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決断

 フードコートに着くと13時を過ぎてるというのに多くの人でごった返していた。


 席を探していると運よく席を立ちそうな人を見かけたので、その人が席を立つのを待ってから席に着くことができた。


「瑞希、先に買いに行っていいよ。俺はここで荷物見てるから」

「いいや、司が行ってきて」


「分かった。じゃあ俺の後に瑞希がいくのね」

「ううん」


「? じゃあどういうこと?」

「私の分も買ってきて」


「分かった。何がいい?」

「おまかせで」

「?」


 俺は思考が止まってしまった。今時の女子高生の好きな食べ物なんてわかりゃしない。それなのに一番難しいおまかせを注文されてしまった。


「文句言わないからさ」

「絶対嘘」


 こういうのは何を持ってきても何かしらの小言を言われるに決まっている。


「司とおんなじお店でいいからさ。それに、交代で行くより1人が2つ買ってきた方が、効率いいでしょ?」

「それはそうだけど……文句言うなよ」

「分かってるって。行ってらっしゃい」


 一理あるため何も反論できず、俺はなくなく席を立って、周りの店を回ることにした。


 周りを見回すと、某有名ハンバーガーチェーン店や有名たこ焼き屋が見えた。


 どれにしたらいいんだろう。俺は、瑞希が好きなものなんて知らない。


 もうちょっと彼女を見ておけばよかったと後悔した。


 迷いながら歩いていた時、ある店の前で立ち止まった。


「おまたせ」

「意外と早かったね」

「はい。これでいいかな」


 俺は○ブウェイのサンドウィッチを渡した。


「これ大好きなやつー!センスいいね」

「それはどうも」


 俺は冷静を装ったが、内心はめちゃくちゃ嬉しかった。こういう系は文句を言われるとすごく腹が立つが、その反面褒められるとすごく嬉しい。


 俺が買ったのはハムが入ったメニューだった。瑞希と暮らし始めた当初に朝ごはんにハムが入ったサンドウィッチを作ってくれた。それを思い出した俺は、これにすることにした。


 俺たちは2人でハムのサンドウィッチを食べた後、最後に少し買い物を済ませて家に帰った。


「ただいまー。なんか少し出かけただけなのにすごく懐かしく感じない?」

「ちょっと買い物に行っただけだろ。それ言うのは最低でも日帰りの旅行くらいじゃないと」

「ノリ悪いのー。私はそう感じたんだもん」


 俺は瑞希にここが帰る家だと認識してもらっていることに内心嬉しくなった。


 今日は出かけていたこともあって、ショッピングモールで総菜を買っていたのでそれを夜ご飯にした。


 食べ終わって、2人ともゆっくりしていると瑞希のスマホが鳴った。


 一瞬鳴っただけだからメールのようだけど、瑞希のスマホが鳴るところなんて見たことがないから珍しいなーなんて思っていると、そのメールを確認したっぽい瑞希の様子が急に暗い顔をした。


「誰からだったのか聞いてもいい?」

「お母さん」


 その言葉に俺まで固くなってしまった。


「それでなんて?」

「お母さんの病状も少し良くなって面会できるようになったから顔を見せに来てくれないかって」

「なるほど・・・」


 もちろん行った方がいいのは分かっているが、行ったら今の瑞希を状況を根掘り葉掘り聞くだろう。

 今までもメッセージではやり取りしていたらしいが、直接会うとなったらこの状況もバレかねない。


 俺は覚悟を決めて瑞希に言った。


「お母さんの面会、俺も行ってもいい?」

「え・・・いいけどこの状況言っちゃうの?」


「そっちの方がいいと思うんだよね。俺の両親はいいとしても、瑞希のお母さんは病気なわけで、きっと今の瑞希をめちゃくちゃ心配してる。そんな状況で嘘を言ってもバレたり、もしバレなかったとしてもそれで本当にいいのかって思っちゃう。本当のこと言って、安心してもらった方がいいと思う」


「安心できるかな?」


「それは俺も納得してもらえるように頑張るし、瑞希も精一杯伝えればできるって信じてる」

「うん。そうだね。私も伝えないままでいいのかなってずっと引っかかってたから、これを機に正直に言ってみようと思う。予定いつ空いてる?」


「瑞希は部活あって忙しいだろうし、来週の日曜日はどう?」

「私もその日なら部活ないし、大丈夫だよ。じゃあその日って連絡しちゃうね」

「おう」


 それから難しそうな面持ちでスマホを操作して、メッセージを送っていた。


「はー。もう送っちゃったよ。後戻りできないからね」

「分かってるよ」


「ほんとにー?」

「あ、そんなこと言うなら俺は行ってやらない。1人で行ってね」


「うーそー、ほんとにお願い一緒に来てよ」


 上目遣いですっごいかわいい顔をしてきやがった。俺は動じないぞ。


「まあ、そこまで言われたら行こうかな」

「やった」


 動じてしまった。だって仕方ないじゃん、あの顔だよ。あの顔で動じないやつは男ではないよ。


***


 翌朝、学校の登校中やはり、昨日のことを思い出してしまう。


 結構強気なことを言ったが、この同居のことを全面否定される可能性だってあるし、むしろその可能性の方が高い。


 それに、認めてくれる以前の話でまずまずすごく緊張する。


 誰が悪いわけではないが、今週中はずっともやもやしそうだなと思いながら歩いていると、学校のクラスの前まで到着した。


 クラスに入り、自分の席に座るとすぐに前の席に座っている遥紀がこちらに体を向けて話しかけてきた。


「司、俺になんか言うことない?」

「何のこと?」

「ヒントは涼風さんだよ」


 俺の悩みの種がピコンと1つ増えた音がした。

総合評価100pt到達しました。(やったー)

本当にありがとうございます。(詳しくは活動記録を見てね)

18話も読んでいただきありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いします。



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