表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/145

問題

「ただいまー」

「おかえり」


 いつも俺が帰った30分後ほど経ったくらいに涼風さんも帰ってくる。


 涼風さんはバスケ部に入っていて平日は基本的には部活があり、俺より遅く帰ってくる。月曜日だけは部活が休みだが、それにも関わらずなぜ俺より帰るのが遅くなっているのかというと、放課後になると毎日のように複数の人から遊びや勉強を教えてほしいなどの誘いがかかるからだ。


基本的には断るそうだが断るにも時間がかかる。断り切れずに受け入れてしまうと1時間や2時間帰るのが遅れるなんてざらにあるそうだ。


 バイトを入れてからはそんなには遅くなっていないそうだが、これからは余裕が多少出てくるため、そういったことも増えてくるだろう。


 顔が良くてみんなに好かれることは誰もが羨むことだが、その陰にはその人しか分からない苦労があるんだろうな。


 だからってわけではないが家に帰った時くらいはゆっくりしてほしいと思い、なるべく家事は俺がやろうとするが、それも全力で止められてしまう。女子と暮らすってやはり難しい。


 今は朝ごはんは基本涼風さんに作ってもらっている。お昼はお弁当やら学食やらで食べるので各自で準備している。


せめて夜ご飯くらい作りたいといったのだが、彼女の猛反対に遭い、今は交代交代で夜ご飯を作っている状況にある。なんか俺だけ貰いすぎているのではないかと思うのだが、これ以外の道を提示すると断られるので仕方がない。


 今日は俺の当番なので18時半ごろになると準備をしだす。今日は生姜焼きに白米、ごぼうと人参のきんぴらだ。今までであれば考えられないほどしっかりと自炊をしている。これも彼女が来てからの変化だ。やはり俺が貰いすぎていないか?


 俺は基本的にお風呂はご飯の後に入るが、涼風さんはご飯の前に入る。俺にはなぜだか分からないけどお風呂に入るとお腹が減るからだそうだ。


でもまあ、入る時間がかぶらないというのは双方にとっても利点だ。


「わぁーめちゃおいしそう」


 お風呂上りに俺のほぼ出来上がっている料理を見て呟く。


 涼風さんはラフな服装をしており無防備とまではいかないが、防御力が少々物足りない。それなのにそれを指摘することもできず、ひたすらに動揺を隠さないといかない俺の身にもなってほしい。


 そうしている間に料理は出来上がり時計を見てみると時刻は7時30分になる頃だった。時間は多少前後するが、毎日これくらいに時間に夜ご飯を食べる。そう決めたわけではないが、何となくこの時間に落ち着いた。


「いただきまーす」

「いただきます」


 あれ以降涼風さんに元気が戻り、振る舞いも以前まで見てたものに戻った。俺はそのことをなぜか自分のことのように嬉しくなった。


「そうだ。涼風さん今週の土日どっちか空いてない?荷物は持ってきてもらったと思うんだけど何日か 過ごしてみて必要なものとかあるでしょ。それとか買いに行きたいと思って」

「確かに。歯ブラシとか新しいの欲しいし、あと下着も。足りるかなって思ってあんまり持ってこなかったんだけど、やっぱりもうちょっとほしいかなって」

「う、うん。そうだね」


 コメントしづらいものを挙げてきた。これは俺をからかうためにわざとか?とか思ったが、彼女は気づいてなさそうに無邪気に答えてくるため多分違うんだろう。


「日曜日なら空いてるよ」

「じゃあ、そこで行こう」

「分かった」


 途中俺が一方的に気まずくなったこの話も終わったかと思ったその時

「ねえ、」

「どうしたの?涼風さん」


「それ」

「ん?」


「涼風さんってやつ」

「それがどうしたの?」


「もう一緒に住んでいるんだからそろそろ呼びやすい方に変えた方がいいんじゃない?」


 この問題に直面したか。確かに毎度毎度、涼風さんと呼ぶのは少しめんどくささも感じていたが、突然変えるわけにもいかなくて、スルーしてきた問題だ。


 ついに涼風さんの方から言われる時が来るとは。


「じゃあ、涼風?」

「瑞希。どうしたの?もしかして恥ずかしくて言えない?」


 もちろん恥ずかしかったが、からかわれたこともあって強気に返してみることにした。


「分かった。瑞希。でも、俺のことはもちろん司って呼ぶんだよな?」

「え。あ・・・うん」


 すんなり瑞希呼びされると思っていない瑞希はうろたえて、さらに司呼びの注文までされて脳が追い付いていないようだった。


「俺の苦労が少しは分かったか」

「う、うん。じゃあその呼び方は2人きりのときだけで」

「お、おう」


 これに懲りた瑞希はてっきり呼び方を戻すものだと思っていたが、2人のときだけ専用になってしまった。そっちの方が特別感があるのだが、強気にでた俺は今はさら引っ込めることもできずに受け入れてしまった。


この空気感になんだかいたたまれない気持ちになった俺は予定にもなかったが急遽部屋に逃げることにした。


「じゃあ、そろそろ部屋に戻るわ」

「うん。おやすみ。司」


 瑞希の顔も見れずに扉を閉めた後俺は自分では見えないが顔は真っ赤になっていただろう。

16話も読んでいただきありがとうございます

皆さんの応援の1つ1つ心に染みます。

本当にありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いします。

追記 初稿では涼風瑞希は部活に入っていないと書かれていましたが、バスケ部に入っています。

本当に申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 部活には入ってない……あれ?女バスの部長してなかったっけ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