第二十三話
最初の一撃。
デレーザ=ミアンはファイアブレスを吐き出した。高威力のブレスにアルフレッドらは大ダメージを受ける。
しかしすぐにダメージ自体は回復する。
クラリスは多重詠唱に入る。魔力・極千パーセントで仲間たちの攻撃防御、速さを上げる。
またエリオットが炎耐性の魔法を仲間たちにかけておく。
アルフレッドとアリシア、エイブラハムは超人化で加速。
「剣技・激烈乱舞、炎に乗せて」
アルフレッドの攻撃はデレーザ=ミアンに吸収された。
アリシアは竜神の吐息、地属性を放ったが、それも吸収された。
エイブラハムの炸裂氷牙は凄絶にこの魔物を切り裂いた。
エリオットは「クラリス、奴の属性を看破してくれ」と言うのに、クラリスは「今やってる」と応じた。デレーザ=ミアンの弱点は水と風、地と火のダメージは吸収する。
クラリスはそのことを仲間たちにテレパシーで伝える。
デレーザ=ミアンは咆哮し、凄まじい勢いで加速する。そして、その腕が巨大化し、アルフレッド、アリシア、エイブラハムらを薙ぎ払う。三人は吹き飛ばされた。
「弱点があるならそこを突く」
クラリスは魔力・極千パーセントで「暴風烈破、断裂」と風の極大魔法を放つ。文字通り切り裂く暴風がデレーザ=ミアンを切り裂く。
アルフレッドらは弱点属性に乗せて剣技を叩き込む。エリオットは風属性の真・波動砲を放つ。
デレーザ=ミアンは怒りに咆哮し、腕を振り上げる。アルフレッドらの頭上から無数の岩の爆弾が降り注ぐ。岩爆弾は凄まじい衝撃を与え、神光の戦士たちも回復に追われる。
エリオットは地属性の耐性魔法をかける。
「なかなかやってくれるな小僧どもが」
デレーザ=ミアンはいきなり超加速すると、アルフレッド、アリシア、エイブラハムらを殴り飛ばした。そしてクラリスにも襲い掛かったが、その拳をエリオットが神撃の盾をまとって受け止めた。
アルフレッドが剣技・無刃・水属性で切り裂けば、アリシアが剣技・豪壮氷帝でデレーザ=ミアンの最大生命力を削り取る。エイブラハムは剣技・炸裂氷牙で大ダメージを与える。
「ファイア・イクスプロージョン!」
デレーザ=ミアンは天に腕を突き出す。その全身から炎が爆発し、神光の戦士たちを焼き尽くした。
耐性魔法とパワーストーンでダメージは軽減されるも、アルフレッドらは回復に追われる。
続いて、デレーザ=ミアンは、「岩弾爆裂魔弾、メテオ」と魔法を使った。
無数の岩の魔弾がアルフレッドらを襲い、爆発と炸裂が大ダメージを与える。しかし、クラリスは魔盾強・魔法反射のパワーストーンを装備しており、メテオを反射した。
クラリスの反撃。魔力・極千パーセント。
「サモンエレメンタル、氷の女帝、氷烈」
クラリスは水の上級精霊を召喚し、その精霊が氷の刃を無数に連射する。デレーザ=ミアンは氷刃に貫かれて悲鳴を上げる。
「小娘が!」
デレーザ=ミアンは加速した。しかしまたしてもエリオットが盾になる。
「ここは通さん」
回復を終えたアルフレッド、アリシア、エイブラハムが凄まじい連撃を繰り出す。デレーザ=ミアンは背後から大打撃を受ける。
「雑魚どもが……人間ごときに私が敗れるはずが無いのだ」
デレーザ=ミアンは「破滅の炎槍、獄連」と、空中に無数の炎の槍を召喚し、それらを打ち込んだ。
アルフレッドらは灼熱の槍に貫かれた。
「くそっ……こいついい加減やるな」
アルフレッドは毒づいて回復魔法をかける。
「だが、諦めてたまるか」
アルフレッドは立ち上がる、アリシア、エイブラハム、エリオット、クラリスらも回復を終えて立つ。
氷の女帝が攻撃し、クラリスは再び多重詠唱に入る。
「水竜、風竜、来たりて我が敵を撃て。そして、風の魔神切り、断裂」
水の竜と風の竜が弾丸となってデレーザ=ミアンに直撃して爆発する。そして、巨大な風の刃が出現して、デレーザ=ミアンの腕を切り落とした。
「剣技・無刃、暴風の刃」
