第十四話
アルフレッドらは悟りの迷宮へとやってきた。エリオットとクラリスは道中にその件について聞いていた。
四人はコーストのもとを訪れる。老賢者は、四人の若者たちを歓迎する。
「お主ら、よくやったの」
「あなたがコースト様ですか」エリオットが進み出る。「私は王子エリオットと申します。こちらが妹のクラリスです。父のデリックがよろしくと申しておりました」
「おお、あのいたずら小僧の子供たちか。デリックがな。なあに、古い話じゃて」
それで、とコーストは続けた。
「ここへ来たということは、迷宮の深部へと進むことにしたのじゃな、アルフレッド」
「はい。実は神託がありまして。悟りの迷宮に挑むことを推奨すると」
「推奨か、成程な。四人であれば四層を突破できるかも知れぬな。やってみるがいい」
そうして、その夜はコーストの歓待を受け、アルフレッドらは翌朝発った。
悟りの迷宮、第四層への入り口に立った一行。アルフレッドはエリオットとクラリスに四層の敵について伝える。
「成程な、君たち二人だけでは厳しそうだな。魔法に対する防備が何も無くてはな」
「ああ。エリオットにクラリスがいれば心強いよ」
「では行ってみるとしようか」
四人は第四層へ降りていく。
待ち受けていた漆黒の異形である亜人兵と亜人指揮官は咆哮する。
まずはエリオットとクラリスが魔法防御を展開する。エリオットの光剛破断による光の盾、そしてクラリスが物理防御のバリアを四人に付与する。
四人は光剛破断を前にエリオットの後ろから前進する。まずはクラリスが亜人兵士たちに魔術を叩きつける。魔力・極二百パーセントだ。
「氷牙、凍てつく凍結の刃!」
無数の巨大な氷の刃が亜人兵らに降り注ぐ。氷の刃は更に炸裂して追加ダメージを与える。
「続いて……風月、切り裂く者!」
今度は無数の風の刃が亜人兵らを襲う。亜人兵らは次々と真っ二つに切り裂かれる。
「こいつは凄いや」
「ほんとね。クラリス無双だわ」
アルフレッドの言葉にアリシアが応じる。
「雑魚はあらかた片付いたな。残るはあの亜人指揮官か」
と、亜人指揮官が闇の波動を連打してくる。それを受け止めるエリオットの光剛破断。
「それじゃあこっちも魔法でごり押ししてあげるわ」
クラリスは魔力・極五百パーセント発動。
「大地の竜牙、裂き殺せ!」
亜人指揮官の周囲の地面から岩竜が次々と沸き上がり、この異形に嚙みついた。岩竜の牙は亜人指揮官を引き裂き、ずたずたに破壊した。
「これなら行けるだろう。かたを付けようアリシア」
「了解したわ」
アルフレッドは剣技・激烈乱舞に聖天衝撃の合成技である光の乱舞で亜人指揮官を打ち砕き、アリシアは剣技・竜神の吐息に魔天狼を合成してドラゴンブレスをまとった光輝く狼で敵を貫いた。
亜人指揮官は悲鳴を上げて崩壊する。そして光の粒子となって消滅する。魔物たちは超人化のパワーストーン、剣技・切滅八連、剣技・豪壮氷帝、状態異常・耐性、地水火風・耐性、また地水火風雷のパワーストーン、ポーション多数を落としていった。エリオットは超人化のパワーストーンを合成し、アルフレッドは切滅八連、アリシアは豪壮氷帝を合成する。他のパワーストーンは強化に回す。
そうして、光が降ってきて、祭壇と第五層への道が現れる。
「呆気なかったな。信じられんよ。あれだけ苦戦したのに」
アルフレッドの言葉にアリシアが応じる。
「エリオットとクラリスが入るだけでこんなに違うなんて」
四人は食事をして一息入れると、第五層へと向かう。
「これならかなり進めそうだな」
アルフレッドは楽観的に言ってみる。
「まあ、先ほどの亜人程度なら、苦労はなさそうだが」
エリオットは思案顔。
そして四人は第五層へと踏み入れた。
そこで待っていたのは、漆黒の甲冑に身を包んだ者が一人。
「来たか。ここまで辿り着く者は久方ぶりだな。我はドゴル=ボレ。この階層で卿らの壁となる戦士だ」
