第二十四話
アルフレッドらは懐かしい思いと共にコーストの下へやってきた。まだそれ程月日が経ったわけではないが、共和国での激戦はこの地への郷愁を思い起こさせる。
「よく戻ってきたの。活躍はテレビで見たぞお主ら。ふむ、新しい顔が見える。お主が噂の傭兵王か」
コーストはエイブラハムを見やる。
「お初にお目にかかりますコースト殿」
「なあに、傭兵王から頭を下げられるほどではない」
それで、とコーストは言った。
「悟りの迷宮へまた挑戦というわけか。進展があったようじゃの」
「はい」アルフレッドが口を開く。「神気の霊鎧というパワーストーンを手に入れました。神々がくれたものですが」
「ほう、成程の。それは大したものじゃ」
「ご存じですか」アリシアが問うと、
「実戦で試してみるが良い。戦略が変わるじゃろう」コーストは応じる。
「それでは早速、向かってみようと思います」
アルフレッドは言って、一同は悟りの迷宮へ向かう。
第六層へやってきたアルフレッドらは、巨人竜の出迎えを受けた。
「また貴様らか。無駄なあがきだということが分からんか」
巨人竜はドラゴンブレスを吐き出した。
何と、ほとんどダメージを受けていない。アルフレッドらは薄く光っていた。
「これが神気の霊鎧か。凄いな」
「これならいけるわ」
アリシアは光を見て頷く。
「何だと……貴様ら一体」
巨人竜は用心深く二刀の蛮刀を構える。加速するとクラリス目掛けて巨大な刀を振り下ろす。
「くっ」
クラリスはまた死を覚悟したが、ジョワユーズで巨人竜の一撃を受け止めていた。
「嘘でしょ、私が?」
それ以上に巨人竜が驚いていた。
「魔法使いだぞ、なぜ俺の攻撃が通らん」
「そろそろこちらのターンだな」
アルフレッドは剣技・無刃でアクロバットに空を蹴ると巨人竜を連撃で切り裂いた。
エイブラハムは剣技・無双連撃を使った。目にも止まらぬ華麗な連撃が巨人竜を捉え、最後の一撃がクリティカルヒットでこの巨人をよろめかせる。
続いてアリシアが剣技・風陣連弾と豪壮氷帝のミックス攻撃で巨人竜の最大生命力を削り取る。
エリオットは剣技・真・波動砲を打ち込み、この巨竜を打ち倒した。
クラリスは多重詠唱展開からの魔力・極千パーセント、そして「竜殺し、御剣、破陣」と、巨人竜の周囲に魔法陣を展開し、光のドラゴンスレイヤーの剣を放った。
「ば、馬鹿な……この俺の攻撃が通じないだと……あり得ん!」
巨人竜は起き上がると、威圧の咆哮を放った。五人は金縛りにあった。
「これは防げないか」
アルフレッドは罵った。
巨人竜はもう一度ドラゴンブレスを吐き出した。しかし、ダメージはほとんどカットされる。
金縛りはすぐに解ける。
アルフレッドの剣技・切滅八連、エリオットの剣技・衝撃斬、エイブラハムの剣技・無双連撃、アリシアの剣技・風陣連弾に乗せての魔天狼、そしてクラリスの竜殺しの魔法が怒涛の勢いで巨人竜を打ちのめす。
巨人竜はぼろぼろになって、起き上がることも出来ない。
「みんなの魔剣にドラゴンスレイヤーを付与するわ」
そう言ってクラリスは仲間達の魔剣に竜殺しを付与する。そして自身は空中に舞い上がると、「消滅魔法、極大の魔弾」と、消滅の波動弾を巨人竜に撃ち込んだ。魔法はついに巨人竜の肉体を貫通し、この魔物は悲鳴を上げる。続いてアルフレッドらが魔剣で巨人竜に大ダメージを与える。巨人竜は咆哮し、遂にその肉体は光の粒子となって消失していった。
「やったか」
エリオットが言った。
「そのようね」
クラリスは吐息した。
「神気の霊鎧とやらのおかげか?」
エイブラハムの言葉にアルフレッドが「ああ。全くだよ」と応じた。
「ここまでダメージがカットされるなんて、思ってもみなかった」
アリシアは驚きを隠せなかった。
そして光が降ってきて、第七層への入り口と祭壇が現れた。
巨人竜はパワーストーンを落としている。竜殺し、力アップの蛮力。そして地水火風雷、回復、地水火風雷耐性のランク三、ポーション類を多数。竜殺しはアルフレッドが合成し、蛮力はエイブラハムが合成した。他のパワーストーンはそれぞれに合成、強化を行った。
そうして一行は休息食事の後に第七層へ降りていった。
