1番に
番外編を挟んだため、冒頭部分は前話、本編156話の後半部分の再掲になります。
157話は***以降からになります。
「ただいま~」
部活終わりの瑞希が家に帰ってきた。
「おかえり・・・って凄い荷物だな!」
行く前はそうでもなかったのに帰ってきたときにはとんでもない量の荷物を抱えていた。
「予想よりも多くチョコ貰っちゃってね。またチョコ作らなきゃ」
瑞希は同性の女子からいわゆる友チョコをたくさん貰っていた。
「そう言えば、瑞希って誰かにチョコ渡したのか?友チョコとか男子にとか・・・」
実はチョコ自体を作っていたのは知っている。
今日朝起きたら瑞希がすでに目覚めていて、甘い匂いが俺の鼻に届いたからだ。
問題はそれを誰にあげたのかという話なんだが・・・
「私からあげちゃうと色々問題が起きかねないから、私にくれた女子だけお返しとしてあげた」
それなら、男子にあげなかった口実になるし女子にもあげられる。賢い方法だ。
「お返し用としてある程度用意してたんだけど、去年よりだいぶ増えちゃって、足りなくなったからその分また今度作らないと」
湊もそうだけど、人気者って言うのも案外大変だな。
「なに?もしかして私が男子にあげたかもとか嫉妬しちゃった?」
瑞希は面白いものを発見したかのように急にからかう顔になった。
「別に?家中匂いが充満してたから単純に気になっただけだけど?」
「ほんとかなぁ~?私が本命チョコでも誰かにあげたんじゃないかって考えてないかなぁ~?」
うぜえ。
口が裂けても今日の朝、チョコの匂いがして俺の分じゃないかと考えたとかは言えない。
「でも、1つ私も言いたいことがあります」
「な、なんだよ」
終始楽しそうにしていたのに急に真面目な顔になったので何を言い出すのか少し臆した。
「司は今日いくつチョコを貰いましたか?」
「え~と、7個?」
鈴賀と希と他の女子5人。
「それは男子同士の友チョコとかではなく?」
「男子同士でチョコ送り合ってたらキモいだろ」
「なぜ女子から貰えるんですか?」
「なぜと言われても・・・?」
さっきからこいつ何を聞きたいんだ?
「もしかして瑞希も俺が女子から本命チョコ貰ったかどうか気にしてる?」
「!!! そんなわけないじゃん!あんなことがあったのにどうして貰えるのって意味だから!司はチョコが欲しいあまりに女子から脅迫して貰ったんじゃないかって思っただけだから!」
「おい、言い過ぎだろ」
ただの冗談じゃん。流石の俺でもそんなことしないわ。
「もう俺、夜ご飯の支度するからさっさとお風呂入って来い」
「はぁーい!言われなくても入ってきます!」
なんだか逃げるように瑞希はお風呂に入って行った。
***
「「ごちそうさまでした」」
2人で夜ご飯を食べ終わると、瑞希は今日貰ったチョコの山を整理し始めた。
その瑞希の姿に俺も出来るだけ早く食べた方が美味しく味わえると思い、席を立って、今日貰ったチョコを手に取った。
鞄の中に無造作に手を入れて、手の中に入ってきた箱を2つ取りだすと、今朝1番初めに鈴賀から貰ったものと学校で少し食べた希からのものだった。
そうして席に戻り、俺が包装を解いて、チョコを取り出そうとすると
「はいこれ」
突然そう言って、瑞希は山積みになっていたチョコの中から1つを手に取って俺に渡してきた。
「いくら量が多いからって、瑞希が貰ったものなんだから、俺に渡すなよ」
食べきれないかもしれないが、だからって他人にあげるのはどうなんだ?
それになんだか山積みになっている中でも結構気合の入った包装がされているやつだし。
多分、俺が食べたって知ったら渡した子が可哀そうだろ。
それともチョコが少ない俺が哀れに見えて渡してきたとか?それだったら泣くぞ。
「・・・違うもん」
「えっ?」
手元のチョコから視線を上げると、顔が少し紅潮した瑞希が恥ずかしそうにこちらを向いていた。
「違うって・・・何が?」
「これは誰かから貰ったものじゃなくて・・・わたしが・・・作ったやつ・・・」
「っ!」
なんだそれ、反則だろ。
「・・・なに、その顔?私あげないなんて言ってないじゃん」
「だ、だって昨日・・・」
俺がもらえると勘違いして、結局頭撫でてもらったやつ。あれ結構恥ずかしかったんだからな!
