勝負
6月も後半になり期末試験が近づいてきた。
うちの高校は世間一般的に進学校と言われており偏差値もそこそこ高い。大学付属ではないため、あと1年後には基本的にみんな大学受験がやってくる。
推薦を取りたいものもそうでないものも学期末の試験は1年生の頃からみんな気合が入っているようでこの時期になるとなんだか少し張り詰めたような空気が感じられる。
「なんだかみんな2年になってより一層張り切ってるなー」
遥紀が呑気な声で言う。
「遥紀も2年だろ。もう少し勉強しろよ。いつも全然勉強してないよな」
「それは司に言われたくないな」
俺は基本的に試験前日にならないと試験勉強はしない。もちろん普段から授業は真面目に受けているし、復習も一応している。順位もそこまで高い順位を狙っているわけでもないのでいつもそれで300人中80~100位くらいに収まっている。
「俺はいつも勉強してるからな。遥紀はいつも勉強してないだろ」
「まあね」
遥紀は俺が見る限り、勉強などしている感じがしない。授業中も寝ている姿をしょっちゅう見るし、家に遊びに行った時も勉強する机らしきものの上には荷物が積みあがっていてとても勉強しているとは思えない。
だが、本人曰く俺と同じで前日は流石に勉強しているらしいが前日勉強だけで20位付近を取ってくるのだから本当に恐ろしい。
「じゃあさ、今週の日曜司の家で勉強してもいい?」
絶対勉強なんかする気がない。家に来た途端ゲームするに違いないと思ったが、俺も前日じゃないと勉強しないため普通に俺の家で遊ぶだけだと考えれば別にいいかと思った。
「瑞希に聞いてみる」
「あ、そうだった。司は涼風さんと同居してるんだったな」
「うっさい。周りに聞こえるだろ」
覚えているのにこうやってちょくちょく俺たちのことをからかってくる。
「それにしてももう名前呼び隠さなくなったのな」
「もう手遅れだからな」
ついうっかり誤って遥紀の前で瑞希呼びしてからもう諦めて遥紀の前では呼び分けなくなった。
***
「次の日曜遥紀を家に呼んでいいか?」
瑞希はまだ遥紀に素を出せずにいる。遥紀から誘われたときは居心地が悪いだろうと思い断ろうした が、瑞希自身も遥紀と仲良くしたいと言っていたのを思いだし、その日の夜聞いてみることにした。
「何時ごろ?」
「うーん。時間はまだ決まってないけどお昼くらいから夕方くらいまでかな?」
「私日曜日は午後から部活だからお昼くらいならちょっとだけ会うくらいかな」
「じゃあちょっと遅らせて瑞希が家出たくらいに呼ぶか」
「あ、いいのいいのお昼くらいの時間で。黒瀬君と会っておきたいし、部活行くからあまり長い時間一緒じゃないから緊張しっぱなしってわけじゃないし」
「分かった。ありがとう。じゃあそれくらいの時間に遥紀来ると思うからよろしく」
「分かった。ところで明日何するの?ただ遊ぶだけ?」
「いや、遥紀は期末が近いから勉強するって言ってた」
正直に言えば遊びに来ると思うのだが、勉強するって言っておいた方がなんかかっこいい。
「そうなんだ。言われてみればもうすぐ期末テストか」
知らなかったのか。さては頭はあんまり良くないな。そういえば瑞希が頭がいいという声はあまり聞かない。
「そういえば司はあんまり勉強している姿見ないけど、試験大丈夫なの?」
「まぁー大丈夫かな」
「それなら今回の期末テスト試験の合計点で勝負しない?負けた方は勝った方の言うことを1つ聞くこと」
こいつ俺が勉強あんまりしないからって勉強できないと思って勝負を仕掛けてきやがった。
「いいだろう。勝つのは俺だけどな。瑞希も勉強苦手ならせいぜい頑張ることだな」
「え、何言ってるの?私1年生の頃期末の順位はだいたい1桁だよ」
「え、そうなの?」
「うん。まさか司私が勉強苦手だと思ってこの勝負受けたの?残念でしたー。司は何位くらいなの?」
「・・・80位くらい・・・」
「ぷぷぷー80位?全然じゃん。それで私に勝とうと思ってたの?まあ、せいぜい頑張ってね」
くっそ。そういえば放課後、勉強を教えてほしいとかクラスメイトに言われてた気がする。こんだけいたら誰か1人くらいは勉強できない奴がいるってのはお約束だろ。
可愛いだとか、運動できるだとかの声が強すぎて勉強できるという声が霞んでいただけか。
俺としたことが瑞希に煽られて瑞希が勉強出来るのを忘れていた。
それにしても学年1桁が霞むくらいってやはりこいつの容姿はえぐいな。
予定変更だ。日曜はどうせ遊びだす遥紀と一緒にゲームでもする予定だったがとことん勉強してやる。
期末まであと2週間弱ある。この期間勉強しまくって絶対に勝つと心に誓った。
***
土曜日になり、今日はリラほっとの出勤日だ。
今週はテストが近いこともあって土曜日のみの出勤になった。なんだか最近濃い出来事がありすぎてリラほっとに出勤するのもなんだか久しぶりな気がする。
今日は従業員の1人が病欠で俺がいつもより長く働くことになったため休憩時間が1時間もある。
そして、学校が終わってそのまま来たため勉強道具が鞄に入っている。
俺はこの時間を有効活用して勉強を始めた。
問題を解き始めて数十分が経ち、応用問題に頭を悩ませていると世森先輩の声が聞こえてきた。
「早乙女君、勉強してるの?お姉さんが勉強教えてあげよっか?」
25話も読んでいただきありがとうございます。
遂に総PV数が1万を突破しましたー
本当にありがとうございます。
実は1週間前くらいには突破はしていたんですが投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
ブックマーク、評価、コメント、いいね、PV数に支えられてここまで来ることができました。
これからも精進していきたいと思います。応援よろしくお願いします。




