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買い物



 翌日、ベッドから体を起こした俺は昨日のことを思い出した。


 今、この扉を開けて涼風さんがいたとして、俺はどちらで彼女を呼んだらいいんだろう。


 瑞希呼びは昨日のあの話題だけだっただろうか。そう思ってくるとそんな気が強くなる。


 俺は結論の出ないまま、いやあのままだと何時まで経っても答えが出そうにないから俺は、部屋を出てみることにした。


 扉を開けると、彼女はそこでリビングで朝ごはんを食べているところだった。


「あ、つ、司。おはよう」

「あ、おはよう。瑞希」


 お互いすごくたどたどしい様子で朝の挨拶を交わした。


 呼び方は昨日決めた通り下の名前の呼び捨てになっていた。彼女から言い出してくれなければ涼風さん呼びしていたかもしれない。


「・・・・・・司遅いよ。もう先に朝ごはん食べちゃってるからね。早くしないと遅刻するよ」

「・・・あぁ悪い。急いで支度する」


 たどたどしい挨拶から始まったせいか、長い沈黙があったが、何とか瑞希が話題を提供してくれた。


 起きてからは呼び方問題を考えていたから遅れたとは口が裂けても言えない俺は、とりあえず何も考えることなく、朝の支度を始めた。


***


 それから何事もなく学校生活を送り、曜日は日曜日を迎えていた。


 学校での瑞希はすっかり元通りでクラスのみんなも病欠しただけだと疑っていないようだった。


 俺達は朝ごはんを食べた後、自宅から3駅ほど離れた所にある大型ショッピングモールに行くことにした。


 ショッピングモールに着くと初めに行くと決めていたお店に足を運ぶ。


「どうしたの?そんなにキョロキョロして。なんか行きたいお店でもあるの?」

「いやいや、何でもない」


 生活用品を多く取り扱っているお店に最初に入り、そこで替えの歯ブラシやお皿やタオルなどを買った後、瑞希の服を見に行くことにした。


 瑞希が入ろうとしたお店は明らかに女性用の下着なども売っていて中には男子の姿は見られなかった。


「俺はお店の外で待っているから、見てきていいよ」

「なに?もしかして恥ずかしいの?」


 元気になったのは大変喜ばしいのだが、こうやってからかってくることも増えてきたのは俺の心臓が持たないのでやめていただきたい。


「当たり前だろ。中見てみろ。誰も男子なんかいないぞ」

「ふふっ、確かに。珍しく素直に言ってくれたから勘弁してあげよう」

「それはどうも」


 そうして瑞希がお店に入るところを見送ったあと、周りを見回すとなんだか、見たことあるような集団が目に留まる。


 遥紀が入ってるテニス部の集団だった。もちろん遥紀もいて、全部で4人だった。


 このショッピングモールには映画館やゲームセンター、カラオケなど男子高校生が1日遊べる施設が揃っていた。


 そして俺はもしかしたら遥紀に出会うんではないだろうか思っていた。


 俺は遥紀以外には知られていないのだが、漫画やアニメ、ライトノベルも読む。ガチ勢ってわけではないけどそこそこ読む部類には入るだろう。


 漫画やラノベは俺の部屋においてあるためまだ瑞希にも知られていない趣味だ。


 今のこの状況もライトノベルで読んだことがあるが、こういった買い出しでショッピングモールに来た主人公はほぼ100%の確率で親友に遭ってバレると相場が決まっている。


 俺はそう簡単にはいかない。ショッピングモールに入った瞬間から周りを警戒していた。瑞希にはキョロキョロしているのがばれたけど鉢合わせせず、先に気づけたことは警戒していた甲斐があったといえるだろう。


 俺は素早く背を向け、店の前から歩き出し隣の店に入り、身を隠した。


 瑞希は女性用のお店にいるし、バレないと思ったが甘かったようで隣から「涼風さん!」とテニス部の声が聞こえてきた。


 バレないように隣のお店から顔を覗かせるとたまたま通路に近いところにある商品を見ていたところを気づかれてしまったようだ。


「あら、同じクラスの黒瀬君とテニス部?の皆さん。こんにちは」


 テニス部と言っても遥紀以外は違うクラスなので男子側は瑞希を知っていても、瑞希は他のテニス部を知らない。


「涼風さん、1人ですか?」


 テニス部の1人が質問した。


「いえ。友達と2人で来てますよ。今はちょっと席を外していますが」

「へぇー。涼風さんもこういうところ来るんだ」

「私だってこういうところくらい来ますよ。」

「これから俺達、カラオケ行くんだけどもし良かったら一緒に行かない?」


 偶然の出会いにワンチャンあると思ったのか、テニス部の1人が提案してくる。遥紀はいきなりの誘いにびっくりした様子だった。


「遠慮しておきます。一緒に来ている友達は人見知りで、無理させるのも良くないので」

「あーそれなら仕方ないね」


 遥紀が他のテニス部がごねる前にすかさず諦めた返答をした。


「では、買い物の続きがありますのでこの辺で」

「うん。邪魔しちゃって悪いね。またね」


 お互いペコっと会釈をしたあとこちらに近づいてくる。


 俺は急いでまた隠れたあと、遥紀たちが行ったことを確認して、店の前に戻った。

 それから数分程待っていると瑞希が店の前から出てきた。


「おまたせー」

「そんなに待ってないよ。それより、遥紀達に遭ったでしょ。大丈夫だった?」

「黒瀬君でしょ。大丈夫って言うかむしろ助けてくれたみたいだった。他のテニス部の人はちょっとしつこい感じがあったけど、けん制して諦めてくれたって感じかな」


 流石俺の親友だ。今度会ったらそれとなくお礼を言っておこう。


「それより、やっぱり学校と全然様子違うな」

「いやーそれほどでも。褒めても何も出ないよ?」

「褒めてねえよ」


 瑞希はてへっみたいなポーズをとっている。これを学校のやつが見たらほんとになんて言うんだろう。


「買い物も大方終わったし、お昼でも食べて帰ろっか」


「そうだな」


 時刻はあっという間に過ぎていて13時頃になっていた。

 俺たちはフードコートに向けて足を運ばせた。

17話も読んでいただきありがとうございます。

皆さんに評価して頂き、とうとう100ptを目前とした98ptまで到達することが出来ました。

応援本当にありがとうございます。

(詳しくは活動記録に記しますので、もし良ければ見てみてください)

これからも精一杯精進していきますのでこれからも応援よろしくお願いいたします。

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