開店
「司、文化祭一緒に回ろ!」
文化祭前日、リビングでつくろいでいると、いきなり瑞希から文化祭のお誘いを受けた。
「いや、ダメだろ。クラスであんまり話さない俺たちが急に文化祭一緒に回るとか超絶目立つ。それ抜きにしても、今まで築いてきたイメージ台無しだぞ」
「じゃあ、司は私と一緒に回りたくないってこと?」
「・・・いや、そういうわけじゃないけど・・・」
本音を言えば回りたいが、流石にこれはわがままでやっていいレベルじゃない。
「まぁ一緒に回れないことは分かってたけどね」
「じゃあ、なんで言ったんだよ」
「願望くらいは言いたくなるものじゃん。司ったら分かってないなー」
そういうものなのか。じゃあ、俺と回らないとなると誰と回るんだ?
「そうなると、瑞希は誰と文化祭回るんだ?まさか1人でか?」
「そんなわけないじゃん。司と違って、クラスに友達はいっぱいいるんだよ?」
要求が通らなくて、友達マウントしてきやがった。
「うっせえ、猫被ってるモードの友達だろ」
「別に猫被ってても楽しくはあるもん」
「もう決まってるのか?」
「いや、決まってないよ。別にこれと言って一緒に回りたい人もいないし、フルーツ飴のシフトが終わったら、一緒に回る人がいなさそうな人を誘おうかなーって」
「事前に誘われてないのか?」
瑞希くらい美人で人気ある生徒なら絶対に事前に誘いを受けているはずだろう。
「もちろん、いくつも貰ってるよ。でも、申し訳ないけどみんな断ったかな」
「なんで?」
「司を誘う前だったから」
「は?」
瑞希も俺を誘っても好き嫌い以前に断られるのは分かっていただろう。なんで、そんな嘘を?
「嘘つくな。断られるのは分かってたって言ってたじゃねえか」
「そうなんだけど、もし万が一いいよって言われた時のために断ったんだよ。クラスメイトの誘いよりその僅かな可能性の方が大事だから」
「・・・」
照れくさくなって黙ってしまった。
「・・・それに、当日回る人がいなさそうな人を誘えば、その子からは涼風さん神!ってなるし、周りの子からもあの子と一緒に回るなんて涼風さん優しい!ってなるでしょ」
「絶対そっちのほうが目当てだろ」
「あれ、ばれちった?」
至る所で好感度を上げようとするその心意気は認めるが、俺を巻き込むんじゃない。俺のときめいた心を返せ。
「司は誰と回るの?」
「まぁ順当にいけば遥紀だな」
「まあそうだよね、司は黒瀬君しか友達いないもんね」
「おい、いじんな」
遥紀以外にも友達いっぱいいるもん。誰とかは言わないけど。
***
「よし、最終準備はじめるぞー」
文化祭は2日間あり、初日は10時から文化祭が始まり、次の日は9時から始まる。
初日は9時から10時までの時間は最終準備として当てられている。
この時間でうちのクラスは当日売り出すフルーツ飴を作り出す。
飴を冷やすのに冷蔵庫に入れて、だいたい30分ほどかかるため、売り出す飴は事前に作っておく必要がある。
文化祭は初日が15時まで、2日目が16時に終了する。
シフトは3つに分かれていて、
1日目が10:00~11:30、11:30~13:00、13:00~15:00
2日目が9:00~12:00、12:00~14:00、14:00~16:00
俺と遥紀と瑞希は初日は10時から、2日目は俺と遥紀が9時から、瑞希は12時からのシフトになっている。
「うぉー、やっぱまじで可愛いな涼風さん」
クラスメイトの声が聞こえ、振り返ってみると、着替えを終わらせた瑞希が衣装姿でそこにいた。
やっぱり何度見ても絵になっている。思わず声が出てしまうのも納得だ。
俺がフルーツ飴を食べるテーブルにクロスを引いていると、瑞希がテーブルの中心に置く造花を持ちながら、自然な感じで近づいてくる。
「司、その衣装似合ってるじゃん」
「女子と違って男子なんて、全部この衣装だけどな」
「それでも、司が1番私の目に映ってくるよ」
「それ、変ってことじゃないのか?」
「さあねー」
周りのクラスメイトに聞こえないように小さな声で端的に会話をした。瑞希は少し会話をすると、満足そうに違うテーブルに造花を置きに行ってしまう。
結局何がしたかったんだ?
文化祭が始まるまであと、10分ほどになったとき、すべての準備が完了する。
「よーし、準備も終わったことだし、あと10分は自由時間!でも、これからシフトのやつは残ってろよ。それ以外はフライングで周りの教室見てきてもいいぞ」
遥紀が準備終了を告げると皆がぞろぞろと移動しだす。そして、1人のクラスメイトが外に出ようと、クラスの扉を開けると、驚いた声を上げた。
「どうした?なにかあった?」
異変を感じた遥紀がその驚いた声を出したクラスメイトに話しかける。
「こ、これ・・・」
あまりの様子に気になり、外を覗いてみると、文化祭も始まっていないのに、クラスの前にはとてつもない人が並んでいた。
どうやら他のクラスの準備が終わった生徒が並んでいるらしい。瑞希がこの姿で対応してくれるんだ。多少は混むかなーと思ってはいたが、まさかここまでとは。
「これは・・・急いで次のフルーツ飴準備しよっか」
遥紀が焦ったようにクラスメイトに呼びかける。
想像も及ばない波乱に満ちた文化祭が始まろうとしていた。
56話も読んでいただきありがとうございます。
いよいよ文化祭が開幕します。
最後にある通り、文化祭では波乱万丈が繰り広げられます!
ぜひお楽しみにしていてください!
これからも応援よろしくお願いします。