アルフレッドらはこれまでの経験から簡単にはいかないだろうとは思う。外見に油断はできない。
「さて、と。では始めるかね」
ドゴル=ボレは剣を抜くと、それを床に突き立てた。闇の波動が炸裂して、エリオットは光剛破断で光の盾を展開する。凄まじい衝撃にエリオットは全力で踏ん張る。
「アルフレッド、アリシア、攻撃を強化するわ」
クラリスが言って、魔力・極千パーセントで攻撃アップの魔術を付与する。
「よし、行くぞ!」
アリシアもそれに続く。二人は超人化で加速して一気にドゴル=ボレとの間合いを詰める。
「剣技・激烈乱舞に加えて聖天衝撃、切滅八連!」
「竜神の吐息に風陣連弾、魔天狼からの豪壮氷帝!」
怒涛の魔剣の連弾がゴル=ボレに打ち込まれる。手応えはあった。だが。
「まだまだ、この程度では終わらんよ、神光の戦士たちよ」
ドゴル=ボレは言って、剣を構える。
「剣技・無刃」
ドゴル=ボレが消えた。実際には猛加速するドゴル=ボレの剣撃がアルフレッドを直撃し、吹き飛ばした。
アルフレッドは壁に激突し、喀血した。全身がばらばらになりそうだ。
「何だと……」
すぐに回復魔法をかける。
続いて、ドゴル=ボレはアリシアに剣を向ける。同じく剣技・無刃が切り裂く。駆け抜けるドゴル=ボレの一撃、アリシアは血を吐いてその場に倒れ伏した。
エリオットが超人化で駆け付け、アリシアを回復させる。
そこで、クラリスが仲間たち全員にバリアを付与する。これで今の剣技は封印できるはずだ。
「やってくれるじゃない。だけど、魔法からは逃れられないでしょう」
クラリスは魔力・極千パーセントで魔法を放つ。
「破壊の魔弾、全てを消滅させし破弾、敵を消せ!」
クラリスは消滅魔法の魔弾を放った。ドゴル=ボレは、印を結ぶと、消滅魔法の弾丸に対する。そして。魔弾はこの魔剣士が展開するシールドに激突して砕け散った。ドゴル=ボレは無傷であった。
「何でっ、消滅魔法よ」
「中々に危険な魔法を使う」
ドゴル=ボレが言った刹那。
「光の監獄、闇を閉鎖せよ」
エリオットの神聖魔術だ。ドゴル=ボレの周囲を光の格子が取り囲む。そして、まばゆい光が爆発し、閃光が邪悪を封じる監獄からほとばしった。
閃光が晴れて、そこに、ドゴル=ボレが立っていた。
「大したものだ。第四層を突破しただけのことはある」
ドゴル=ボレはほとんどダメージを受けていない様子であった。そして、この魔戦士は剣を天井に向かって突き出し、それから一振りした。黒い光が神光の戦士らを襲い、バフ効果を消し去った。ドゴル=ボレは更にそのまま剣を床に突き刺した。黒い閃光が爆発し、四人を打ち倒した。
果たして、アルフレッドとアリシアは回復魔法で治癒すると、超人化でドゴル=ボレに突進した。エクスカリバーとミスティルテインがドゴル=ボレを背後から串刺しにした。
「弾けろ、爆炎!」
「炸裂せよ、風陣!」
魔剣から爆発した炎と風の魔法がドゴル=ボレを吹き飛ばす。ドゴル=ボレは空中で回転すると、ふわりと床に降り立った。胸に手を当てる。傷跡から黒いオーラが漏れ出している。
「傷? この私が?」
ドゴル=ボレはぐらっと揺らいだ。この魔戦士は回復手段を持たない。だがかなりのタフさを持っている。
「いつの日か忘れてしまったなこの痛み」
ドゴル=ボレは言うと、剣を構えた。
「剣技・無刃、乱撃」
大地を蹴って爆ぜるドゴル=ボレ。もの凄い速度で滑空し、四人の神光の戦士らを立て続けに切り裂き打ちのめした。アルフレッドらはみな倒れる。
回復魔法で体勢を立て直すと、四人は立ち上がる。
「もはや無駄だ。お前たちに勝ち目はないぞ」
「それはどうかしらね」
クラリスはポーション回復で魔力を復活させる。そして魔力・極千パーセント。
「多重詠唱発動、魔法範囲広域、からの……高加速、からの守備力強化、攻撃強化! みんな、超人化に上乗せするわ。一気に畳みかけて」
