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世森先輩

「今回も結局は空振りか~」


 新聞部にカチコミに行った結果は、犯人は新聞部とは別の人物ということだけでそれ以外はまた振り出しに戻ってしまった。


「というか!さっきのあれなんだよ!何で2人して助けなかったんだよ!?」


 俺達仲間だと思ってたのに俺が攻められだしたら知らんぷりしやがって。


「いや~まぁあれはちょっと気になったと言いますか・・・」

「気になった?」


 遥紀が少し気まずそうに答えるが、いまいちピンとこない。


「そうだよ!私それについて聞いてなかったんですけど!」


 考え込む俺に瑞希が勢いよく喋り出した。


「瑞希まで、何のことだよ?」

「内田さん言ってたじゃん!なんで司はあの日世森先輩と一緒にいたの!?それも家まで行くなんて!」


「あ~そのことか」


 さっきは内田さんの剣幕に押されて、聞かれていたことをすっかり忘れていた。


 あの時は結局、新聞部の顧問の先生が来たタイミングで内田さんに隙が出来たので、その瞬間脱出したため、その質問には答えずに終わったんだった。


「あれは今回の一件で俺がこれからどうしようかとちょっと悩んでたら美琴先輩が相談に乗ってくれただけだ。相談に乗ってもらってるんだから送るくらいはしなくちゃなって思っただけで・・・」


 俺があの時のことを包み隠さず言っているのにも関わらずに瑞希はなんだか懐疑心の含んだ視線でこちらを見ている。


「ふ~~~ん、本当にそれだけ?」

「本当にそれだけ・・・だよ」


『ほんとにぃー?司君の思いが止まらなくてつい告白しちゃうかも』

『・・・ないですよ』

『まあ、そんなこと私がさせないけどね』

『どういうことですか?』


 あのやり取りが一瞬頭に浮かんできて言葉に詰まってしまった。


 結局最後まで美琴先輩の意図は分からずじまいだったが。


 瑞希の方に視線を向け直すと、さっきより何倍にも増した懐疑心がこちらを見ていた。


「謎の空白がありました。これは確定で黒ですね」

「おい、ちょっと待て。さっきのは違うことを考えただけで、本当に何もないんだってば」


「嘘つきー!私という超絶美少女がいながらも先輩の家にのこのこ付いていくなんてやっぱり浮気だ!あの新聞は合ってたんだ!」

「合ってないから!美琴先輩とは送って行っただけだし、瑞希とは付き合ってないからそもそも浮気じゃない!」


 そうやって、俺と瑞希はぎゃーぎゃーと言い合いをしていると、遥紀は諦観したような目つきで俺たちを見た。


「・・・まぁまぁ、公共の場で夫婦漫才は辞めなって」


「「夫婦じゃない!!!」」


***


 あの事件というには最近俺の周りでありえないくらい沢山の事件が起きているけれど、俺の浮気の新聞が出たあの騒動から、早1週間が経過した。


 相変わらずクラスの男子の目は嫉妬たっぷりというか殺気たっぷりで、女子からはついこの前まで話しかけてくれてたのに、また最初の頃に戻ったように一線を引かれた気がする。


 でも、俺は一旦あの事件について考えることを辞めた。


 犯人については怪しい人物すらも出ないし、あの記事については浮気はしていないけれど、それ以外は事実っちゃ事実。


 人の噂も七十五日と言うくらいなので、こっちが気にしていたら負けな気がする。


 幸いそんな俺にも、学校で話し掛けてくれる黒瀬遥紀や湊という頼りがいのある人物もいる。


 このままこのスタンスを貫いていけば、気づいた頃には忘れ去っているのだと。そう思うことにした。


「・・・・・・」


 昼休みになり、トイレに行こうと俺は席を立って教室を出た。


 廊下を歩いていると偶然、1枚扉の向こうで男子生徒が話しているのが聞こえてきた。


「俺さ、涼風さんの件なんだけど・・・」


 やっぱりその話題か。スルースルー。俺は何とも思ってないんだ。


「その現場見たってやつ知ってるんだよね」





「・・・・・・」


 俺は気づくとその扉にそっと耳を近づけて、1音でも逃さない体勢に入ってしまっていた。


「こら!」


 音を拾うことに集中しすぎて、俺は後ろから湊に軽くチョップされるまで接近に気づかなかった。


「気にしないって言ってたじゃん。何その姿勢は?」

「いや~これはしょうがないと言いますか。体が勝手に動いたんです」


 さっきまでの俺の態度は全部フェイクです。本当はめっちゃ気になります。


 でも、こうやって気にしないムーブをすることで犯人もつまらなくなって、また行動を起こすだろうという作戦。


 でもこれも1週間やって成果はゼロ。もう本当に諦めそうだ。


「司、もう諦めて周りにいる人に目を向けてみたら?」

「いいこと言うなぁ、湊は」


***


 せっかくいい情報が聞けると思ったのに結局は・・・

『それ鴨田のことだろ?あれはただ注目を浴びたくて言ってるだけだぞ。詳しく聞いたら矛盾まみれだったし』

『ちっ、なんだよ』


 だったし。


 今日は遥紀が部活の呼び出しとかで悔しい気持ちを抱えながらも1人で帰路に着いていた。


 歩いて自宅の方に向かっていると、残り5分くらいで家に着くくらいのところでばったり瑞希と出くわした。


「うわっ、びっくりした!司じゃん!奇遇だね、家すぐそこだし一緒に帰ろ」

「うーーん、まあいっか」


 ここら辺は生徒もほとんど通らないし、俺と瑞希に面識があるのはバレてるから一緒に家に入るところを気をつければいいかと承諾をした。


 するとその瞬間、後ろの方から元気な後輩の声が聞こえた。

142話も読んでいただきありがとうございます。

結構ボリュームが増えちゃってこのエピソードでやろうと思っていた所が出来なかったので、次話は早めに投稿したいと思います。

詳しくは言えませんが次回、必見です。

これからも応援お願いします。

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