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 篤志と一緒に歩んでいってくれって大沢が言ったんだよ。章吾は言う。晩飯に手もつけず。今日は章吾いわくハンバーグだ。いつも通り、それはお揃いの皿の上に乗っている。


 本当だ。約束しろって言った。篤志と同じ道を歩いていくことを約束してくれって。ぼそぼそと章吾は言う。その目は真っ赤に充血している。


 約束か。絡み合った小指の体温を、あの笑みを思い出す。消えることのない、麦の匂い。


 父は大沢を責め立てた。もはや弾劾だった。一人の有能な人材を潰したと言って、大沢を退任、退職に追いやった。しかしそれで僕のイップスが治ることはなかった。


 忘れることのない、麦の匂い。それはもはや実体がない。ここにあるものは近所の者達の生活音に、窓から入り込む乾いた風、そして近くで野球少年達がキャッチボールをしているのであろう、小気味よいグラブの音である。


 な、明日、キャッチボールやろう。

 章吾が言った。




                  完




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