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第二十七話

 帝都に戻ったアルフレッドらはいったん解散してそれぞれ提供された官舎で英気を養った。


 三日後、騎士団本部へ向かったアルフレッド、アリシア、エリオット、クラリス、エイブラハムらは、エスメラルダの出迎えを受ける。


「十分休めたか」


「ああ、十分だよ。帝都見物もさせてもらった」


 アルフレッドは言った。


「それは何よりだ」


「次の行先は決まったか」


 エイブラハムの問いに、エスメラルダは思案顔。


「東は最後にしたい。敵の主力と近いからな。私としては南のスイレリフィアへ向かいたい。北のシステルミナ方面よりはまだ戦線が膠着しているからな。市街戦にはなるが。今回は先のように空から急襲というわけにもいかないだろう。指揮官の魔戦士パルスディアは前線に出てきている。市街地のどこかで直接指揮を執っているようだ」


「非戦闘員は避難しているのか」


 エリオットの問いにエスメラルダは「もちろんだ」と応じる。


「何れにしても、私たちの標的はそのパルスディアってことね」


 アリシアが言うと、エスメラルダは「ああ」と頷く。


「ドルガルモスとどちらが厄介なの」クラリスが問う。


「ドルガルモスは四人の指揮官の中で最も弱い奴だ。パルスディアは魔法戦士。人語も話す。我々が使うような剣技も使ってくる厄介な奴だ。ただ、回復魔法は使うが再生とかはしない」


