第十一話
バルベルは余裕を見せながら歩いてくる。
「さあ、面白くして下さいよ」
まずはエリオットが盾を構えながら突進する。
「光の御手! 聖なる破壊!」
盾から光の渦がほとばしり、バルベルを包み込む。
そしてその背後からアルフレッドが超人化のパワーストーンで飛び出して加速する。彼らの魔剣には地水火風の全属性が付与されている。
「剣技・激烈乱舞!」
凄まじい乱れ撃ちの剣舞がバルベルを切り裂く。
「剣技・竜神の吐息!」
アリシアがミスティルテインを突き出せば地水火風の四つの竜がきらめく波弾となってバルベルに襲い掛かる。閃光が炸裂し、バルベルは爆発の直撃を受ける。
クラリスは魔力・極八十パーセントを行使して魔法の威力を上昇させる。
「降臨! 四大属性波動弾!」
凄絶なる光線がバルベルを貫く。
果たして。バルベルは衣服はぼろぼろになっていたが、笑みを浮かべたまま立っている。
「さて、どうしましたか? 今のが全力ならあなた方に到底勝ち目はありませんよ」
バルベルは腕を広げると、天を仰いだ。
「闇の波動! 烈破!」
バルベルから全方位に漆黒の波動がほとばしる。
そこでエリオットが前に出る。
「剣技・光剛破断!」
聖なる光が降ってきて、四人の前に輝く巨大な盾が出現し、バルベルの烈破を受け止めた。
「ほう、やりますねえ。防御は鉄壁というわけですか。ですが、魔法を全て防ぐことが出来るわけでもないでしょう」
バルベルは言って、腕を突き出す。
「氷竜演舞・烈!」
氷の竜が出現すると、それが空中で炸裂してアルフレッドらを氷の刃で切り裂く。耐性のパワーストーンと加護・神気がダメージを軽減するも、さらに、「剛竜怒涛!」と、岩の竜が召喚され、爆発した岩竜は巨大な岩つぶてとなって神光の戦士たちに襲い掛かる。
クラリスが即座にシールドを展開し、それを受け止める。
「魔法使いのくせにタフそうだな」アルフレッドが毒づくと、エリオットは言った。
「全く効いていないはずはない。ダメージは入っているはずだ。俺が前に出て奴の攻撃を引き付ける。アルフレッド、アリシア、クラリス、撃って撃って撃ちまくれ。行くぞ」
エリオットは「バルベル! こっちだ! 加護の盾! 無敵!」と、巨大な盾を召喚して前進する。
「無駄なあがきだ」
バルベルは腕を振り、爆裂火炎弾を連射してくる。無敵の盾がそれらを受け止める。
アルフレッドは超人化で爆速加速すると、四大属性をエクスカリバーにまとわせ、剣技・激烈乱舞を叩き込む。バルベルは怒涛のエクスカリバー乱舞に切り裂かれる。更に超人化したアリシアが剣技・風陣連弾でミスティルテインを叩き込む。そしてアリシアとアルフレッドは即座に天井に離脱した。
クラリスは魔力・極二百パーセントを行使して、神雷を落とした。
「激神! 神雷!」
雷の上級魔術がほとばしり、バルベルを撃つ。だが何と、バルベルは手から闇の稲妻を出して神雷を相殺する。
「闇のパワーは無限大! 人間ごときが敵うはずがないのだ!」
直後、アルフレッドとアリシアは天井を蹴ってバルベル目掛けて超人パワーで魔剣を振り下ろす。バルベルの両腕が切り落とされる。
「今だ!」アルフレッドはエリオットとクラリスに声をかける。
「上出来だ!」エリオットが加速する。「掃滅貫通! 魔弾の聖槍!」
バルベルの周囲に無数の光の槍が展開し、エリオットの加速と共に一挙に降り注いだ。光の槍はバルベルをずたずたに貫通した。そしてエリオットはクラウ・ソラスを繰り出した。
「重撃! 神皇の怒り!」
クラウ・ソラスは、ずしっ、とバルベルを袈裟に斬った。
続いてクラリスが魔力・極で三百パーセントを行使。