アルフレッドはエクスカリバーに暴風をまとわせ、デレーザ=ミアンをアクロバットに切り裂きに切り裂く。
「剣技・竜神の吐息・水竜」
アリシアはミスティルテインを突き出し、水竜のブレスを打ち込む。
「剣技・炸裂氷牙」
エイブラハムもまたグラムに氷の刃をまとわせ、デレーザ=ミアンを凄絶に斬る。
「剣技・衝撃斬」
エリオットもクラウ・ソラスに風属性をまとわせて衝撃を放つ。
この連続攻撃を耐えきったデレーザ=ミアンは、腕を再生して、拳を地面に叩き込んだ。
「闇の魔法陣、闇黒炎招来」
アルフレッドらの足下に魔法陣が出現して黒い炎が噴き出してくる。神光の戦士たちは激しく焼かれた。
エリオットが天に腕を突き出す。
「癒しの手を、神波招来」
全体回復魔法だ。アルフレッドらの生命力が全快する。エリオットは魔力回復ポーションを飲んだ。
「エリオット、サンキュー助かった」
アルフレッド、アリシア、エイブラハムらが再びデレーザ=ミアンに突進する。三人の攻撃で大ダメージを受けたところへ、クラリスが魔法を叩き込む。
「氷天招来、怒りの氷弾」
巨大過ぎる一つの氷のミサイルがデレーザ=ミアンに降る。氷ミサイルは直撃して大爆発した。
魔法のプラズマが晴れて、半壊したデレーザ=ミアンの姿が露わになる。そしてその肉体は崩壊していく。
「ば……馬鹿な……この俺様が……死ぬというのか……体が……戻らない」
消え去っていくデレーザ=ミアン。それを見やるアルフレッドら。
その時だった。首相補佐官のハーマンが上空から舞い降りてきた。
「何だ、新手か」
「奴は首相補佐官のハーマン」
仲間たちの疑問にエイブラハムが応じる。
そして、デレーザ=ミアンも驚いていた。
「ハーマン……お前は一体……」
「デレーザ=ミアン、お前にチャンスをやろう。神光の戦士を殺すのだからな」
そう言うと、ハーマンであった者は暗黒の甲冑をまとった剣士に変貌した。
「我は闇の七騎士ダビドレックス。さあ、神光の戦士たちよ、ゲームはまだ終わらんよ」
ダビドレックスはそう言うと、暗黒剣アザレド=フィアを抜いて、デレーザ=ミアンに剣をかざした。すると、デレーザ=ミアンのダメージが回復し、その体を黒いオーラが包み込んだ。
復活したデレーザ=ミアンは、「おお!」と歓喜の雄たけびを上げた。
「力が……力が湧いてくる! ダビドレックス卿、感謝する」
デレーザ=ミアンは笑った。
「神光の戦士たちよ、今度こそお前たちの最後だな。このパワーの前にお前たちはひれ伏すのだ」
エリオットがクラリスに言った。
「クラリス、奴の弱点はどうなった」
兄に言われて、クラリスはもう一度属性看破の魔報を使った。
「弱点は光属性だけ。ただし他の属性も通常ダメージで通るわ」
そのことをクラリスはテレパシーで仲間たちに伝える。
ということは光のパワーストーンを持つアリシアの攻撃とエリオットの神聖魔法が最も効果的ということになる。
「アリシア、援護する。お前のパワーストーンが奴の弱点だ」
「了解したわ」
アルフレッド、エイブラハムらは散開してデレーザ=ミアンを挟撃する。エクスカリバーとグラムの一撃を、デレーザ=ミアンは黒いオーラで受け止めた。
エリオットはその真正面から突進し、光の魔法をまとわせたクラウ・ソラスを突き出した。魔剣が黒いオーラを貫通する。
「何だとっ……だがこの闇のオーラは破れん」
デレーザ=ミアンは笑声を上げると、全方位に黒いオーラを放った。
アルフレッドらは吹っ飛び切り裂かれた。
しかし、デレーザ=ミアンの上方からアリシアがミスティルテインに光をまとわせ、豪壮氷帝を叩き込んだ。魔剣がこの魔物の後頭部を貫いて焼いた。
デレーザ=ミアンは絶叫した。アリシアを掴んで投げ捨てた。
「小娘が!」
怒り狂うデレーザ=ミアンにクラリスの魔法が直撃する。
「怒れる炎竜、敵を食らえ」
巨大な炎の竜がデレーザ=ミアンを食らい、投げ飛ばした。
