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HOPE HUMAN【崩壊世界の希望達】  作者: ヨシオカ フヨウ
拠点:九十九中学校
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四十二話 犬の口

五ヶ月お待たせして申し訳ございません。


本当に超不定期ですがよろしくお願いいたします。

 みんな各々武器を手に持ち、安全地帯がある場所に向かって一列になりながら進む。


 一番手は金剛寺さん、壁家くん、道仙くん、私、ともちゃん、影野くんと射鉄くん、笹江さん、お兄ちゃんと言う順番で私達は安全地帯がある場所に向かって歩みを進める。


 勿論普通に歩くんじゃない。


 抜き足差し足の如く、音を立てないように、ゆっくりとした動きをして、少しずつでもいいからその地帯につけるように歩みを進める。


 この時、少し体制を低くした方がいい。そう金剛寺さんが言っていた。


 理由は、近くに『感染』者がいた時、足元に近付いて足払いをした後、簡単に頭を破壊できるから。と言う事と、『感染』者と同じ視点になって、噛まれたら厄介だから、少しでも噛まれないように姿勢を低くして、音を立てないように進むことができるから。


 実際――前者の足払いの件は今後のためにやってみたことがある。たったの三回。


 でもその三回で分かったことがある。


 これは実用向きではない。これは演技でやってこそ輝けるもので、実際は足払いをすると同時に腐っていて足ごと折れて倒れて来るか、その場所から運悪く骨がむき出しになっている可能性があるため、これは万が一と言うことにしてある。


 と言う事で、姿勢を低くして歩いているのは、噛まれないようにリスクを減らしているから。


「姿勢低くしてって………、もっと豪快に攻撃とかしないの? てかここゾンビいないじゃん」


 そう言いながらともちゃんは四つん這いになって歩みを進めている。私を含めた女性陣、壁家君も四つん這いになって進んでいるけど、男性陣は立ち膝をうまく利用して歩いているからすごいと思う………。


 ともちゃんの言葉を聞いて射鉄くんもい頷きながら金剛寺さんに向かって少し小声で言ってきた。


「そうっすよ。ゾンビがいないのにそんなに警戒していたら、安全地帯につく前に日が暮れちゃいますってぇっ。ここはもう走って行った方」


「しっ!」

『!』


 突然――金剛寺さんが口元に人差し指を立てて私達に合図をかける。


 その合図は誰もが知っているやつで………、静かに。の合図だった。


 それを見た私達は全員会話を止め、射鉄くんやともちゃん、壁家くんは口元に手を当てて、声が出ないように息を殺している。私も片手で口元を押さえて声を出さないようにしている。お兄ちゃんたちは無言のまま周りを見渡している。


 金剛寺さんの合図を聞いて、みんな静かになったことで聞こえて来る――足音。


 べたっ。ずりっ。べた。ずり。


 と、裸足で歩く足音と、何かを引きずる音。


 小さく聞こえていたそれを聞いて、みんな思ったに違いない。『感染』者が近くにいる。しかも………。


 ぺた。ずりっ。はぁ。ぺた。ずりっ。はぁぁ………。


 足音と引き摺る音と同時に、更に聞こえてきたのは息遣い。しかもその息遣いは人間のそれではない。間違いなく………。


「『感染』者………!」


 その言葉を聞いた瞬間、私達の周りの空気が重くなる。真っ直ぐな廊下しかない空間。そしてその音は前からしている。と言うことは………、それが前に来るという事を意味している。


「ど、どうするんだよ………!」

「そんなのわかんないって………!」

「ね、ねぇ落ち着いた方がいいかも。音出したら、ゾンビに気付かれちゃうでしょ?」


 射鉄くんと影野くんの声に震えが生じ、思わず大きな声が出てしまいそうな、そんな恐怖と不安を感じてしまう。そのくらい二人は今――声が震えて、所々で大きくなっている。


 そんな二人の声を聞いて笹江さんが二人のことをなだめるように――落ち着かせるように優しく声をかける。声を聞いた二人はすぐに気付いてまた口元を手で覆ってしまう。


 ともちゃんは無言のままカバンの中に入れていた薬品に手を掛けようとしたけど、それを見た私はすぐにともちゃんの手を掴んで止める。

 

 首を振って、ここで使ってはいけない。それは本当に最終手段だからと言うことを目で訴えかけると、ともちゃんは少しためらっていたけど、観念したのかバックから手を引いてくれた。


 それぞれが正面からくる『感染』者、ゾンビに対して警戒を強める中、私はバールをリュックから出してしっかり持った後、正面からくるそれにいつでも攻撃できるように視線を向ける。


 ぺた。ずりっ。はぁ。ぺた。ずりっ。はぁぁ………。


 どんどん大きくなっていく足音と引き摺る音、そして息遣いを聞きながらその時を待つと………それは突然現れる。


 正面の廊下の向こうから見えるそれは、私達の学校の征服を着ている。ところどころ噛まれた痕が痛々しく残り、破れたところには血が付着しているそれは――正真正銘『感染』者だった。


 引きずるような音は『感染』者が掴んで引っ張っている死んでしまった学生からしていたんだ。足首を掴んで、そのまま力任せに引っ張っている。


 その光景だけでも悍ましいと思ってしまう。私はもう見慣れてしまったから悍ましいという感情は薄れてしまっているけど、それでも言葉を失ってしまった。


 私達が見てきた『感染』者と、今歩いている『感染』者は、()()()()()()()()()()()()()()()


 それは口。


 口が何だか………、犬みたいに鋭く、そして噛みやすいような形になっている。


 人とは思えない………、ううん。『感染』者はもう人じゃないからその言葉は違うんだけど、原形が人だから、今歩いている『感染』者を見て、私は思った。


 この『感染』者は、何かが違うって………。

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