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【祝!100万PV突破】マッサージ店でアルバイトを始めたらクラスの美女が常連になりました。  作者: 新興


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すり合わせ

 階段を駆け上がる音から誰かは分からないはずなのに、俺はとても嫌な予感がした。


 そして出入口に目を向けていると案の定俺の予感していた人物が現れた。


 ここは屋上であり、ここから移動するにはあの出入口を通るしかない。つまり、今この状況は彼女から逃げられないことを意味する。


 昼休みになると屋上は人気スポットになるため周りにも多くの人がいる。こんなところで話しかけられると目立ちすぎる。


 そんなことを考えていると、流石にまずいと感じたのか彼女はこちらに来ることはなく、代わりに手で指さしながらこちらに来いと指示してくる。無視をするとこちらに来かねないので、俺に選択肢はなくそちらに向かう。


「ちょっとトイレ行ってくるわ」

「おう。もうすぐ食べ終わるから早めに帰って来いよ」


 それを決めるのは俺じゃない。俺だってできることなら行きたくないよ。と心の中で遥紀に語りかけながら出入口に向かう。


 俺がマッサージ店で働いていることがばれた屋上への踊り場でまた彼女と再会する。


 周りには気遣っているのか小さい声で、それでいて怒りと威圧感が混ざった声で俺を問い詰めてくる。


「なんで今日ずっと私のこと避けるのかな?」

「いやいや、サケテナイヨ」

「嘘。いつも教室でお昼食べているのになんで今日に限って屋上で食べてるの?探すのめっちゃ大変だったんだからね」


 意外と俺のこと見ているんだなと嬉しくなりながらも誤魔化すことはできないと悟り、打ち明けることにした。


「だって、この前も言ったろ。学校では()()()()にって。それなのにめちゃくちゃ来ようとするから」

()()()()にしているじゃん。今だって人目につかないようにここで小声で話しているじゃない」


 ほどほどについて俺と涼風さんでは理解に違いがありすぎる。


「いい、涼風さん。あなたは自分が思っているよりこの学校で影響力が強い。それを自覚してほしい」


 それを聞くと、不満げな涼風さんは少し考えたあと、


「分かった。じゃあ今日はこれだけ言わせてほしい。今週の日曜日の午前は暇?」

「暇だね」


 午後はリラほっとのバイトが入っているが、彼女も予約しているのでそれは知っているだろう。


「日曜日にこの学校で練習試合があるから見に来てね」

「えーどうしようか。バスケ自体にはそこまで興味ないから」

「なんだか急に大声で喋りたくなってきた。早乙女君が了承してくれないと大声で喋っちゃうかも」

「卑怯だぞ。分かった、行くからそれだけはやめてくれ」


 このままだとこの脅しで俺は一生彼女の言いなりになってしまう。何とか打開策を早めに見つけておかないと。


 そう思っていると屋上での用を済ましたらしい数人の女子生徒がこちらに向かってこようとしている様子が見えた。涼風さんも視線をそちらに向けていたため、気づいただろう。


「それじゃ、私はもう戻るね。トイレって言ってだいぶ戻ってないから」


 俺と一緒かよと心の中でつぶやき、返事をしようとしたところで、

「やっぱり早乙女君と話すのは楽しい。またね」


 俺はその言葉に思考が止まり、返事が出来ずに彼女は去ってしまった。それから棒立ちしていると先ほどの女子生徒が話し声とともに俺の横を通っていった。俺はそれで我に返り、自分もまた遥紀のところに歩みを進めた。


 さっきのあの言葉は俺と話すのが楽しいのではなくて、正確に言えば素で話せることが楽しいということなんだろう。つまり素で話すことができるならば相手は俺ではなくても良いのだ。勘違いしてはいけない。自分で自分にそう言い聞かせながら、遥紀のところに向かった。


「おかえり司。お前また今朝と同じで顔赤いぞ。体調悪いのか?」

「大丈夫。全然元気だから」


 マジで遥紀にはバレる未来しか見えない。


 遥紀はテニス部に所属しており、うちの高校のテニス部はそこまで頻繁に部活はない。週3回しかなくそれ以外の曜日は大概俺と一緒に帰っている。


 今日の放課後も遥紀と一緒に帰っていた。


「ねえ司、今週の日曜空いてる?お前の家行っていい?」


 遥紀は俺の家に度々来ることがある。何をするわけでもないが大抵はだらだらして過ごしたりゲームをするだけなのだが。


「すまん。午前は用事あって、午後はバイトある」

「用事って?」


 用事に何かがあると気付いた遥紀は詳しく聞いてくる。俺も誤魔化せる気がしなくて、話しても流石に俺たちの関係までは気づかれないだろうと踏んで正直に話す。


「誘われたから女バスの練習試合見に行くんだよ」


 少し恥ずかしげに言った。


「へーあの司が女バスね。誰に誘われた?」

「それはノーコメント。時期が来たら言うから」


 その前にバレそうではあるが、とりあえず今のところ打ち明けるつもりはないため、そう言って逃げた。


「じゃあ俺も暇だし一緒に行くわ」

「了解」


 断る理由もなかったし、1人で行くのも少し行きにくかったので俺は快諾した。


 だが、了承した後に気づいたが、一緒に行くことになってなんだか本当にバレそうな気がして少しだけ行くのが憂鬱になった。

8話目も読んでいただきありがとうございます。

話が面白い、続きが読みたいと思ってくださった方、もしよろしければブックマーク、コメント、星をぽちっと押していただけると本当にモチベーションが上がり、更新速度が速くなると思います。

見ていただけるだけでも本当にうれしい限りでございます。

これからもよろしくお願いします。

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