そう言って、クラリスはドゴル=ボレに向けてデバフをかける。
「逆転魔法……低加速、そして守備力攻撃力低下!」
アルフレッドらは突進した。
「何だと、体が重いっ」
ドゴル=ボレは、アルフレッド、アリシア、エリオットらの剣技を全弾まともに食らった。
激烈乱舞に聖天衝撃の光の衝撃斬、そして切滅八連の連続クリティカルヒット。竜神の吐息に乗せた風陣連弾、大ダメージの魔天狼の光の狼、そして魔剣に乗せた氷刃が敵の生命力を削り取る豪壮氷帝。エリオットはクラウ・ソラスから発する光剛破断を、ドゴル=ボレに向けて爆発させる。
そして、クラリスが舞い上がって魔法を放つ。
「地烈、水聖、炎覇、風雷、合体精霊! 爆連!」
上方から降り注ぐ黄青赤緑の光の奔流がドゴル=ボレを直撃する。
魔法のプラズマが晴れて、そこに、膝をつくドゴル=ボレがいた。この魔戦士は吐息も荒かった。
それでも警戒して魔剣を構えるアルフレッドら。
「見事だな。魔法使い。お前に最後までしてやられたわ。それに、お前たち、並みの攻撃力ではない。敬服したよ」
そうして、ドゴル=ボレは剣をついて立ち上がった。
「先へと進むがいい。だが、この私よりも更に強力な者が待っていることを忘れるな」
そうして、ドゴル=ボレは光の粒子となって消滅した。この第五の番人は、地水火風雷、生命回復のそれぞれランク二のパワーストーンを落とした。更には高速飛行、そして剣技・無刃。またついに闇殺しの、光のパワーストーンを一つ落としていった。
剣技・無刃はアルフレッドが合成する。高速飛行はエリオットが、そして光のパワーストーンはアリシアが合成した。そしてランク二のパワーストーンを合成したことで、それぞれ魔法が強力になった。
光と共に祭壇と第六層への入り口が出現する。
尤も、四人はさすがに心身ともに消耗し、食事と睡眠をとった。
それから半日ほど熟睡し、アルフレッドらは、第六層へと足を踏み入れる。
六層で待ち受けていたのは、漆黒の巨人竜であった。巨人の頭部が竜であり、翼も尻尾も付いている。そして手には二刀流の蛮刀である。アルフレッドらの侵入に気付くと、巨人竜はざらついた声で笑った。
「ドゴル=ボレを倒してきたのか。少しは骨のあるやつが来たか」
巨人竜はまた笑うと、「では戦闘開始だ」と言って、炎のドラゴンブレスを吐いた。神光の戦士たちはその一撃で戦闘不能に陥って第一層へ戻された。
「何だって……」
「たった一撃か」
「噓でしょ……」
「ドラゴンブレスなら前もってシールドを展開しておけば大丈夫よ」
「どうだろうな」
「とにかく、もう一度挑戦してみましょう」
四人はクラリスのシールドを身にまとい、再び六層へ降りた。
巨人竜は再びドラゴンブレスを吐いて、それに耐えたと見るや襲い掛かってくる。思いの他早い蛮刀の一撃でクラリスが戦闘不能に陥った。残った三人は超人化で立ち回るが、この巨竜が発した雄叫びで金縛りになると、再びドラゴンブレスで戦闘不能に陥った。
またしても第一層へ戻った彼らは、それから幾度か挑戦を繰り返した。だが、この巨人竜の圧倒的な攻撃力の前に、ついにリタイアする。
「駄目だ。一撃でも食らったら終わりだ。これじゃあ戦いにならない」
アルフレッドの言葉にアリシアも応じる。
「そうね。ちょっと、何か攻略の方法が見つからないわ」
「パワーが桁違いだ。ドゴル=ボレよりも更に強力だ」
エリオットが言う。クラリスも肩をすくめる。
「確かに、今の私たちじゃ無理ね。何か、いつか倒せるようになるのかしら」
「とりあえず、ここはまたいずれ来よう。今よりもレベルアップしたら」
アルフレッドは言った。他の三人も同意する。
「ひとまずラオンメルド共和国へ向かうとしようか」
かくして、四人の神光の戦士たちは、魔弾鉄道で国境を越え、ラオンメルド共和国へと進むことになる。