その間にアルフレッドらは回復する。
クラリスは再び多重詠唱に入り、仲間たちの攻撃防御、速度を上昇させる。
エリオットは「邪悪を滅せし光の槍よ、怒涛、天空より来たれ」神聖魔法を詠唱する。
デレーザ=ミアンの頭上から光の槍が怒涛となって降り注いだ。白光の無数がデレーザ=ミアンを凄絶に焼く。
アリシアが舞い上がる。
「剣技・風陣連弾、からの竜神の吐息、光!」
ミスティルテインから光のドラゴンブレスが連弾となってデレーザ=ミアンを焼き尽くす。
デレーザ=ミアンは膝をつく。
「なぜだ……! なぜパワーアップしたはずの俺がこれほどのダメージをっ」
アルフレッドとエイブラハムが加速する。二人とも裂ぱくの気合と共に魔剣を突き出す。エクスカリバーとグラムはデレーザ=ミアンを貫通した。
「十倍にして返してあげるわ。魔弾の彗星、力強きオーラ、メテオ」
クラリスはメテオを放った。光輝く無数の魔弾がデレーザ=ミアンに襲い掛かり、大爆発を起こす。
「馬鹿な……こんな馬鹿なことがあるか……ダビドレックス卿! 俺に力を!」
そこで、アリシアが超加速し、空を蹴って光のパワーストーンの力を引き出す。
「殲滅せよ! 光烈! 光あれ!」
ミスティルテインがデレーザ=ミアンの頭部を貫通した。そして光が爆発する。
光のプラズマが晴れて、デレーザ=ミアンの上体は吹っ飛んで消滅していた。そして残された半身も消滅していく。
「やったか……」
アルフレッドとエイブラハムは崩壊していくデレーザ=ミアンを見やる。
「成程な。やるではないか神光の戦士たち」
ダビドレックスは言って、空に舞い上がった。
「戦闘データは頂いた。今は勝利の余韻に浸っているがいい。何れお前たちは敗北するのだからな」
そう言って、ダビドレックスは闇の魔法陣を開くと、その中へ姿を消した。
「アリシア」
アルフレッドは彼女の下へ駆け寄る。
「大丈夫か」
「ええ。大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。物凄い衝撃がまだ手に残ってるから」
クラリスは兄に笑顔を見せていた。
「やったわね。これでこの国に巣食っていた闇は消えたのかしら」
「そう願いたいね」
エリオットは言って吐息した。
デレーザ=ミアンは多くのパワーストーンを落としていった。地水火風、生命回復、地水火風耐性のランク三のパワーストーンを多数。アルフレッドらはそれぞれ合成強化を済ませる。
そうして、エイブラハムはラッセルの下へ歩み寄る。
「ラッセル」
「エイブラハム。すまない。全ては闇の手勢の謀略。レナルドもハーマンも、そしてデイモンも、奴らに我々は踊らされていたというわけだ」
「そのようだな。俺も驚いたが、参ったよ」
「神光の戦士であるお前を殺すためか」
「ところで、これからどうなるんだ」
「今の戦闘は全国民が見ていた。恐らく副首相が首相に繰り上がるだろうが、例の傭兵団の法案は棄却されるだろう。元々首相が先陣切って進めていた法案だ。だがこうなっては誰も支持しないだろうからな。世論も」
その時だった。光が降ってきて、コーラスが鳴り始めた。光の神々だ。その場にいる全員が神霊力を感じ取って畏怖した。
「神光の戦士たちよ、ご苦労様でした。全ては解決したようです。エイブラハム」
「はい」
エイブラハムは姿勢を正した。
「よくやりましたね。見事役割を果たしました。これを受け取りなさい」
そうすると、パワーストーンが降ってきて、エイブラハムの手に収まった。
「それは剣技・無双連撃。使い方は合成すれば分かりますね」
「ありがとうございます」
「それから、アルフレッド、アリシア、エリオット、クラリス、エイブラハムも、このパワーストーンを贈りましょう。そろそろ敵のパワーが時々圧倒的になってきたはず」
そうして、アルフレッドらは「神気の霊鎧ランク二」を手に入れた。
