遊園地
「おい、瑞希まだ準備出来ないのか?」
「ちょっと待ってよ!あと30分くらいかかる!」
今日は2月21日金曜日
普通なら平日で高校があるのだが、今日はうちの高校の入試があるということで在校生は休みなっている。
そして、遥紀達に強引に誘われて、遊園地に行くことになった。
俺は中々部屋から出てこない瑞希に扉越しに催促をする。
「30分ってそれじゃ遅刻するだろ」
「だって、女の子の準備には時間がかかるんだよ?」
「ちょっと前に時間管理が出来ないだけとか自分で言ってたじゃねえか」
「それは~それというか~これはこれというか・・・」
調子いいこと言いやがる。
「というか、一緒に行く必要あったか?怪しまれるだろ」
今回のメンバーは俺と瑞希と遥紀と希と湊だ。
鈴賀も誘ってみたんだが、本人は行きたがっていたが、塾があるからと断られてしまった。
メンバーの中で希だけ、瑞希の素顔をまだ知らない。そして、同居していることも。
だから一緒に行ったりなんかしたら、不審に思われるかもしれない。
「いいの!一緒に行くの!」
瑞希の断固たる意志がメラメラと燃えていた。
「分かったから、遅刻するから早くしろ」
すると、ガチャっと扉が開いて、両手に洋服を持った瑞希が出てきた。
「ねぇ、どっちがいいと思う?」
「右」
即答する。
「もう少し悩んでくれても良くない?」
「だって、左はワンピースじゃん。乗り物乗るし、動きにくいだろ」
そう答えると瑞希は少し落ち込んだような顔をする。
「そうなんだけどさ・・・」
「それに、右の方が瑞希に似合ってると思ったから」
「そ、そうなんだ~ふ~ん。まぁ、私もこっちの方がいいかなぁとは思ってたけどね」
「じゃあ、初めから俺に聞くなよ」
一変表情は変わって、嬉しそうな顔をしてまた部屋に戻って行った。
***
「司先輩!おはようございます!」
「待たせてごめん」
「いえ、私が早く来ただけですから!」
なんやかんやあったが、どうにかしていつまでも準備の終わらない瑞希を引っ張り出してきて、約束時間の10分前には到着したはずなんだが、真面目な希はそれより早く来ていた。
「それと、涼風先輩もおはようございます!」
「久しぶり、水上さん」
「司先輩と一緒に来たんですか?」
「いえ、偶然そこであっただけですよ」
「それなら良かったです」
「良かったです?」
希の返答に瑞希は少し眉をぴくっとさせた。
「あ、いえ何でもないです!」
それに希もなんだか焦っている様子だし。
「でも意外でした。涼風先輩が遊園地とか行くタイプだとは思わなかったので」
「せっかく誘って頂いたので、私も楽しもうかなと思って」
優等生モードの瑞希は基本敬語を使って話すのだが、希は後輩だし、俺達と瑞希がある程度仲がいいことは希も知っているため、今日の瑞希は敬語が少なめだ。
本人も学校よりはリラックスできているだろう。
そんなことを考えていると、瑞希に希が行きたいと言っていると話した時のことを思いだした。
ちょうど、遊園地に行くと決まった日の夜のこと・・・
「今度の金曜日の遊園地の件なんだけど、希も行きたいらしいけど、大丈夫か?」
「別に平気だよ?」
希がいなければ、いつもの調子で瑞希は振る舞えるため、少しくらいは迷う素振りを見せると思ったのだが、やけにあっさりと承諾をした。
「ほんとか?嫌なら瑞希の名前は出さずにそれとなく断っておくぞ」
瑞希が優等生のイメージを崩したくないから、承諾したのだったらやりようはいくらでもある。
あの希をもう一度断るのは心が痛むが、しょうがない。
「ほんとにいいよ。もしかしたら、学校の他の子も遊園地来てるかもしれないし、油断してたらこの前みたいなことになっちゃうかもだから」
確かにうちの高校の在学生は全員が休みだし、遊園地は高校からそれほど遠いというわけでもない。他の生徒も遊園地に行く可能性は十分にある。瑞希は目立つし、目撃される可能性は低くはない。
「分かった。じゃあ希も誘っておく」
「それに、希ちゃんには会いたかったからね」
「?」
***
少しすると遥紀と湊も合流して、全員合流した後、遊園地に向かった。
「じゃあ、最初は何と言ってもジェットコースターからだよな」
そうして、遥紀がアトラクションを指さす。
一瞬ドキッとしたが、よく見てみるとそこまで傾斜が大きいわけでもなく、そこまでスリリングなアトラクションでもなさそうだった。
「私、湊先輩と乗ってもいいですか」
「俺?もちろんいいよ」
1列2人で乗るアトラクションだったが、希が湊を指名したのが、少し驚きだった。
このメンバーの中で一番面識が薄いのがこの2人だからだ。
一応話したことがあるらしいが、ほぼ初対面なのにも関わらず、そうやって話しかけられるのは素直にすごいと思った。
俺なら絶対に出来ない。
ジェットコースターに乗り終わると、次は希の希望でコーヒーカップに乗ることになった。
「黒瀬先輩、私と一緒に乗ってくれませんか?」
「うん、いいよ」
今度は遥紀を誘っていたが、なんだかその笑顔は俺がいつも見ている希の笑顔と違って見えた。
161話も読んでいただきありがとうございます。
これからも応援よろしくお願いします。