 そこで、第七軍団の司令官グレン将軍が姿を見せる。


「閣下、ご命令通り、既に第七軍団と魔導士連隊はスイレリフィアへ発っております」


「よし、では我々も行くとしようか」


 エスメラルダはアルフレッドらを促す、


 そうして、一行は南の都スイレリフィアへと向かう。



 魔弾鉄道は都へは入らず、一つ前の駅で停車する。その町中にはこれから戦場に向かう第七軍団と魔導士連隊の姿もあった。エスメラルダとグレンを見て、騎士たちは敬礼する。


 アルフレッドらも合流し、馬に乗ると戦場へと向かう。



 スイレリフィアに入った神光の戦士らと第七軍団は、遠くから聞こえる魔物たちの咆哮に、千里眼を使う。魔法使いたちも同様であった。魔法の探査眼が高速で都内を移動する。


 パルスディアは都の北東部で前線に出てきていることが確認される。


「あの魔戦士を視界に捉えました。閣下、ご案内しましょうか」


「パルスディアか」


「はい」


「よし、騎士団一個大隊、我らと同行せよ。他は各連隊に分かれて戦場へ向かえ」


 そうして、エスメラルダはアルフレッドらを見やる。


「ようやくだ。行くぞ」


「待ちかねた」


 アルフレッドらは馬に鞭を入れると、駆けだした。



 パルスディアのもとへ到着する前に、全員馬を下りる。


 そうして、一行は戦場に到着する。


 魔戦士パルスディアは、黒い炎のようなオーラをまとっていて、周囲の魔物たちに人外の言葉で命令を下している。


 帝国軍の指揮官は、エスメラルダらの姿を発見して敬礼し、緊迫した表情を見せる。


「閣下、申し訳ありません。パルスディアは我々の手に負える相手ではありません。守りを固めるのが精いっぱいで」


「安心しろ。奴を倒すために我ら神光の戦士が来たのだ」


 そうして、エスメラルダは大隊に援護を命じ、雑魚の魔物たちを食い止めるように命令する。


「奴がそうか」


 エイブラハムはグラムを抜いてパルスディアを見やる。エスメラルダはレーヴァテインを抜いてパルスディアに向かう。


「パルスディア、今日は決着を付けようではないか」


 すると、パルスディアは獲物を捕らえた獣のように目を光らせた。


「ほう、帝国騎士団長ではないか。私から受けた傷はもう癒えたのか」


「それはお互い様だろう。だが、今の私は違うぞ。魔剣レーヴァテインの名に懸けて、貴様を葬ろう」


「何だと?」パルスディアはやや驚いた様子であった。「貴様が魔剣使いになったというのか。これは面白い。魔剣を手に入れれば、我らが主もお喜びになるだろう」


「残念だが」アルフレッドが言った。「魔剣使いは一人じゃない。俺達六人だ」


「ほう……。それはエクスカリバーか。ドルガルモスを倒した件は聞いているぞ。だが、あ奴の力では仕方あるまいな。しかし……」パルスディアは妖艶で邪悪な笑みを浮かべた。「私は奴の力など問題にならん。後悔するがいい。圧倒的なパワーで殺してやろう」


 パルスディアの黒いオーラが燃え盛る。


 アルフレッドらは魔剣を構える。


 例によって全員が深紅の覚醒でバフをかけると、その状態でクラリスとエスメラルダが魔力・極千パーセントによる多重詠唱でさらにバフを乗せる。


「燃え尽きよ、奈落の業火」


 パルスディアは自身の黒い魔剣を全力で振り切った。巨大な黒い炎がアルフレッドらを薙ぎ払った。今のアルフレッドらは神気の霊鎧もまとっている。この業火を十分耐えた。


「何だと?」


 アルフレッドとアリシア、エイブラハム、エリオットは超人化でさらに速度を上げて加速する。


 アルフレッドの切滅八連、アリシアの風陣連弾に乗せて豪壮氷帝、エイブラハムの無双連撃、エリオットの真・波動砲がパルスディアを打ちのめす。


 パルスディアは「小賢しいわ」と黒剣を天に突き出し、黒いオーラの全方位攻撃でアルフレッドらを切り裂き吹き飛ばした。


「この程度」


 アルフレッドらは着地すると再び突進する。今度は四方に分かれ、パルスディアを包囲する。


「ランク五の魔法を食らえ」


 アルフレッドらは爆炎嵐に氷刃嵐、暴風烈破、そして爆裂岩弾を叩き込んだ。


 そこへエスメラルダが剣技・覇皇斬で切り込み、クラリスが魔力・極千パーセントからの多重詠唱ドラゴンマジック「竜撃精神破壊、竜撃閃光衝破」を放った。


 果たして、魔法のプラズマが晴れて、パルスディアは黒いオーラのバリアを張って無傷であった。


「どうした、それで終わりか。神光の戦士と言っても所詮は人間……っ!? 何っ」


 パルスディアの胸部からオーラが漏れ出している。


「ぐっ……バリアを貫いたというのか」


 パルスディアは初めて感じる激しい痛みに怒りを覚えた。そうして、目には見えない精神攻撃のダメージによろめく。


「何だ……おのれ。許さんぞ貴様ら」


 パルスディアが黒剣で円を描くと、それは魔法陣となり、邪竜を召喚した。パルスディアは邪悪の頭部に飛び乗った。


「焼き払え!」


 パルスディアの命令で、邪竜は暗黒のドラゴンブレスを吐き出した。だが、アルフレッドらはそれも耐えきった。


 クラリスがすかさず魔法を詠唱する。「与えよ、竜殺し、その牙を砕け」仲間たちに竜殺しのバフをかける。アルフレッドは竜殺しのパワーストーンを合成しており、その攻撃は更に強力になる。