「そのパワーストーンの力はパッシブで展開します。敵からのありとあらゆる全ての攻撃を減退させる力を持っています。役に立つでしょう。悟りの迷宮の攻略が進むはずです」
アルフレッドが口開いた。
「では、悟りの迷宮に向かい、次なる道はどこにあるのですか」
「世界地図の北東ティラネシア大陸へ向かいなさい。エルフの帝国バトロティアです。かの地は今、闇の手勢によって厳しい攻勢を受けています。彼らを救うのもまた天命。魔弾鉄道がまだ続いています。帝都ヴィスレスティアへ向かいなさい。エルフたちを救うのです。それによって道が開けるでしょう。では行きなさい子らよ。帝国で会えることを待っていますよ」
そうして、神々は光とコーラスと共に去った。
すでにこの騒動は首都の住民たちに知れ渡っており、やじ馬たちも集まってきている。そして衛兵や騎士たちも、今の光景を目撃した。
ラッセルがアルフレッドらに声をかける。
「今のは何だ? 恐ろしいほどの気配を感じたが」
「今のが光の神々です。事件が解決した時等、現れて次の道を示してくれるのです」
「何と……」
そこでアリシアが言った。
「ひとまず悟りの迷宮へいったん戻るってことね」
「悟りの迷宮とは何だ」
エイブラハムの問いに、アリシアは「道中に説明するわ」と応じた。
「すぐに発つ、と言いたいところだが、今回の事件を傭兵団に伝えなくてはならん」
エイブラハムは言った。
「お前たち、ここにある俺の屋敷まで来てくれるか。各団長と連絡を取り合う」
「分かったよ。付き合うさ」
「ではな。ラッセル。事後処理は任せる」
「任されよう。達者でなエイブラハム」
そうして、一同はその場を後にし、エイブラハムの屋敷へと向かう。
エイブラハムの豪邸にやってきた一同は、副官サンドラ大佐の出迎えを受ける。
「お帰りなさいませエイブラハム様」
「サンドラ、少し留守にしたな。すまん」
「いえ。事情は承知しています」
「そうか。では丁度いいところにいてくれた。一緒に来てくれ」
「かしこまりました」
そうしてサンドラと合流した六人は、屋敷の中にある円卓の間に入った。エイブラハムがコンソールを操作すると、ややあって、四人の傭兵団長のホログラムが浮かび上がる。
「やあエイブラハム」
サブリーナは笑っていた。
「とんでもない事態だったね」
「全くだな」トラヴィスが言った。「レナルド、ハーマン、デイモン……全員魔物だったとは」
「ドルシアム王国の件もある。油断はできないな」
マイルズの言葉にロミーは思案顔。
「それにしたってよくもまあ簡単になりすましたものだね。これはこれで問題が大きい気もするな」
ひとしきり団長たちと話していたエイブラハムは、ところで、と切り出した。
「傭兵王のことなんだが。今後の方針はお前たち四人と副官や幹部たちからなる合議制で決めるのはどうかと思ってな。どうも、傭兵王についてはまともな選挙戦にはなりそうもないだろう。それから、アドバイザーとしてサンドラを推薦したい」
「考えてくれたんだね。なるほどね……それがいいかも知れないね」
サブリーナは頷いた。それから、マイルズ、ロミー、トラヴィスも賛同する。
「良かった。これで後は任せていける。俺は生きて戻るつもりだ。だから、待っていてくれみんな」
そしてエイブラハムは通信を切った。アルフレッドらを見やる。
「というわけだ。待たせたな。今日は泊まっていくか。激戦続きだったからな」
「それはありがたい」
エリオットは肩をすくめた。
「サンドラ、よろしく頼むぞ」
「承知致しました」
サンドラは敬礼した。エイブラハムの推薦とあらば断わるわけにはいかない。傭兵王不在の間、尽力するつもりである。
そうして彼らは最後の夕食をすませ、シャワーを浴びて就寝した。
翌朝、神光の戦士たちはまず悟りの迷宮に向かうべく魔弾鉄道に乗り込み、ラオンメルド共和国首都を発つのであった。




