。


「尤も、私たち神光の戦士が六人で掛かれば倒せないはずはない。これまでもそうだったろ」


「そうだな……対指揮官戦ということに関して言えば、俺たちは優勢には違いない。集団戦もその他雑魚は騎士団が引き受けてくれるからな」


「そういうことだ」


 それから、将軍たちの間でも話し合いが交わされ、魔法兵団からエルシー将軍、騎士団からアーリン将軍とクライド将軍が出陣することが決定された。


 会合が終わって、エイブラハムはエスメラルダを飲みに誘った。エスメラルダはそれに応じ、その日の夕刻二人は待ち合わせて居酒屋に入った。


 ワイングラスを傾けながら、エイブラハムは問うた。


「どうだ、神光の戦士として魔剣を操る気分は」


「ふむ。悪くはない。人を超越しているというのは特別な存在になった気分がする」


「それは分かるな。俺も最初はこの力に目覚めて、同じような気分になったものだ」


「何だ。今は違うというのか」


「俺たちが力を授かったのは神々が魔剣使いとして選んだからだ。魔剣が無ければ同じ人間だ。それに、代償を払っているだろう。ザカリー・グラッドストンを十二本の魔剣で神霊封印するという役割を俺たちは担っているんだ」


「お前は神々の意思が気に食わないのか」


 エスメラルダは面白そうに言ってワイングラスをあおった。


「いや、そんなことは無いが、感謝しているよ。ただ、この力は強大に過ぎる。いつかこの力で人を傷つけてしまわないか、そんなことが頭をよぎることがある」


「お前は見かけによらず繊細で優しいところがあるんだな傭兵王」


「そういうお前はどうだ。力に飲み込まれるかも……そんなことを考えたことはないか」


「私はエルフだ。もう何百年も生きている。自分の中に潜む善と悪と、十分すぎるほど向き合った。このような力というものは自分の中の一部に過ぎない。自分の全てじゃない。私などはそう思うのだがな」


「それは初めて聞いたな」エイブラハムはワインをあおった。「そうだったか。もう何百年と生きているか……それはそうだよな。エルフ族の大人はみんなそうだ」


「驚いたか」


「いや、だが、すっかりその点を忘れていたよ」


 エイブラハムは肩をすくめるとフォークでソーセージを口に運んだ。


 それからエイブラハムとエスメラルダと語らい、親睦を深めた。



 システルミナ方面に攻勢をかけた帝国軍と魔物たちとの戦いが激化する中、神光の戦士たちとガザルツボルドの激戦が行われた。


 相次ぐ大ダメージを受けるたびに変化していくガザルツボルドは、遂に第三形態に変身する。その身から噴き出す黒いオーラはガザルツボルドの身にまとわれ、深紅の鬼眼を有していた。


 巨大なパワーを蹂躙するがごとく振るうガザルツボルドに、神光の戦士らは苦戦を強いられるが、一進一退の末に、遂に黒いオーラを突き破る。


 アルフレッドとアリシアが光のパワーストーンの力でそのオーラを破壊すると、エクスカリバーとミスティルテインでガザルツボルドの腕を切り落とした。


 エリオットは神聖魔法を叩き込み、エイブラハムも無双連撃に竜巻切りでこの巨人を切り裂いた。


 そしてクラリスとエスメラルダは魔力・極千パーセントで二人の合体魔法、真・消滅結界を発動。幾重もの魔法陣がガザルツボルドを取り囲み、閃光がほとばしる。


 ずたずたに引き裂かれた巨人の魔物は遂に倒れ伏し、灰と化していく。


 かくしてガザルツボルドは撃破された。パワーストーンが大量に落とされていく。みなランク五のパワーストーンで強化していく。さらに物理攻撃と防御がかなり大きく上昇するパッシブパワーストーン「剛力覚醒」を全員が入手。また強力な物理攻撃力を発揮する「剣技・巨人籠手」をエリオットが入手。そして広範囲の敵を金縛りにする「剣技・空烈咆哮」をアルフレッドが合成した。加えて物理属性の遠距離連弾攻撃「剣技・空烈魔弾」をアリシアが合成する。


 かくして、システルミナ方面の魔物を退けた帝国軍とアルフレッドらは、東の都ファイエルラッドに焦点を向けるのであった。

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