とりあえず
日曜日に投稿予定だったのですが、遅くなってしまい申し訳ございませんでした。(40分程間に合いませんでした)
「そんなこと眼中になかった」
「だって、他に怪しいやつもいなかったし、そんな中で俺が美琴姉の弟だって知ったら普通思いつくだろ」
「ああ、確かに言われればそんな気がしてきた」
半分諦めてたから全然考えてなかった。
湊が美琴先輩の弟だという事実を知ってはしゃいでたのが恥ずかしくなってきた。
「忘れてた、司ってポンコツなんだった」
「誰がポンコツだ」
だって瑞希も気づいてなかったし、俺が悪いわけじゃないし、でもさっき遥紀はなんか俺に言いたそうだったかも・・・
遥紀はこのことに気づいたってこと?
じゃあ、俺と瑞希がポンコツってことになるじゃん!違うから!遥紀が特別鋭いだけだから!
でもまぁ・・・
***
司に苗字がバレたことに動揺しすぎて、つい口が滑った。気づいていない可能性を考慮するべきだった。
「ま、まぁいいや。ここまで分かったのなら、どうせ俺から言わなくたってどこかでバレてただろうし。それで?」
あえて、強気で司に問いかけてみる。司が俺のことを嫌いになれるように。
俺に聞きたいこといっぱいあるだろう。
なんでこんなことをしたのか? なんで黙ってたのか? いつから知っていたのか?
司は何から聞いてくるんだ?
そして、俺を責めるだろう。それは覚悟している。それだけのものをやった自覚はある。
さぁ来い。
その瞬間、朝のHRの始まりを予告する鐘が鳴った。
「あ、予鈴なっちゃった。教室戻ろっか」
「!? え?」
俺の驚き交じりの言葉は司の足を止めることなく、ゆっくりとした足取りで教室に戻って行ってしまう。
まだ本鈴まではあと5分ある。時間がないとはいえ、ずっと気になっていたであろうことを何一つ聞かないなんて。
司次第では、HRなんてそっちのけで質問攻めに遭うことだって想定していた。
あまりにもあっけない展開に言葉が出ずに廊下に1人になった後、俺もゆっくりと教室に戻ることにした。
***
いやまぁ、聞きたいことはいっぱいあったけどさ、いざ噂を広めたのが、湊だって分かって、何から聞こうかなって考えたらさ、意外となにも出てこなくて、戻ってきてしまった。
俺達の様子を見て、瑞希は一足先に教室に戻っていたけど、俺が教室に戻ってくると、どうしたどうした?なんで何も聞かずに戻ってきた? みたいな感じの顔でめっちゃチラチラ見てくる。
そして、本鈴がなるギリギリで湊が戻ってきて、どうしていいか分からない表情で席に座る。
両方、隣の席なだけあって、すごく気まずい。
これから1時間目が始まって、授業中はずっと隣にいるから、1日中湊の方は向けない。でも瑞希の方向も向けないし、前の黒板しか向く方向がない。優等生の1日が始まった。(それが普通)
***
そして、いつもの何倍にも感じた学校も放課後になった。
その間、休み時間やらなにやらで湊に話を聞く時間はあるにはあったが、結局その話はしなかった。
「うし、じゃあ遥紀帰るか」
「おい、いいのか?帰って」
「まぁな」
「ちょっと、司・・・」
「ねぇ湊君、このあと最近できたカフェに行かない?」
「いや、私達とカラオケ行くでしょ?」
人気者は大変だな。
断るのに精いっぱいでとてもこちらに構っている暇じゃないっぽいので、俺達は自宅に帰ることにした。
「おい、遥紀。なんでこっち来てるんだよ。お前の家あっちだろ」
いつもなら別れを告げる分かれ道でも、今日はさも当然のように遥紀は俺の方についてきた。
「今日は司の家に遊びに行くので」
「なんでだよ、そんな話してなかっただろ」
「だって、今日は帰ってもしばらくは涼風さん帰ってこないんでしょ?」
「そうだな」
瑞希は部活なので、19時前まで帰ってこない。
このまま家に帰ったとすると3時間ほどは俺1人になる計算だ。
「この状態で司が1人になったらどうせ碌なことにならないから、今日は涼風さんが帰ってくるまで、遊んでてやるよ」
「そんなことは・・・・・・ありがとう」
そんなことないと言うつもりが、いらんことに悩む未来が見えてしまって、お礼を言うしかなかった。
「いいってことよ、前から司の家にある格ゲーしたいと思ってたんだよ。俺強くなってっからリベンジだ」
「するのはいいけど、リベンジは叶わないよ」
そんなこんな言いながら、マンションに入ろうとしたとき、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
それは、見知った声だったが、この人のこんな大きな声は聞いたことがなかった。
「美琴先輩!?・・・湊も」
息も絶え絶えになっている姉弟が俺の前に現れた。
「さっき、湊から全部聞いて!司君には謝らないといけないと思って!」
「いや、美琴先輩はこの件に関して何もないですから!」
むしろ、巻き込んでしまって申し訳ないという謝罪をこちらがしなければいけないほどだ。
「えーっと・・・」
急いで来て、まだ言葉がまとまっていないのか、次言う言葉に美琴先輩は少し困っていた。
俺もなんとなくこの空気に耐えかねて、そして何とか一旦場を整えたくて、口を開いた。
「・・・とりあえず、俺ん家上がりません?」
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