努力
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期末テスト前日の日曜日。俺たちは二人してリビングで勉強をしていた。
今週はテスト1週間前となり部活は基本的にすべて休みになった。瑞希は放課後クラスメイトに勉強を教えている場面は見たが、家に帰ってからは普段と変わらないいつも通りの日常を過ごしていた。
普段から一定の勉強はしているため全く勉強をしていないというわけではないのだが、どうしてその勉強量で学年1桁とれるのか分からない。
「司、ちょっと問題出し合わない?」
「いいね。やってやろうじゃん」
テスト前日の夜、もう基本的にお互いテスト範囲は網羅している。これ以上勉強してもさして変わらないとお互い思ったのか息抜きがてらクイズ大会が開催された。
「どうせ司は分かんないと思うけどね」
「ふーんそうなんだ。じゃあ俺から行かせてもらうよ。平安時代に成立した日本最古の物語は何でしょう?」
「簡単じゃん。竹取物語」
「正解。まあ最初の問題だし、軽いジャブだ」
「まあ、そうだよね。じゃあ次は私の番。鎌倉時代に起こった承久の乱は何年に起こりましたか?」
「1221年だ」
「ま、まあこれくらいは余裕だよね」
瑞希は面白くなさそうな顔を浮かべる。
「じゃあ俺だな。平安時代における国風文化の特徴を2つ挙げなさい」
これはなかなか難しい問題だ。
「えーっと、ね1つは仮名文字の発達でしょ?」
「正解」
「もう1つなんだっけな。うーんとね」
瑞希は30秒ほど考えていたが、どうやら答えを思い出すことはできずにギブアップした。
「正解は和歌や物語文学の隆盛でした。まあ、他にも何個かあるけどな。あれ、答えられないのか。これじゃあ俺の方が頭いいかもな」
「たまたまじゃん!次は私が難しい問題出すからね。平安時代、藤原氏が権勢を維持するために用いた、天皇に対する具体的な策略は何でしょう?」
「あれだよあれ、娘を天皇の后にするやつ。なんて言うんだっけな」
「ぶー正解は外戚政策でした。内容が分かってても名前が分からなきゃ意味ないんだよー」
「くっそ。じゃあ平安時代の藤原道長が・・・」
軽い気持ちで始めたクイズ大会は異様な盛り上がりを見せ、気づけば歴史だけでなく、国語、理科、英語と主要科目はだいたい出し合った。(数学は問題に出すのが難しいため除外した)
別に問題を出し合うだけで正解数などは特に数えたりしなかったが、お互いの正答率は大体同じくらいだった。
「司めっちゃ勉強してない?80位くらいって聞いてたから油断してた。あの時嘘ついたでしょ」
「いやいや80位は本当。なんならちょっと盛ったくらいだ。この二週間めちゃくちゃ勉強したからな。瑞希に煽られすぎたおかげでな」
「やばい、煽ったのが逆効果だった」
瑞希は俺が思ったより勉強してきていることに焦りとショックを受けていた。
ふとスマホを見ると表示されている時間は日付が変わった12時半頃になっていた。
クイズが始まったのは確か22時半くらいだったはずだから2時間近くもやっていたことになる。クイズの難易度はどんどん上昇していったため、すごく勉強になった。それに何よりも楽しかった。
「やばいな。もう12時半じゃん。明日はテストなんだからもうそろそろ寝ないとな」
「あ、うん。そうだね。寝ないとだね」
瑞希は歯切れが悪い返事を俺に返す。
それから寝る支度を整え1時ごろにお互いは自分の部屋に戻り、眠りについた。
身体は勉強で疲れているためぐっすり眠れるのかと思ったが、案外俺の身体は明日のテストに緊張しているようで寝つきが悪く、寝たり起きたりを繰り返した。
寝たり起きたりを繰り返しているいるうちに時計を見ると3時頃になっていた。
このままじゃいけないと思い、1度リビングに出て水を飲むことにした。
自分の部屋を出て真っ暗なリビングに足を踏み入れると、瑞希の部屋の隙間から光が漏れているのに気が付く。
寝落ちでもしてしまったのかと思い、電気だけでも消そうとドアノブに手をかけると部屋の中から音が聞こえてきた。
これは紙にペンを走らせているような音だった。もうとっくに寝たのかと思っていたがこんな時間まで瑞希は勉強しているようだった。
普段、部活にバイトに家事と忙しいのに、クラスメイトに勉強を教えられるほど勉強ができるのは単に遥紀と同じように授業で学んだら大体できてしまうような地頭がいいのだと思っていた。
でもそれは努力の上で成り立っている芸当だったのだ。
確かに俺が寝ようと思ったときに瑞希の部屋の明かりがついていることがよくあったが、深く考えたことはなかった。彼女は自分のイメージを保つために誰にも見えないところで努力していた。
俺は瑞希に起きていることを悟られないように静かに用事を済ませ、部屋に戻りベッドに入った。
***
あれから1度も起きることなく朝を迎え、テスト当日の朝を迎えた。部屋から出ると瑞希はいつもと変わらない様子で朝ごはんを作っていた。
あれからは寝てしまったので、結局何時ごろに寝たのかは分からないが朝ごはんを作るために少し早く起きたとすると瑞希の今日の睡眠時間はほぼない。
一緒に住み始めてからもう結構経つと言うのに彼女の努力を知らなかったことに自分に不甲斐なさを抱いた。
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