「あれは、まだバレンタインデーじゃ、なかったから・・・」
「あ、それは、確かにそうですよね。で、ではありがたく頂戴します」
若干、恥ずかしいような、気まずい空気が流れながらも瑞希からチョコを受け取る。
でもその時、俺の中に疑問が生じた。
「貰えるのは嬉しいけど、なんで今なんだ?」
普通に渡すつもりなら、チョコを作っていた今日の朝のタイミングが1番渡しやすかったはずなのに。
その問いを瑞希に投げかけると、一瞬だけ不意を突かれたような顔をした。
「それは・・・渡すか迷ってて・・・・・・やっぱり言えない。内緒」
「なんでだよ」
「なんでも!」
渡すか迷ってたのに、なんでこのタイミングなのかが1番知りたいのに。
でも、見るからに秘密にする意思は強そうで、言ってくれそうにない。
ここは諦めるしかないか。
俺は手に持っていた瑞希からのチョコを一旦、テーブルに置いて、さっき蓋を開けてしまった希のチョコに手を伸ばそうとした。
「あっ!」
そのとき、瑞希がなんだか大きな声をあげた。
「どうした?」
「えっとー私のチョコは食べないの?今が1番おいしいよ?」
「もちろん食べるけど希から貰ったチョコ、もう蓋開けちゃったし、どうせだったらこっちから先に食べようかなと」
「それ、希ちゃんからなの?」
「そうだけど・・・」
そう言いながら再度、希のチョコに手を伸ばそうとする。
「待って!」
「だからどうしたんだよ、そんな慌てて」
「分かった。なんで私が今、チョコあげたのか言うから・・・ちょっとだけ食べるの待って!」
「・・・おう?」
さっきまで頑なに拒否してたのに、なぜ急に言いたくなったのかは分からないが、それ食べながら聞いちゃダメなの?
瑞希は一度深呼吸をした後、何か決意の決まった顔をした。
「恥ずかしいから司にチョコあげるか迷ってたんだけど・・・司が他の子から貰ったチョコ食べようとしてるところ見て、なんだか私が先がよくて・・・」
歯切れの悪い回答にいまいち意味がピンとこない。
「つまりどういうことだ?」
「だから!司には私のチョコから食べて欲しいの!」
「なんで先がいいんだよ?」
チョコってそんなに賞味期限が短いものじゃないよな?
「だって、それは!私が司の1番になりたいから!・・・あっ」
瑞希はそう言うと焦ったように口を手で覆いかぶせた。
「えっ・・・?1番って・・・」
それって、俺の勘違いじゃなければ、取れる意味は限られてくるわけで。
つまりは・・・
「そうだよ!私は司の・・・」
色々吹っ切れた顔でそこまで言ったのに急に瑞希の言葉が止まった。
そして、瑞希の視線は俺の手元にあるチョコに向いていた。
「あれ?なんで希ちゃんのチョコそんなにスペース空いてるの?」
その言葉にさっきまでの熱いような勢いはなくて、冷静で少し冷たさを感じた。
あ、やばい。
元から無かったと嘘をつくには不自然すぎる空間だし、それ以外の言い訳は思いつかなかった。
「・・・実は、希から貰ったときにすぐちょっと食べちゃって・・・」
「・・・へっ?じゃあ私のさっきの話は意味がなかったってこと?」
急に瑞希がぷるぷると震えだして、今にも爆発しそうな感じだった。
「い、いや!意味はあったって!お昼のことはノーカウント!だから、これから食べる瑞希のが1番最初だから!」
「司のバカぁー!!!なんで先食べちゃうの!!!?」
焦って言い訳をしてみたが、もう限界寸前の瑞希を止めることは出来なかった。
「だって、しょうがなかったんだって!」
「しょうがないってなに!? 私恥かいただけじゃん!!!」
必死の形相で追っかけてくる瑞希に机の周りをぐるぐるして俺は必死に逃げることしか出来なかった。
人生初のたくさんチョコを貰えたバレンタインデー当日は最後の最後で波乱を迎えた。
157話も読んでいただきありがとうございます。
Happy New Year!あけましておめでとうございます。
凄く遅い新年の挨拶です。(更新空いてしまって大変申し訳ありませんでした)
更新が空いてしまった分、これから少し頻度上げて取り戻そうと思います。
本年もこの作品をよろしくお願いいたします。