第七層では、巨大な漆黒の狼が待ち受けていた。狼はまどろみから起き上がると、アルフレッドらを見やる。
「人間か……もう長いことここへ来た者はおらぬ。我が名はリグ=ヴェリル。さて、汝らのその力。試させてもらうとしようか」
アルフレッドらは戦闘態勢をとった。
リグ=ヴェリルは、巨大な顎をかっと開くと、無数の針弾を放ってくる。針弾はアルフレッドらに襲い掛かったが、それほどのダメージは与えられない。神気の霊鎧のダメージカットはいかに強力か、神光の戦士らは知るのだった。
クラリスは例によって多重詠唱に入り、魔力・極千パーセントで仲間の攻撃防御速度を上昇させる。
アルフレッドらはリグ=ヴェリルへ突撃、剣技による大ダメージを与える。
リグ=ヴェリルは「何だと」と驚いた風であった。すると、リグ=ヴェリルの目が光り、それはスキャナーセンサーとなってアルフレッドらの力を看破する。
「成程な」
リグ=ヴェリルはそう言うと、
「道を開けよう。お前たちの力は我を大きく上回っている」
そして光の粒子となって消え去った。後にはパワーストーンとポーションが落ちていた。
「こういうこともありか」
アルフレッドは言って戦利品を確認する。地水火風攻撃、回復、地水火風耐性、それぞれランク三を大量に入手し、強化を進めておく。
そして光が降ってきて、第八層への入り口と祭壇が現れた。
アルフレッドらは一息入れて、第八層へ下りて行った。
第八層に待ち受けていたのは、見たことのある漆黒の異形戦士であった。だが、この番人もアルフレッドらの強さを確認すると、別れの言葉を残してパワーストーンを落として消えた。
第九層では苦い思い出のある黒い手が番人として登場したが、アルフレッドらはこれも難なく片づけてしまう。パワーストーンでの強化を進めて、第十層へ向かう。
第十層の番人は、圧倒的に巨大なギガースドラゴンであった。
「汝らこの迷宮を踏破せり。よくぞここまで辿り着いた。ここは最終層。そして我は最後の番人カルト=ラス。さあ、汝らの力を示せ。力なくして栄光無し」
そう言い放つと、カルト=ラスは光りのドラゴンブレスを吐き出した。凄まじい威力で、神気の霊鎧が無ければ大ダメージを受けていたことは間違いない。
クラリスが多重詠唱に入り、味方にバフ効果をかけておく。
アルフレッド、エイブラハム、アリシア、エリオットらは剣技でカルト=ラスにダメージを与える。
カルト=ラスの全身が光り、全方位に光の刃を放った。アルフレッドらは切り裂かれる。
「このドラゴン、やる」
神光の戦士らは回復に追われる。
カルト=ラスは巨体を高速で振り回し、翼や尻尾でアルフレッドらを薙ぎ倒した。続いて光のドラゴンブレスが襲い来る。
「癒しの手を、神波招来」
エリオットが全体回復魔法を使う。そして魔力回復ポーションを飲む。
クラリスは仲間たちに竜殺しのバフをかける。
アルフレッドは超人化で天井に着地すると、そこを蹴ってカルト=ラスの頭部目掛けて突進した。エクスカリバーがこの巨竜の眉間に深々と突き刺さる。カルト=ラスは咆哮を上げて前足でアルフレッドらを掴むと、握り潰そうと力を込める。しかし神気の霊鎧が守ってくれる。そこへアリシアが飛んできて、カルト=ラスの前足を切り落とした。アルフレッドは自由を得て着地する。
「すまんアリシア」
「何言ってるの」
エイブラハムにエリオットは無双連撃と衝撃斬を叩き込み、クラリスは属性看破を行使する。だがこのドラゴンに弱点はない。ならば、とクラリスは純粋に威力の高い魔法を選択する。
魔力・極千パーセント、魔法範囲広域化。複数の魔法陣がカルト=ラスを取り囲む。
「放て、竜殺し、スレイヤード」
魔法陣から放たれた黒い無数の剣がカルト=ラスを貫通する。この巨竜は雄たけびを上げた。
すると、カルト=ラスは、竜語で魔法を唱えた。閃光が爆発し、アルフレッドらを吹き飛ばした。
「ドラゴンマジック? こいつ……まだそんなのがいるなんて」
クラリスは悪態をついた。
エリオットはまたしても全体回復魔法を唱える。
「何てことだ。神気の霊鎧が無ければ死んでるぞ」
しかし神光の戦士らは不屈で反撃に転じる。