「絶牙! 爆炎竜神!」
巨大な火炎竜神がバルベルを嚙んで持ち上げると、ぐしゃぐしゃに噛み砕いた。竜はバルベルを投げ捨てる。大地に転がるバルベル。
「油断するな! 撃ちまくるんだ!」
エリオットが叫んで、光のマジックミサイルを連射する。アルフレッドもアリシアも、クラリスも魔法攻撃を集中させる。魔法の爆発の閃光がバルベルを包み込み、この魔物はなす術なく打ち滅ぼされるかに思われた。
アルフレッドらが攻撃を止めて、様子を伺う。光と魔法のプラズマが晴れて、バルベルの姿が露わになる。侍従長の姿をした化け物は、両腕を無くし、肉体は崩壊していた。血だまりの中に横たわるバルベル。
「終わったか」
アルフレッドは降り立った。
「だといいんだけど」
アリシアも着陸する。
エリオットもクラリスもバルベルの姿を見て、これで復活はないだろうと思った。
「よし、では行くか。バルナルドの正体を暴いて、父上にかけられた暗示を解かなくては。国民に真実を知らせなくては」
エリオットがそう言った時である。
バルベルの肉体がびくびくっ、と動いて、浮かび上がった。
「神光の戦士たちよ、ここまでやるとは思っていなかったぞ……。俺様の人間の姿をここまでぼろぼろにしてくれるとはな」
「何だと……!?」
「そんな姿で何が出来る。とどめを刺してやる」
アルフレッドとアリシアは魔剣を構えた。
だが、バルベルは信じがたい様子を展開する。何と、失われた肉体が瞬く間に再生し、更には体の筋肉がぼこぼこと盛り上がり、そのままバルベルは巨大化していく。
「馬鹿な……」
戦士たちは後ずさった。
バルベルは五メートルほどの異形の巨人と化し、咆哮した。バルベルの顔は怪物の胸に浮かび上がり、ざらついた笑声を上げる。
「第二形態、この姿を見た以上、お前たちが生き残ることはない」
そして、バルベルは爆発的な速度で加速した。エリオットは殴られて吹っ飛んだ。続いてクラリスを殴り飛ばして、アルフレッドとアリシアも吹き飛ばされた。恐るべき復活のバルベルの猛攻は続く。圧倒的な格闘戦技で戦士たちはなぎ倒された。
回復魔法で体勢を立て直すと、アルフレッドとアリシアは「目覚めよ超人化!」とパワーストーンから力を引き出す。
「行くぞアリシア!」
「こっちだって!」
「雑魚どもが!」
バルベルとアルフレッド、アリシアは猛烈な接近戦を展開する。
エリオットは神々の加護を引き出し、神霊力の白いオーラをまとった。
「聖霊砲!」
エリオットの魔剣クラウ・ソラスが閃光を放つ。白い光の砲撃はバルベルを貫通する。光はバルベルの片足を消失させたが、この魔物はすぐに再生した。
クラリスは魔力をポーションで回復させると、魔力・極三百パーセントで精霊召喚する。
「炎よ、氷よ、風よ、大地よ、集えサモンエレメンタル!」
クラリスの周囲から赤と青と緑と黄の光が溢れ出す。光は巨大な異形の獣と化す。
「精霊合体! 敵を食らえ!」
クラリスの号令で、四つの精霊が合体して巨大な光の獣となってバルベルを襲う。合体精霊はバルベルに食らいつくと、閃光を放って爆発した。バルベルの腹部が吹っ飛んだ。しかし、その大ダメージをバルベルは瞬時に修復再生した。
アルフレッドが激烈乱舞を舞えば、炎と氷と風と大地の力が付与されてバルベルに大打撃を与えるが、この第二形態の再生能力は尋常なものではなく、ダメージをすぐに回復させてしまう。
アリシアも同じく全属性の竜神の吐息を叩き込むが、バルベルはすぐに態勢を立て直す。
バルベルの暴走的格闘戦技は神光の戦士たちを打ちのめした。だが、バルベルも彼らの反撃によってダメージを確実に受けている。バルベルの呼吸も激しく、肉体への負荷も大きいように思われた。
