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ルール

 涼風さんに教えてもらった住所を確認すると俺の家から2駅ほど離れた場所にあり、1度家に帰り自転車で彼女の元へと向かった。


 彼女の家であるアパートに着き、インターホンを鳴らすと小さめのボストンバッグを持った涼風さんが出てきた。


「早乙女君、おまたせ。」

「もう準備はいいの?」

「私は、家にあんまり荷物もないし、これ1つで大丈夫。」

「分かった。じゃあ持つね」


 そう言って俺は、彼女の持っているバッグをひょいと持ち上げた。


「え・・・いいよ。これからお世話になるんだしこれくらいさせて」

「そういう問題じゃない。これは俺がさせてほしいことだから」


 かっこいいことを言ったはいいものの俺は自転車で来てたため少し離れた駐輪場においてある自転車の籠にいれるだけなのだがその様子を見た彼女は、

「あははは!せっかくかっこよかったのに、全然持たないんじゃん」


 ツボに入ったらしく盛大に笑っていた。


 最近暗い顔しか見せていなかった涼風さんがこのような顔をしているのを見て、少しは彼女のためになれたのかと思い嬉しくなった。


「うっせ。そんなこと言うならもう置いてくからな」

「あ、待ってよごめんよー」


 涼風さんは今時珍しく自転車を持っていなかった。引っ越しを度々する涼風さんには自転車は荷物になるからだそうだ。


 学校には基本的には歩いて登校しているらしい。もちろん歩いていけない距離ではないが、それでも1時間弱かかる。そんな数々の苦労を学校では1ミリも見せないのだから本当に涼風さんはすごいと心の中で感服した。


 俺の家も学校から近い方ではあるのでやはり歩きとなると1時間ほどかかる。だが、彼女と話しながら歩いているとあっという間に家に到着した。


「すごい・・・」


 彼女は俺の家を見ると感嘆の声を漏らしていた。


 俺の親は少々過保護であると思っている。当初1人暮らしをしたいと言うと、反対されたが説得を繰り返しやっとのことでOKを貰えた。


 俺は普通のアパートで良かったのだが、それは親が許してくれず、安全性の高いマンションに住むことになった。そのため、1人暮らしには広い2LDKになっている。


「涼風さんはここの部屋使って」


 この部屋は年に1度ほど親が来るときに寝泊まりする部屋なので布団や机などの最低限の家具が揃っていた。


 時刻を確認すると、時刻は21:30頃だった。


「涼風さん、疲れたでしょ。先お風呂に入ってきていいよ」

「分かった。ありがとう」


 バスタオルやら着替えは持ってきたらしく、ボストンバッグごそごそと取って、お風呂場に向かった。


 もう夜も遅くなりつつあるし、お腹も減っていた。お風呂は夜ご飯の後にして、涼風さんの入浴を待つ間は夜ご飯を作ることにした。


 冷蔵庫を開けるとあまり食材は入っていなかったが、何とかあり合わせでオムライスとコンソメスープを作ることにした。


 作り始めてから30分ほどするとお風呂場の方から音がして、リビングの方に出てきた。


「もうすぐ夜ご飯できあが・・・・・・」

「?」


 言いながら彼女の方を向くとお風呂上りの彼女の姿が目に入りあまりの破壊力に言葉が止まってしまった。


「・・・るから、もう少し待ってて。髪まだ濡れてるようだけど、ドライヤーしないの?」


「家にドライヤーなくて持ってこなかったから・・・」

「そんなの家にあるやつ使っていいから」


 今の俺はお風呂上がりの姿を見て、動揺しまくっている。こんな姿を見せるわけにはいかなくて、涼風さんを洗面所に押し込んだ。


 気持ちを落ち着かせるのに2分程かかってそれから調理を再開し、10分ほど経った頃ドライヤーを終えた涼風さんがリビングへとやってきた。


 さっき1度その姿を見ているので動揺を何とか表に出すことを防ぐことができた。


 ちょうどその頃俺も調理を終えたので、お皿に盛りつけてテーブルに置いていく。


「え!これ手作り?てっきり出前か総菜とかかと思ってた」

「簡単なものしか作れないけどな」

「いただきまーす」

「いただきます」


 思えば1人暮らしをするようになって初めて料理をするようになってから人に料理を振る舞うのは初めてだ。妙に緊張してしまう。


 彼女は料理を口にしてから数秒の間嚙んだのち頬を緩ませた。


「おっいしーーー 早乙女君料理うまいんだね」

「ありがとな。そんだけ喜んでもらえるなら作った甲斐があったよ」


 それから俺らはオムライスとコンソメスープを2人して夢中になって食べた。

 食事を済ませて、お茶を2人分淹れた俺は、これからのことについて話すことにした。


「まず、ルールを言っておく」


 俺がそう言うと彼女の身体が強張ったのを感じた。


「今は家賃とかも気にする必要はない。だから今までの無茶なアルバイトとかはやめてほしい。無理ない範囲で働くこと。それが2人で生活するための唯一のルール」

「・・・それだけ?」


 彼女はやけにぽかんとしていた。


「うん。え。なんか言い忘れていることあった?やっぱり男女だから俺が気付かないだけでルール作りたいよね。遠慮なくいって」

「ううん。何でもない。やっぱり早乙女君を頼ってよかった」


 なぜか褒められたのだが、その理由を聞いてもはぐらかされてしまった。


「それから今の家においてある荷物は他の親戚の家に送るとかできる?」

「送ることは連絡すれば大丈夫だと思うけど配送料とか大分高くなっちゃうんじゃない?そんなにお金持ってないから・・・」

「それは大丈夫、それは俺がお金出すよ。でも貸しとくだけだから余裕があるときに返してくれればいいから」


 人にあまり頼れない涼風さんのことだ、俺がお金を出すといっても良しとはしないだろう。だからあくまでも貸すことを強調して伝えた。


「うん。ありがとう。ぜったい返すから」


 彼女は少し迷った後了承してくれた。


「じゃあ、今日はもう遅いから詳しいことはまた明日話そう」

「うん。そうだね」

「おやすみ」

「おやすみ」


 お互いおやすみを言って自分の部屋へと入っていった。

14話も読んでいただきありがとうございます。

皆さんからの応援が本当に身に沁みます。誠にありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いします。


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