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HOPE HUMAN【崩壊世界の希望達】  作者: ヨシオカ フヨウ
拠点:九十九中学校
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三十三話 ともちゃん

 佐伯(サエキ)友香(トモカ)ちゃん。


 私は彼女のことを『ともちゃん』と呼んでいる。


 彼女と私は幼馴染で、今までずっと私のことを気にかけてきた優しい女の子だ。


 出会い………と言っても、そんな大袈裟なものじゃない。ただ単に、家が近かっただけ。一軒またいだら知ちゃんの家だった。それだけ。


 一軒隣の家も幼馴染の家で、私とその子、そしてともちゃんは――幼稚園児からずっと一緒だった。


 幼稚園児の時は『ももぐみ』の仲間で、私は昔から引っ込み思案で暗い性格をしていたこともあって、幼稚園児からいじめられていた。


 いじめ………と言うよりもちょっかい? 的な感じの奴なんだけど、そんなことを許せないともちゃんは私にちょっかいをかけていたいじめっこ達をグーで反撃していた。


 やってはいけないことだけど、ともちゃんはそれをやってしまったことが思い出深い。


 もう一人の幼馴染はともちゃんの行動に対して止めていたりしていたけど、逆に止められずに巻き込まれたりして泣いていたなー………。


 私はその子のことを慰めたりして、ともちゃんはともちゃんで一生いじめられなくしてやる的な行動をしていたりして、一体どっちがいじめっ子なんだという事件が起きていたりしたっけ………。


 同じ『ももぐみ』の子も、ともちゃんには手を出さなかったし、私をいじめていた子もちょっかいをかけることは無くなった。


 小学校に上がってからも同じクラスで、ともちゃんと私、そしてもう一人の幼馴染は変わらない関係 (?)を築き上げてきた。


 幼稚園と同じで、ちょっかい掛けられた私を助けるともちゃんと、そんなともちゃんのストッパーをしようとする幼馴染が巻き添えになって、結局先生に叱られて。


 きっとあの時が、私にとって楽しい時間だったんだろうな………。


 そう、()()()()()()()()()――



 〓  〓  〓



「希無事だったんだねぇ! よかったよぉっ!」

「とも、ともちゃんも無事で、何よりだよ……。あとくるしぃ」


 ともちゃんと再会のハグをしている私。けど実際はそこまで感動的ではないかもしれない。というか、ともちゃんの力が、強すぎ………っ。


 なんだか締め付けられるような、蛇に巻き付かれたら、こんな感じなのかな………? って思ってしまうほど、ともちゃんの抱き着きは強かった………。


 うっ………。締め付けが………。


 そのくらい私と再会したことがうれしかったのかもしれないけど、こっちはともちゃんと比べたら全然筋肉なんてない。どころかそれを包み込む贅肉もない………。結局ともちゃんの感激の流されるままになってしまう。


 これで死ぬかもしれない。そう思った時………。


「えっと、佐伯さん? とりあえず今は妹を離してほしいんだけど、妹、希死にそうだから」

「え? あ! ごめんごめんっ! 希ダイジョーブっ!?」


 お兄ちゃんの助け舟のお陰で、なんとか呼吸確保することができた私


 巻き付きから解放されて、新鮮………じゃないけど、空気を確保することができた私はゆっくり深呼吸した後――私はともちゃんのことを見て再度言った。


「ともちゃん………無事でよかった」

「うん………! 希も無事で本当によかったよぉ………! 望さんもお久し振りですぅ~!」

「久しぶりだね。本当に」


 再度再会の言葉を交わした後、ともちゃんはお兄ちゃんに向けて泣きながら挨拶をする。お兄ちゃんは大学で忙しかったから仕方がないかもしれないけど、それでもともちゃんとは面識があったから、ともちゃんはお兄ちゃんにも泣きながら挨拶をする。


 お互いがあいさつを済ませた後、金剛寺さんが理科室に入って来て――


「知り合いか?」


 と聞いて来た。


 金剛寺さんの存在に気付いたともちゃんは驚きながら「うぉ! マッチョ!」と見たまんまの感想を言ってしまう。


 すぐに失礼かもしれないと気付いて謝罪の言葉を掛けようとしたけど、金剛寺さんはそんなに怒っているわけでもなく、どころか嬉しそうに笑いながら「いいさ。俺にとってそれは大層な褒め言葉だ」と言って腕を曲げて筋肉を見せる金剛寺さん。


 まさにマッチョポーズ。


 それを見てともちゃんは目を輝かせながら「すげーっ!」と興奮した声で鼻息を荒くして。


「ともちゃん。この人は金剛寺さん。私達、この人と一緒に行動しているんだ」

「そうなの? 三人で行動とか………、マジもののサバイバルしていますって感じがする」

「していますって感じじゃなくて、そこそこ斃しているんだよ。こっちは」


 私が簡潔に金剛寺さんの説明をすると、ともちゃんは『はえー』と言いながら私達のことを見て言う。そんなともちゃんの発言にお兄ちゃんが訂正するように言うと、お兄ちゃんはともちゃんのことを呼んで聞いて来た。


 勿論――聞くことは、学校のこと。


「そう言えば佐伯さん。どうしてここにいるの? あの時テレビで『避難警報』出たのに………」

「あ、実は――テレビとか、スマホのネットニュースを見るどころの話しじゃなかったんです。てか『警報』が出ていたことも、そのあと何日かした後で、()()()()()()()()()()()()()()()

「見る暇がない? 何故だ?」


 お兄ちゃんの言葉に、ともちゃんはなぜか口ごもってしまう。


 見る暇がなかった。


 そこは分かる。私は何日も寝ていたから知らなかったけど、それでもともちゃんが言っていることがいまいちピンとこなかったのも事実で、実際、見る暇はあると思うのに、ともちゃんは見れなかったって断言した。


 ともちゃんは嘘をつくことができない。


 嘘をつくのが下手過ぎるから、この状況で嘘をつくなんてありえない。


 誰かに言えって言われたりしても絶対に曲げないともちゃんだ。


 こんな時、私達に向けてそんな嘘はありえない。


 そう思っていると、金剛寺さんの言葉を聞いて、ともちゃんは重い口を開けるように、そっと唇を動かして、私達に告げた。




「だって………、学校にゾンビがいて、あっという間に感染が拡大して、パニックになっていたから」

 



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