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再会

 一度深呼吸をしてから扉を3回ノックする。


 「失礼します」


 部屋に入り、うつ伏せで横になっている姿は、やはりうちの高校にいる涼風瑞希に違いなかった。


 「これから補助に入らせていただきます。早乙女です。宜しくお願い致します」

 「お願いします」


 特に気づかれた様子はなかった。このままいけば気づかれることなくこの場を終わらせられるのではないだろうか。


 世森先輩からの指示を仰ぐと、手や腕周りの方をやってほしいとのことだった。


 想定していたのは足の方だったが、それは世森先輩にやってもらっていた。手の方でもさして問題はないため、すぐにマッサージに取りかかる


「結構足の方凝ってますけどなにかスポーツでもやってるんですか?」

「バスケ部に入ってます」


 初めての来店ということもあってか、涼風さんは緊張しているようだった。


 腕をマッサージしていると女子にしては筋肉がついているのが分かった。バスケに真剣に取り組んでいる姿が見受けられた。


 手のひらをマッサージしているとついつい手を繋いでいるような気分になってドキドキしてしまう。


 煩悩を抱かないように必死に明日のテストの単語を頭の中で考えながらマッサージした。


「めっちゃ可愛いくて、学校だとモテるんじゃないですか?」

「まぁーそんなことないわけじゃないですよー」


 最初は緊張していた涼風さんも、世代が近く、話し上手な世森先輩と話していると、いつしか学校では見たこともない楽しそうな雰囲気で話していた。


 少しすると世森先輩から肩をたたかれそちらの方を向くと世森先輩は時計を指さした。

 もうマッサージを始めて20分が経過したようだった。


 なにも考えないようにすることに夢中で気がつくと思わぬ時間が経過していた。 


 今やっているマッサージが一段落すると、そっと手を放しマッサージを終える。


 「ありがとうございました。これで私は失礼させていただきます」

 「・・・・ありがとうございました」


 一瞬空白があったような感じがしたが、俺はバレないようにといち早くこの部屋から出ることしか頭になかったため。それほど気にならなかった。


 部屋を出ると緊張が解け、疲れがどっと出た。


 部屋に入ってからは顔を見られていないし、会話も最低限の挨拶しかしていない。ばれていないはずだ。


 そう思いながら報告書を書く。10分ほどすると、世森先輩が部屋から出てくるのが見えた。


 リラほっとではマッサージが終わると、リラックスしてもらうため冷たいお茶かあったかいお茶をお客さんに選んでもらって出すことになっている。


 マッサージを終えるとスタッフは先に部屋を出て、お茶の準備をする。その間にお客さんは荷物をまとめて、部屋を出るころには出てすぐのテーブルにお茶が準備してあるという手順だ。


 つまり、世森先輩が部屋から出てきてお茶の準備をしているということは、もう間もなく涼風さんが出てくるということだ。


 これまで、ばれていないかもしれないのに顔を見られると流石にばれてしまうかもしれない。俺は、用事のあるふりをして、スタッフルームに隠れた。


 それでも気になって、様子を覗いてみるとなにやらきょろきょろ周りを見渡している。


 初めてくるマッサージ店の内装でも気になるのだろうか?


 彼女の意図に、いまいち気づくことができず、気づけば彼女の帰る姿を見送っていた。


 その姿を確認してから、カウンターの方に戻ると片づけをしていた世森先輩に話しかけられた。


 「今のお客様、早乙女君の知り合い?」

 「え・・・なんで分かったんですか?」


 まずい、なにかボロが出ていたのだろうか。それなら向こうにも気づかれて・・・


 「なんか研修の時よりも緊張してたみたいだったし、同年代みたいだからもしかしたらと思ってね。あんなにかわいい子と知り合いなんてやるじゃん」


 勘のいい世森先輩に鋭いところを突かれたが、そういう理由なら向こう側は気づいていないだろう。


 「いえいえ。知り合いってほどでもないですよ。単にクラスが一緒ってだけで、僕が一方的に知っているだけです」

 「そうなんだ。早乙女君かっこいいからそうでも不思議じゃないけどなー」

 「いやいや全然そんなことないですよ。やめてください」


 突然美人の先輩にお世辞でも褒められて声が動揺しながら答えてしまった。


 「じゃあ今はそういうことにしとく。じゃあね、お疲れ様。私はこれで上がりだから」

 「あ・・・お疲れ様です。」


 嵐のように俺の心を乱し、去っていった。そんな世森先輩の後ろ姿に俺は目が離せなかった。


 今後、涼風瑞希をマッサージすることはおそらくないだろう。今回だって本当はマッサージする予定ではなかったくらいだ。


 それが良いことなのか残念なことなのか、自分の気持ちを整理することはしたくなかった。


***


 翌日、俺はいつも通り登校し、クラスの前に到着した。


 俺はいつも学校には予鈴ギリギリでくるため大体の生徒は学校に来ている。その中には涼風さんも当然入っている。


 扉を開けると昨日ぶりの涼風さんがいる。そんな事実を確認できるのは自分だけのはずなのに、少し緊張した。


 そんなに扉の前で立っているのも周りから不審がられると思い、扉を開ける。


 当然、目が合うわけはなく自分の席まで歩いていく。クラスの中央を過ぎたあたりで彼女がこちらを向いた気がした。


 意識しているせいで、そんな気がしただけだろう。もし万が一こちらを向いていた時、顔を合わせる度胸がない俺はそちらに顔を向けることはしなかった。


 それから何事もなく、HRが始まり、授業が過ぎていく。


 「よっしゃーやっと昼飯だ」


 昼休みになり遥紀といつも通り昼飯を食べる。


 「ちょっとトイレ行ってくるわ。先食べてて」

 「おっけー」


 トイレを済まし教室に帰る途中の階段の前に差し掛かると、ふと名前を呼ばれた。


 「早乙女君、ちょっとこっちに来てくれない?」


 上の階につながる階段から声が聞こえた。顔は見えない。無視をするのもどうかと思い、そちらに歩みを進める。


 俺の学年は人数の関係で上から2年1年3年の順にクラスが配置されている。つまり、上の階は屋上になっている。


 階段を上り、屋上に続く扉の前の踊り場にいたのは涼風瑞希だった。


 これからのことを考えるより先に彼女の口が動いた。


 「早乙女君、バイトしてる?」

5話目も読んでいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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