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試合

 それから何事もなく時間は経ち、日曜日になった。


 その間涼風さんは以前みたいに学校で俺と積極的にコンタクトをとることはせず、軽い業務連絡程度に収めてくれていた。


 自分から言い始めたことなのにあの日以降積極的に話しかけてくれない涼風さんを見ると心のどこかで寂しさを感じるのをなんとか自覚しないようにしていた。


 練習試合はちょうど10:00からで時間通りにいけば11:30頃には終わるそうだ。


 俺の家は学校から近いところにあるため、だいたい家から学校まで20分ほどで到着する。遥紀は約束通り9:30頃に俺の家に到着し、合流した俺たちは高校へと向かった。


「司ってバスケ興味あったっけ?」

「数分で飽きるくらいの興味かな」

「そうだよな。この前見たときもすぐ飽きてそうだったしな」

「それは遥紀もだろ」

「バレたか。でもそんな司がバスケを見に行くなんて、誘ったやつは相当な人なんだな」

「まあな」


 俺がその人物をしゃべる気がないことを遥紀は察したのかこれ以上その人物について触れてくることはなかった。


 学校に着いた俺たちは体育館を覗くと想像以上に人が多く集まっているのが窺えた。


 正直、体育館に他に観客がゼロだったら俺たちだけの観客は目立ちすぎるため、帰ろうとも思っていた。そこは流石涼風さんパワー、ざっと20人ほどはいる。まだ試合が始まっていないことから観客はまだまだ増えるだろう。これなら俺達が目立つことはない。


 2階に上がり、安心して観客席の真ん中くらいの位置に座る。少しすると、試合が始まる雰囲気が流れ、選手たちがコートに入り、ポジションにつく。


 涼風さんはポジションにつくと、辺りを見回し俺を見つけると静かにウインクをしてきた。


「今こっち向いてやらなかったか?」

「俺に向けてやったんだ」


 俺の周りにいた男子たちがどよめきだす。


 本当に心臓に悪いことをしてくれた。


 心臓に悪いとは周りにバレるということと、ウインクに俺の心拍数が上昇することの2つの意味があったが、俺は後者の方は認識したくなかった。


「急にざわつきだしたけどなんかあったのか?」


 遥紀は涼風さんの方を見てなかったらしく、このどよめきについて分かっていないようだった。

 本当に危なかった。遥紀がこれを見ていたら、鋭い遥紀はきっと今日俺が誰に誘われたのか、見当をつけていたことだろう。


「なんだろうな。俺にもよく分からないわ」


 俺は誤魔化すのにやっとだった。


 数分すると、試合が始まり体育館は歓声に溢れた。最終的には40人ほどの人数が観客として訪れた。男子6女子4といった比率だろうか。日曜日の学校のない日にわざわざこれだけの人数が集まるのだから、涼風さんの人気の高さを今一度確認した。(もちろん涼風さん以外が目当ての人もいるだろうが)


 今回の対戦相手は前回ちらっと見た学校よりも相当強いらしく、前回よりも1人1人の気迫が違って見えた。


 その中でも、うちのチームで1番輝いて見えるのはやはり涼風さんだった。PGというポジションもあるだろうが、ボールを全体に回し、チャンスだと思った場面では、自分でドリブルして決めに行ったり、3Pをしっかりと決めていた涼風さんは間違いなく試合の中で流れを作っていた。


 それでもバスケに興味のない俺は、第2クオーターが始まった頃にはバスケの試合よりも遥紀と話すことに集中してしまっていた。


 遥紀と話すことに夢中になっていると第2クオーターが終わるブザーが鳴った。


これから10分間の休憩に入る。点数を見てみると資生高校が23点、相手の高校が34点で11点負けていた。第1クオーター終了時には2点差くらいだったはずだが、第2クオーターではっきりと点差がでてきてしまった。11点差など未経験者からするとすぐ取り返せそうな気がしたが、そう簡単にはいかないのだろう。


「司、トイレ行こうぜ」

「いいよ」


 俺は行くつもりはなかったのだが、1人でいても周りはあまり知らない人ばかりだったので、一緒に行くことにした。


 体育館から近いトイレは同じ考えのやつが多く、混んでいる様子だったので、俺たちは校舎にあるトイレに向かった。


「じゃあ俺は外で待ってるから」

「ちゃっちゃと済ましてくるわ」


 そうしてトイレの外で待っていると、となりの女子トイレから涼風さんが出てきた。大方、俺たちと同じ理由でこっちのトイレを使いに来たんだろう。


「え!早乙女君どうしてこんなところにいるの?」

「びっくりした。黒瀬がトイレに行ってるから待ってるんだよ」


 話し声が聞こえないようにトイレから少し離れたところまで行ってから話した。


「それはそうと早乙女君、途中から試合あんまり見てないでしょ」

「うっ よく見てるな。こっちばっか見てないで試合に集中しろ」

「論点をずらさない。でも、休憩時間もそんなにないからもう行かなくちゃ、今度はしっかり見ててね」


 そう言って小走りで体育館に向かう彼女にエールを送った。


「次はしっかり見てるからな。絶対逆転しろよ」


 特に返事はなく代わりに少し足が速くなった彼女を見送った。

9話目も読んでいただきありがとうございます。

ブックマークしてくれた方、そして初めて評価して頂き、日間現実世界恋愛ランキングで53位を記録することができました。(6/11 18:45現在)

本当にありがとうございます。

感謝の意を表して連日投稿をさせていただきました。

これからも皆様からの応援に全力で応えていきますのでもしよろしけば評価、ブックマーク、いいねのほどお願い致します。

これからもよろしくお願いします。

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