アルフレッド、エイブラハム、エリオット、アリシアらは竜殺しのバフをクラリスから貰っている。アルフレッドは竜殺しのパワーストーンを合成しており、その攻撃力は更に上がっている。それぞれに剣技を行使してカルト=ラスに大ダメージを与える。
果たして、カルト=ラスはまたしてもドラゴンマジックを唱える。無数の霊体ドラゴンが出現し、アルフレッドらに突入する。クラリスが迎撃のメテオを放ったが、それでも数が多過ぎる。霊体ドラゴンは戦士たちに直撃し、爆発する。やられたのは精神だ。強力な精神攻撃である。神気の霊鎧はそれも防御するが、ダメージなしとはいかない。
エリオットが「招来、癒し手、内なる心を」精神回復魔法をかけることでアルフレッドらは復活。
「どこまで持つかしらカルト=ラス、これでも」
クラリスは「竜王招来、波動竜撃」と巨大な魔法陣から竜の英霊を召喚した。霊体の竜王はカルト=ラスに突進し、貫通して炸裂した。この巨竜の肉体が崩壊する。
「今だ!」
アルフレッドら、剣士たちはカルト=ラスの首に飛んだ。剣技を行使して、アルフレッドらはカルト=ラスの頭部を首から斬り落とした。
崩壊していくカルト=ラス。すると、その肉体から光がほとばしり、霊体のカルト=ラスがそこにいた。
「汝らの力、見せてもらった。見事であった。ここまでが悟りの迷宮・表だ。次に悟りの迷宮へ入った時には、悟りの迷宮・裏・第一階層になる。だが、しばらくの間、汝らが立ち入ることは出来ぬ。また旅の間に力をつけ、時が来たならば、裏への門は開かれるであろう」
さて、とカルト=ラスは言った。
「何れにしても、戦果を受け取るが良い」
そう言って、カルト=ラスはパワーストーンとポーションを残して光の粒子となって消失した。
「悟りの迷宮・裏……」
アルフレッドの呟きにアリシアは「何か怖い気がするわね」と肩をすくめる。
「とりあえずパワーストーンを見てみよう」
エリオットがそれらに歩み寄った。
竜殺しは十個ほど落ちていたので全員合成する。竜撃閃光衝破、竜撃精神破壊、二つのドラゴンマジックはクラリスが合成する。他は地水火風雷、回復魔法、地水火風雷耐性のランク三から四が落ちていたので一度分解して合成、強化する。そして、光のパワーストーンが落ちていたので、これはアルフレッドが合成した。
「こんなところか」
エイブラハムは自身のグラムを掲げて見やる。
「そうだな。ひとまずコースト様のところへ戻ろう」
アルフレッドが言って、一同迷宮から離脱する。
知らせを聞いたコーストは「そうか」と頷いた。
「表をクリアしたか。よくやったの」
「それではコースト様が言われていた最終層までクリアしていないと仰るのは、迷宮・裏のことだったのですか」
「そうじゃな」
アリシアの問いにコーストは頷いた。
「何れにしても、しばらくは迷宮の扉はお主らに対して開くことはない。旅を続けるが良かろう。次はさしずめティラネシア大陸か。エルフの帝国」
「はい」アルフレッドは頷く。「コースト様は何かご存じですか」
「もう随分昔のことじゃからな。尤も、エルフたちは長命の種族。わしらの十年なんぞ数日にしか思えぬのかも知れぬな。今は闇の軍勢に手を焼いているようじゃが。どの国も同じであろうが。そういえば、南の大陸へ向かう魔弾鉄道が魔物たちによって破壊されたと聞く。復旧のめどが立っておらぬ故、今は他国との往来に船が必要だそうじゃが」
「船か……」エイブラハムは思案顔。「エルフ族の船は不思議な力で風を捉える世界でも有数の性能を持っていると聞いた」
「神々は言っていた。エルフたちに力を貸すことになると。差し当たり、バトロティア帝国がどうなっているか、行ってみないとな」
エリオットの言葉にクラリスが頷く。
「また、闇の手勢を相手にすることになるのね。今度はどんな手を打ってきますかね」
「お世話になりましたコースト様」アルフレッドは言った。「俺たちは行きます」
「うむ。頼んだぞ。今はお主らが希望じゃ。だが、道中気を付けてな」
そうして、お辞儀してアルフレッドらはコーストの前を辞した。
彼らは次の目的地、ティラネシア大陸へ向かって魔弾鉄道に乗り込むのであった。




