5つ目
「うっまー」
俺はグラタンの想像以上の出来に声をこぼす。
「涼風さん、料理うまいんだね」
「前はこんなに色んな種類作れるわけじゃなかったんだけど、この生活始まってからいろんな料理に挑戦していくうちに上手くなったかな」
「俺のおかげってことか」
「司うるさい」
はい。すみません。
「でも、本当にうまくなったよな。やっぱり挑戦って大事なんだな」
「今回は誰のための作ってるのかってのが大事そうだけどね」
遥紀が小さい声で何か言っていたが、グラタンに夢中になっている俺は気が付かなかった。
「「「ごちそうさま」」」
今日、グラタンを食べられるとは思っていなかった第二のサプライズに俺は満足しきっていた。
「マジでありがとうな2人とも」
「なに満足してるの?まだあるよ」
遥紀はそう言って箱を俺に渡してきた。
俺と遥紀は毎年誕生日は祝っていたがプレゼントは渡してこなかった。プレゼントされても向こうにとってはいらないものかもしれない。そう考えるとお金の無駄になってしまうという何ともドライな考え方でお互いプレゼントを渡したことはなかった。
「今まで渡してこなかったけど、今回は盛大に祝ったからね今年くらいは渡そうと思ってね」
「ありがとう。今年の遥紀の誕生日は絶対何か渡すからな」
しかし、誕生日にプレゼントをもらうとこんなに嬉しい気持ちになるものなのか。今までやってこなかったのがちょっともったいないな。
箱を開けてみると、中には木でできたおしゃれなコースターが入っていた。
「この前の箱根でマグカップ作ってたからコースターあったらいいかなーって」
流石遥紀、プレゼントまでセンスいいとかすげぇこいつが人気なのはこういうところなんだろうなぁ。
「めっちゃうれしいこれ・・・」
箱の中からコースターを取り出そうと手を伸ばすと重なってコースターが2つ入っていることに気が付いた。
「やっぱり飲むなら涼風さんとだよね?マグカップもお揃いにしてたみたいだし」
遥紀のやつこんな時までからかってきやがって。
「だから、マグカップは偶然だって。まぁありがとうな」
「はい、これ」
俺が遥紀のプレゼントに満足していると横から恥ずかしそうにしている瑞希もプレゼント渡して来た。
「瑞希もくれるのか?」
「まあ、司には感謝してるから」
遂に俺も女子からプレゼントが貰えるようになったかと感動しながら箱を開ける。
「これは・・・」
俺と瑞希がよく対戦しているゲームで俺がいつも使っているキャラの小さなフィギュアだった。
とても美女からもらえるとは思えないプレゼントに笑いがもれる。
「ふっ。なんでわざわざこれなんだよ」
「だって、だって、探しているうちにわけわかんなくなっちゃって。そしたらいつもやってるゲームのお店を見つけたから」
一生懸命俺のためを思ってプレゼントを選んでくれたと思うと物はなんであれ、嬉しさが込みあがってくる。
「ありがとうな」
「うんっ」
「2人が眩しすぎるから俺はもう帰るよ」
「おい、そんなんじゃねえって」
「嘘嘘。でも夜も遅いし普通にそろそろ帰る時間だ」
プレゼントも渡した後、遥紀は玄関で靴を履いて帰る準備をしていた。そして俺と瑞希も遥紀を見送るため、玄関まで一緒に来ていた。
「あ、涼風さんちょっと来て」
「どしたの?」
靴を履いてあとは扉を開けるだけになった遥紀は思い出したように瑞希の名前を呼び、俺に聞こえないように小さな声で瑞希にだけ話し始める。
「・・・」
「え!そんなことできないよ!」
遥紀の言葉を聞いたらしい瑞希は瑞希はひどく動揺し始めた。
「おい、瑞希に変なこと吹き込むな」
「いやいや、これは司のためだよ。感謝してね」
遥紀はその言葉を言った後、玄関の扉を開け、帰っていく。
「じゃあ、洗い物でもするか」
「あ、待って」
さっきのことは気になるが遥紀も帰ってしまったし、気を取り直して、さっき食べたお皿でも洗おうかと思ったとき瑞希に呼び止められた。
振り向くと瑞希は小さなチョコケーキを持って立っていた。
「これ、黒瀬君が・・・」
「あ・・・ありがとう」
遥紀のやつめ、さっきのは何だと思っていたが、こういうことだったのか。
ショートケーキじゃなくて、俺の好きなチョコケーキを準備してくれるとは粋なことをしてくれる。
今日はクラッカーから始まり、グラタン、プレゼント、ケーキと4つもサプライズがあった。俺は今日のことを忘れることはないだろう。
それにしても、やはり誕生日はケーキが数倍おいしく感じるなと感嘆しながらケーキを食べていると、
「司、ほっぺにケーキついてる」
なんだか、そわそわしている瑞希が俺に声をかけてくる。
「ああ、やべ」
恥ずかしくなって、ティッシュを取り出しケーキを拭こうとすると、
「あ!」
瑞希が何かを見つけたような声を上げて俺の向いている方向とは逆の方向を指さしていた。
反射的に俺は瑞希の指さす方向に顔を向けた。
『チュ』
俺が振り向いた瞬間、頬にやわらかいものが当たった感触がした。
「じゃ、じゃあ私はお風呂でも入ってくるね」
俺が振り向き直すと瑞希は顔を真っ赤にして、逃げるようにお風呂場に向かっていった。
瑞希が指さした方向には何もなく、おまけに瑞希は行ってしまった。頬に当たった正体も分からない。
とりあえず頬にケーキを拭こうとティッシュを頬に当ててみるが、
「なんだよ、ケーキなんてついてないじゃん」
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