 アリシアの風陣連弾、エイブラハムの無双連撃、エスメラルダの覇皇斬が邪竜を切り裂き、アルフレッドの剣技・無刃が邪竜の首を切り落とした。邪竜は消滅する。


 エリオットがパルスディアに向けて神聖魔法を放つ。


「怒れし神よ、邪悪に天雷を」


 パルスディアは強烈な雷撃を受けて膝をつく。


「どいつもこいつも、私を苛立たせる」


 この魔戦士の体から猛烈な勢いで黒いオーラが吹き出し、それは赤眼の鬼神の形をとった。


「光よ失せよ、影の鬼よ、光を食らい尽くせ」


 鬼神のオーラが分裂して無数の弾丸となってアルフレッドらに襲い掛かる。その直撃を受けた、神光の戦士たちは大ダメージを受けた。


「く……何て奴……これほどの攻撃を?」


 アリシアは回復しながら仲間たちを見やる。みな無事だ。回復魔法でそれぞれに回復している。加えてエリオットの全体回復魔法でダメージは完治した。


 果たして、パルスディアは休む間もなく全体攻撃をかけてくる。黒剣を大地に突き刺し、自らの命を燃やす。


「真なる闇の業火よ、我が命を食らい、敵を焼きはらえ」


 漆黒の炎がアルフレッドらを包み込み、また巨大なダメージを与える。


 それを回復する神光の戦士たちであったが、パルスディアは自らの命も顧みず、さらに巨大な黒い炎で一帯を焼き尽くす。


 エリオットがそれに対抗して、神聖魔術を行使する。


「光あれ、邪悪なる意思を退けたまえ、光あらんことを」


 すると何と光が降ってきて、一帯を聖なる結界で覆いつくし、黒い炎を消し去った。


 パルスディアは苦悶の声を上げる。


「この程度の結界で……私が負けるものか」


 そこでアルフレッドがアリシアに声をかけた。


「奴は弱っている。光のパワーストーンで決着をつけるぞ」


「分かった」


「みんな、援護射撃を頼む。光のパワーストーンでけりをつける」


「了解した」


 クラリス、エスメラルダ、エイブラハム、エリオットらは魔法を連射する。


 それをバリアで防御するパルスディア。


 そうして、アルフレッドとアリシアは跳躍して上方からパルスディアに迫る。


「エクスカリバーに光を、光あれ」


「どうか、ミスティルテインに光のパワーを、降臨せし」


 そのまま空を蹴った二人は、剣を逆手に持ち替え、パルスディアに魔剣を突き刺した。


「何を!?」


 魔剣からほとばしった光が爆発する。


「…………」


 みな光が晴れるのを待った。


 そして。


 そこには、上半身が吹っ飛んだパルスディアがいた。地面に転がった腕も、やがて下半身も灰と化していく。


 パルスディアの気配は完全に消えた。


「ふう……やったか」


 エスメラルダは安堵の吐息をもらす。


「大丈夫かアリシア」


「ええ、そっちは?」


「俺は大丈夫」


 やがて、パルスディアの死が魔物たちに伝わると、その闇の軍勢は一挙に総崩れとなっていく。南の都スイレリフィアから逃げ出していくのだった。


 帝国軍は勝鬨の声を上げる。


「ひとまずこれで二つか」


 エリオットの言葉にクラリスは頷く。


「そうね。だけど、前線の指揮官がこれほどの強さなんて……。ワドエルティナって一体どれだけの力を持っているんでしょう」


「今は考えないようにしよう」


 エイブラハムはパルスディアが落としていったパワーストーンを吟味していた。ランク四のパワーストーンは強化に回し、ランク五は合成に回した。ポーションも大量に落としていった。


「全員の魔力と生命全回復か。こいつは貴重だな。幾つかあるぞ。それにこれは……復活蘇生の雫。これも幾つかあるな。頂いておこう」

「どうだ、戦利品は」


 アルフレッドとアリシアが歩み寄ってくる。エイブラハムは全回復と復活の雫を二人にも手渡しておいた。


「これは貴重だな。エリオットの魔力が一発で持っていかれるみたいだからな」


 エリオットがやってくる。


「蘇生の魔法は俺も使えるが、それでも復活の雫は貴重だぞ」


「ああ、そうだよな」


 そこへエスメラルダとクラリスがやって来る。


「パワーストーンか、たくさんあるな。私も強化しておくか」


「私も」


 そうして、南の都を奪還して優勢に立った帝国軍は戦線を押し上げることに成功する。アルフレッドらはひとまず帝都へと帰還するのだった。

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