「くくく……やるではないか人間よ。俺様がこの姿を晒してまだ生きているとはな」
そこで、バルベルは「むっ!?」と、何かを察知した様子で周囲を見渡す。
「どうやらここまでのようだな」
「何だと」
アルフレッドは魔剣を構える。
バルベルはざらついた笑声を上げた。
「とんだことになったものだ。お前たちの死ぬ姿が見れないとはな」
そこまで話すと、バルベルは足元に魔法陣を展開し、溢れ出る闇の洪水の中へと姿を消した。
「どういうこと?」
アリシアは仲間たちを見やる。だが誰も回答を持っている者はいなかった。
突然の場面転換は騎兵隊の襲来でやってきた。国王デリックと宮廷魔術師バルナルドらが第一軍団の騎兵連隊を率いて現れたのだ。
「父上!」
エリオットとクラリスは動揺している。
デリックは冷たいまなざしで我が子らを見やる。
「エリオット、クラリス、やはりお前たちは呪われた子であったか。その魔剣が何よりの証!」
「そんな馬鹿な……父上! 目を覚まして下さい!」
「闇の手勢に操られているのです! 父上! 目を覚まして!」
エリオットとクラリスの声もデリックには全く届かない。危険を感じたクラリスは他の三人を連れて転移しようとした。だが魔法が発動しない。
バルナルドが不敵な笑みを浮かべて言った。
「既に結界を張ってある。王女様、あなたの魔法もここでは無力です」
「バルナルド……!」
そうして、この宮廷魔術師は、眼力を使った。バルナルドの眼が赤く光り、四人の動きを封じた。
「何だと……こんなことが……」
アルフレッドは金縛り状態にあって、必死に力を込める。アリシアもエリオットもクラリスも、みんな眼力によって動きを封じ込まれた。
「愚かな子らよ……闇の魔剣士にそそのかされるとは……」
デリックは冷酷なまなざしを我が子らに向けている。
「さて」
バルナルドは、馬を降りると、兵士たちに命じて魔剣を取り上げ、自身の前に持ってこさせた。
「陛下、これが呪われし魔剣です。使う者に破滅をもたらす災いの根源。世界を混乱に陥れる元凶です」
「どうするつもりだ」
「破壊します」
バルナルドの言葉に、「やめなさい邪悪な宮廷魔術師!」アリシアは叫んだ。
「黙って見ておれ、呪われし者たちよ」
バルナルドは四本の魔剣に向かって手をかざすと、雷を手から放出した。雷の攻撃に、魔剣は震えていたが、突如として閃光を放った。
「何だと!?」
光はバルナルドの手に酷い火傷を負わせた。
「この呪われし魔剣が。見たか皆の者。これこそ魔剣が危険である証。この恐るべき剣を葬り去らねばならん。そして、それを操る魔剣使い達も同様にな」
兵士たちの間にさざ波のようにざわめきが走る。
バルナルドは今度は両手をかざすと、強烈な雷を放った。魔剣は光を放って抵抗していたが、遂に光の爆発と共に消滅した。
神光の戦士たちに絶望の色が陰る。
「そんな……馬鹿な」アルフレッドは呆然としていた。
バルナルドは、兵士たちに四人の拘束を命じる。
「陛下、メラヴィンデルに帰還次第、この者たちを処刑し、真に災いが葬り去られたことを全国民に知らしめなければなりません」
デリックは宮廷魔術師の言うがままであった。
「うむ。その通りだ。魔剣とその使い手が粛清されれば、後は魔物たちを我らが王国から撃退するまでだ。邪悪が討たれれば、魔物も勢いを失い兵士たちの士気も上がろう」
「まことにその通りにございます。では、早速王都へ帰還致しましょう。全てを終わらせるのです」
そうして、アルフレッドら四人の神光の戦士たちは、失意のうちに王都へと連行されるのであった。




