化かし合い
「ちなみにどんないたずらをするつもりだったんですか?」
「してもいいの?」
「・・・それはダメです」
「じゃあ、教えられないな」
「えー」
「もう時間だよ。早く仕事するよ」
「・・・はい」
いたずらしてもいいって言えばよかったかなぁー、でも、されたらされたで俺の心が持つか分からないしなぁー
あぁーもう。
本当にこの人は俺の思考をぐちゃぐちゃにするのが上手いな。
***
「ただいま」
「・・・」
瑞希のおかえりの声が帰ってこないことで、今日瑞希がバイトだとメッセージが来ていたことを思い出す。
夕食の調理を終えたころにちょうど良く瑞希が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。今日バイトだったっけ?」
「いや、ほんとは違ったんだけど、急遽病気でこれなくなった人が出ちゃって、それの代理」
「なるほど。晩飯今出来たところだから、風呂さっさと入って来い」
「今晩ご飯出来たところならせっかくだし、ご飯食べてから風呂入ろうかな。今日、お昼少なくてお腹すいてるんだよね」
「了解」
そうして、俺たちは一緒になって、晩ご飯を食べた。
「そうだ、司。お風呂入り終わったらこれ見ようよ」
そう言って、瑞希が取り出したのはホラー映画だった。
「いいけど、瑞希ホラーとか大丈夫なのか?」
「そんなの大丈夫に決まってるじゃん。こんなのただの映像だよ。それとも司怖いの?」
瑞希は得意げに言い返してくる。
「怖くないならいいけどな」
瑞希の得意げな顔からは嘘をついているようには見えなかった。
「「ごちそうさまでした」」
「どうする、瑞希先風呂入るか?」
映画を見る時間も考慮したら、早く行動しなければいけない。
「私は少しごろーってするから、先入ってきていいよ」
「分かった」
瑞希は少しうきうきしながら俺に言う。
そこで俺はなんだか、既視感があることに気づいた。
いつも瑞希が風呂は先に入るのに今日は俺が先に入る。以前にもこんな日があったな。
思い出した。
確か2週間くらい前に、風呂から出てきたときにトリックオアトリートとかハロウィンでも何でもない日に言われて内心驚かされた時だな。
その時、俺の反応が薄くて、本番はもっと盛大にやって驚かせるとか言ってたな。こいつニヤニヤして、また俺が風呂から出るときに驚かすつもりだな。
その時、俺はあることをひらめいた。この調子に乗っている瑞希に一発食らわす方法を。
俺は、浴室に入る前に鞄の中から1つの袋を取り出してから浴室に入った。
***
俺が風呂から出て、洗面所で着替えようとすると、俺の出てきた音を聞きつけたらしい瑞希からガサゴソと準備をしている音が聞こえてきた。
瑞希のやつ絶対に俺を驚かそうとしてるな。
こうなったら俺も黙ってやられるわけにはいかない。
俺は入る前に持ってきた袋から衣装を取り出す。
遥紀に無理やり持たされた、ガチな方のハロウィン衣装を着た。
「人生、何があるか分からないな」
こんな衣装を使う時が来るとは。
血のりはお風呂に入ったばっかで使いたくはなかったが、パッケージ見ると、落としやすいと書いてあったので、渋々手と顔に少しつけた。
覚悟を決めて、洗面所の扉を開けると、リビングに電気がついていなかった。
俺がどうしたもんかと困惑していると、いきなり、スマホのライトを顔に照らした瑞希が出てきた。
「トリックオアトリート!お菓子・・・きゃぁぁぁぁああああああ!」
最初は俺を脅かそうとして、途中まで言ったのはいいものの俺の顔を見て、逆に驚いた瑞希は尻餅をついて驚いた。
俺はあまりの驚いた様子にこっちまで驚いて、慌てて落ち着かせる。
「おい、俺だから、ちょっと静かに。近所迷惑」
「え?司?」
「この家には俺しかいないだろ」
「だってぇ、そんな恰好してるからおばけかと思った」
瑞希は目をうるうるしながら俺に言ってくる。
「それは瑞希が驚かそうとしてくるからだろ。俺だって黙ってやられるわけにはいかない」
「司のバカー!」
盛大に怒られてしまった。流石に血のりまで使うのはやりすぎだったか?
「そんなこと言ってないで、さっさと立ってお風呂入って来い」
「・・・足に力が入らない」
「え、」
あれだけで力でないほど驚いたって言うのか。ホラー映画余裕とか言ってたやつが?
「司おんぶしてソファまで連れてって」
「・・・分かったよ」
こうなってしまった原因は俺にもあったので、拒否もできず俺は瑞希をおんぶして、ソファまで連れて行った。
背中に柔らかい感触があったのは触れないでおこう。
「ほら、ここで少しゆっくりしてから風呂入れ。」
「私は当分動けそうにないし、ホラー映画見よ」
「は!?何言ってんだよ。怖くて腰が抜けたのに今からホラー映画見るのか?」
瑞希の信じられない発言に俺は自分の耳を疑った。
「あれは、びっくりしただけだもん。怖かったわけじゃない。ホラー映画なんて、たかが映画だし大丈夫」
あまりにホラー映画を舐めている瑞希を見ていると、1つ疑問が浮かんだ。
「・・・ちなみにホラー映画とか見たことは?」
「ないよ?」
余裕ぶっていたのはこういうことだったのか。瑞希は本気でホラー映画は余裕だと思っているから、ホラー映画に対する動揺が顔に出ていなかったのか。
こういうやつは1回痛い目をいた方がいい。
「俺は知らないからな」
「やったー」
俺の塗った血のりは、乾いたら簡単にペりっとはがせると書いてあったので、乾くまでの暇つぶしとして、映画を見ることにした。
ホラー映画を見始めて、数十分・・・
隣を見ると、瑞希は案の定ビビりまくっていた。体を丸くして耳まで塞いじゃって完全にビビり散らかしていた。
「おい、瑞希」
「!」
俺の声にすらビビりまくってるじゃねえか。
「怖いならやめてもいいんじゃないか?」
「・・・怖くないから!」
いやいや、その体勢で誰が信じるんだよ。
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