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友達

「涼風様、指名ありがとうございます。本日はどの部分をマッサージいたしましょうか?」

「涼風さんでいいよ。あと言葉遣いもいつも通りにしてほしいな」

「ですが・・・分かった。涼風さん」

「うん。それで」


 俺としてはあくまでスタッフとお客さんの線引きとして敬語で行きたい気持ちはあったが、できるだけ要望は叶えないといけない。まあこれくらいは許容範囲だ。


「最近バスケの練習もハードになってるから足と手のあたりをやってほしいかな」

「分かった。じゃあうつ伏せでお願い」


 色々聞きたいことはあるが、とりあえずマッサージを始める。


「なんでうちに来たの?マッサージを受けたいだけならここじゃなくてもあるよね」

「うーん、早乙女君と話したかったから」


 予想外の回答に俺の心は動揺し始めた。


「どういうことかな?」

「今の私って学校の時と少し違う?」


 実は、今まで俺は彼女と接するとき、違和感を抱いていた。学校で見る彼女は上品で清楚で性格もよく同性・異性関係なくみんなから愛されているような人だった。それが世森先輩と楽しそうに話している姿やマッサージしたことをばらすとか小悪魔的な性格が出ていた。


それは単に俺が涼風さんを知らないだけかとその部分はスルーしていた。


「学校で見かけるいつもの涼風さんよりなんだか雰囲気が違うというかラフな印象だね」

「そうなんだよね。学校の私も無理をしているわけじゃないんだけど、猫をかぶっている感じ。素の私はこっちの方。早乙女君には1回目のマッサージの時に素を見せちゃったし、周りに話すような人でもなかったから、素の私で話せる初めての人で仲良くなりたくて」


 わざわざ人目につきにくい屋上前の踊り場で話したこともあんなにマッサージをした人が気になっていたのもそれを聞いて納得がいった。そんな事情とも知らずに俺に好意があるのではないかと動揺した俺が恥ずかしくなった。


「友達になるのはこちらからお願いしたいくらいなんだけど、学校ではほどほどにしてほしい。人目があると素を出せないだろうし、涼風さんは人気者で、男子とはあまり話さないタイプだからいきなり俺と話すようになったら誤解されるかもしれないから」

「うーん、わかった。()()()()にするね」


 ほどほどになんだか含みがあって嫌な予感がしたが、追及しても意思は変わらなそうなので特に追及することはなかった。


「んっ・・」


 マッサージをしていると時々甘い声が聞こえてくる。この声が聞こえてくるたび俺の心臓の拍がどんどん早くなる。無心になろうにも前回とは違い、今回は1人でマッサージしている。どうにも頭にそのことがよぎってしまう。


「前回も思ったけどマッサージうまいね。補助しかやったことないって言ってたけど、もう長いの?」

「そんなことないよ。まだ働き始めて1カ月も経ってないくらい。家でたまにやってたことと、そういう関係の本を読んだことが出てるかも」

「なるほどね。そういうことだったか」


 話していくうちに時間が過ぎ、終了の時間が来た。最後に店長にチェックをしてもらい、何事もなく施術は終了した。


「お疲れ様、涼風さん。冷たいお茶とあったかいお茶どっちがいい?」

「冷たい方で」

「じゃあ、準備が出来たら部屋を出てすぐのテーブルにお茶を出しとくから」

「分かった。ありがとう」


 それからお茶を出し会計も済ましたところで次回の来店について聞いた。


「次回の予定とか決まってる?今決めなくてもいいんだけど」

「来週の今日。早乙女君は来てる?」

「うん。時間帯にもよるけどいると思うよ」

「じゃあ、来週の今日。時間は18時で大丈夫?」


 今日は日曜日のため、学校はない。そのため15時ほどにきた。来週は18時ということは何か用事があるんだろうか。気にはなったがプライベートなことなので聞くことはしなかった。


「じゃあ、その時間で待ってる」


 本当のことを言えば涼風さんの相手は気が休まらないからなるべく避けたかったのだが、業務上断ることもできなかった。


 マッサージが終わると、今日のことを店長に詳しく説明した。


「来週も指名もらったの!すごいじゃん。これからはメインで任せることも増やすと思うから頑張って」

「顔見知りなだけですよ。まだまだ勉強することはたくさんあるので頑張ります」


 こうして波乱の初めての1人でのマッサージが幕を閉じた。


***


 翌日、クラスの扉を開くと彼女と目が合った。今回は恥ずかしい気持ちはあったが、顔を背けることはしなかった。目を合わせたのは数瞬でお互い普段の方向へと視線を移す。


 席に着くと前に座っている親友から顔を覗くように見られ、

「なんかあった?顔赤くない?」


「気のせいだよ」


 顔に出ていたらしい。遥紀は鋭いので引き締めていかないとすぐにバレてしまう。


 それからいくつかの休み時間を過ごし、昼休みを迎えた。今までで涼風さんと会話は一度もしていない。


 正確に言えば、接触してくる素振りはあった。むしろ毎回の休み時間中に俺と遥紀が話していると、機会を伺うようにこっちをちらちら見ていた。そのため俺は何とか話しかけられないように逃げるのを繰り返していた。昨日言ったほどほどを守る気がないようだった。


「今日の司変だぞ。休み時間中なんだかずっとそわそわしてるし、急にどっか行ったりするし、なんかあるのか?」

「いいや、気のせいだよ」


 それだけで誤魔化せていないようで遥紀は疑いの目を向けてくるが、俺は顔をそっぽ向け話さない態度をとった。


「今日は屋上で食べようぜ」

「いいけど、いつも教室なのになんで今日だけ?やっぱりなんかあるな」

「それについてはノーコメントで」


 涼風さんはいつもお昼を友達と教室で食べている。同じ空間で食べていたら、機会を見て絶対に話しかけてきそうな雰囲気があった。


 ほとぼりが冷めるまで涼風さんには悪いが距離をとらせてもらう。時間が経てば、そういった行動もとらなくなるだろう。


 俺と遥紀がお昼を食べ始め、それが食べ終わりに差し掛かろうとしたころ、階段を勢いよく駆け上がる音が聞こえた。

7話目も読んでいただきありがとうございました。

不慣れな部分も多く、物語の書き方が話ごとに違っている場合があります。

読みにくい等のご意見がある場合にはお気軽に申し付けください。

これからもよろしくお願いします。

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