三十話 到着
あれから私達三人は、次の目的地でもある私が通っていた………、あ、違う? 通っている………だと変だから、一時は通っていた九十九中学校に向かうことにした。
電気やネットがまだ生きていた時、金剛寺さんとお兄ちゃんが見つけてくれたSNSの書き込みを見つけて、私達はその書き込みに藁にも縋る思いで向かうことになった。
図書館拠点の感染爆発からすぐに廃ビルに入って少しの間休息を取った私達。
すぐに支度した後、曖昧だけど私の案内、そして金剛寺さんが探して見つけた地図を頼りに九十九中学校に向かって足を進めた。
道中『感染』者に遭遇して戦ったけど、幸いみんな傷一つなく進めている。
歩いてのそれだったから、三日もかかってしまったのは言うまでもない。
その間にネット回線もダメになってしまったらしく、スマホはただの『音を鳴らす囮機械』と化して、無線しか使えない状況になっていた。
その無線も電波なのか、妨害電波の所為なのか。全然通じないけど………。
図書館にいた時はインフラがギリギリながら整っていたけど、もうそれも無くなってしまった。
水も何もかもが止まってしまい、人なんて絶対に住めない環境になっていくのを歩きながらでも感じる。
水も貴重になるから飲める水は重りにならない程度に確保、食料も缶詰を確保する。
まるで探索ゲームをしているかのような緊張感。
でもこれはゲームじゃない。
現実。
現実だから、確保も周囲への警戒も怠ってはいけない。
一挙一動が、怖かったことしか覚えてない。
この三日間は大変だった。
生きることで精いっぱいだった。
『感染』者相手に戦ったり、大群の『感染』者から避けるために遠回りしたりと、いろいろと時間をかけてしまうことをしたから………、そうそう簡単に着くことはできなかった。
生きるためには仕方がない事かもしれないし、何よりこれからは慎重にならないといけない。
一瞬の油断で死んでしまう。
そんな世界だから。
中学校に近付くにつれて、いくさんが言っていた『変異感染』者もちらほら出てきた気がする。
廃ビルから出て、あの後すぐに私達は金剛寺さんに『変異感染』者のことについて話した結果、金剛寺さんは『変異感染』者の接触はなるべく避けることを決めて、その接触を避けながら私達は歩き続けた。
できる限り避けつつ、目的の場所でもある中学校に向かって。
#救助 #生きています #SOS
○○県▽▽市 九十九中学校在学 生存者15名
誰か助けてください。
あの呟きが、まだ変わっていないことを願って………。
廃ビルから出て三日後。
時間なんてわからない。でも、私達は着くことができた。
私が通っていた中学校――九十九中学校に。
〓 〓 〓
「えっと、ここです………」
私は校門前に書かれている学校名を見てもう一度学校を見る。
ちゃんと『私立九十九中学校』と書かれているから、ここが私が通っていた中学校で間違いない。
間違い………ないんだけど。
「希が困惑する理由は分かる」
「俺も困惑している。あの図書館がまだよかった。そう思ってしまうほど」
ここは危かったんだな。
お兄ちゃんと金剛寺さんの言葉を聞いて、私は通っていた学校の変わり果てた姿を目に焼き付ける。
風が私達の服や髪の毛を揺らし、辺りに落ちていた枯れ葉を運んでしまう。
もう、あの時見ていた木々も何本か枯れてしまい、目の前に広がる学校は、記憶の中の学校とは全然違う光景だった。
九十九中学校は四階建てで屋上がある学校。全体的に白い学校だったんだけど、その白さも黒くなっていたり、真っ赤なそれが付着していたりして、一言で言うと世紀末を思わせる様な光景。
壁には赤いそれで書いたのか、『助けて』や『SOS』、『生存者あり』と言う文字がいくつも書かれている。
窓は三階と四階がほどんどわれていないけど、一階と二階はほどんど罅割れの状態。
正面玄関に至っては壊れてしまっている。『感染』者が入らないように大きな板が置かれている。玄関から入るのは無理だ。
「中学校にも『感染』者が………」
変わり果ててしまった学校を見て、私はショックの言葉を零してしまう。
そんな私を見てお兄ちゃんは私の肩に手を置きながら――
「どこも同じだ。こんな状況になったんだ」
仕方がない事だよ。
そうお兄ちゃんは言い、その言葉を聞いた私はお兄ちゃんのことを見上げ、そのあと俯いて頷く。
そうだよね………、どこもかしこも『感染』者まみれになったんだから、仕方がないのかもしれない。
でも、変わり果ててしまった中学校を見るのは、流石に堪えるな………。
あんなことがあった場所だけど、それでも――
「おい二人共。あれ」
そう考えていると、金剛寺さんが私達に声をかけて来て、金剛寺さんの声を聞いて指さした方向を目で追うと――私達は気付いてしまった。
私から見て一階右側の窓。その一つが割れていて、その奥には――三体の『感染』者。
しかもその『感染』者たちはとある教室のドアを叩きながら叫んでいる。
「え? まさか………!」
「あの窓、最近割られたみたいだ」
「もしかすると、あそこに………」
私とお兄ちゃん、そして金剛寺さんが言う。
そう。『感染』者が叩いているその先――教室にいるんだ。
生存者が――




