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蔓延

「それで、学校で涼風さんとの噂が広がっちゃって、参ってるってことなんだ」

「そうなんですよ」


 美琴先輩を家まで送っていく道中、俺は学校での出来事を全て話していた。


 別にこの悩みを解決してもらおうと思って、話をしているわけではない。


 話すだけでも結構気が楽になるってもんだな。


「でもいいんじゃない?」

「え?」


 美琴先輩から出た言葉は意外にも噂を肯定するものだった。


「別に無理に否定しなくてもいいんじゃないかな。もういっそ付き合ってるってことにしちゃえば」

「なんでですか!俺達は付き合ってるわけじゃありません」


 少し熱くなってしまった俺に対して、美琴先輩は冷静に返答をする。


「否定してるとなんか裏があるんじゃないかってみんなつつきたがるからさ。別に付き合う事自体悪いことでも何でもないじゃん。堂々と付き合ってるって言っちゃえばいいんだよ」


 別に俺は今でも白い目で見られているし、付き合っていると言ってもダメージ量はさして変わらない。


 でも瑞希は違う。悪いことでも何でもなくても、今まで積み上げてきた信頼も好感度も全てが水の泡になってしまう。


「瑞希の努力をなかったことにしたくありません。もし瑞希からその提案をされても俺のせいで、俺のためにそんな嘘はつかせられません」

「・・・うん、司君ならそう言うと思ってた。その気持ちがあればきっとすぐにこんな噂程度はみんな忘れて、いつも通りの日常が戻ってくるよ」


 美琴先輩は初めから俺の気持ちを再確認させてくれようとしていただけだった。


 なんだかそう言われると、ぐちぐち悩んでたのがバカみたいだと思った。俺の気持ちは決まっていた。そこに迷いなんかなかったし、何を気にしていたのだろうか。


「ありがとうございました。やっぱり美琴先輩に話してみて良かったです」

「やっぱりそうでしょ。これからも先輩を頼ってくれていいからね?」


「はい、また頼るかもしれません」

「うんうん」


 美琴先輩は満足そうに頷いた。


「でもこの先、涼風さんと司君が本当に付き合ったら否定しなくてもよかったなぁーってなるかもよ?」

「なりませんよ、そんなこと」


「ほんとにぃー?司君の思いが止まらなくてつい告白しちゃうかも」

「・・・ないですよ」


 俺の気持ちは置いといて、告白なんかして瑞希が断った場合、一緒に住んでいるのに顔を合わせづらくなってしまう。


 告白を忘れて元の関係に戻ることはおそらくできない。


 この心地の良い関係を手放すなんて考えられない。告白なんて後のことを考えたら出来るわけがない。


 そんなこと分かり切っていると自負していたはずなのに一瞬だけ言葉に詰まった。


 ないと分かっていながらも想像してしまった。


「まあ、そんなこと私がさせないけどね」

「どういうことですか?」


 俺が暴走しそうになったら、引っ叩いてでも止めてくれるってことか?


「おしえなーい」


 そんなことを話していると、美琴先輩のマンションの前まで来ていた。


 俺はマンションの入口まで美琴先輩を送った後、自分の家に帰った。


***


「なぁ司、今日の学校新聞見たか?」

「ん?見てないな」


 資生高校には新聞部があり、不定期的に学校新聞として、廊下などに新聞が張り出される。


 内容は基本的には文化祭や体育祭、入学式や卒業式などであるが、時たまスクープ的なものもある。


「家庭科の先生と体育の先生が付き合ってるんだって」

「まじか」


 今回はどうやらスクープ的な内容だったらしい。


「司も新聞部に頼んで涼風さんに関する噂はデマですって載せてもらえば?」

「証拠もないのに、どうやって載せてもらうんだよ」


 付き合っている証明は簡単に出来るけれど、付き合っていない証明はそうそう簡単にできるものではない。


「それもそっか」


 俺も休み時間に廊下に張り出されていた新聞をふと見てみると、遥紀が言っていた内容が詳しく載っていた。


 そこには先生2人が一緒に手を繋いで帰っている写真が一緒に掲載されていた。


 それにしてもこんな写真どうやって撮ったのだろう。たまたま偶然新聞部が居合わせたということだろうか。


 よくこんなことまで調べているなと感心する気持ちもある一方、少し過激ではないかと思う一面もあった。


***


 それから数日が過ぎていき、なんとなく俺を見る目も少しは和らいできたかと実感する頃、大きな問題は起きた。


 俺はこの日も普通に登校をすると、新聞の前に生徒が大勢いた。


 また新聞部が大きなスクープでも載せたのだろう、とか考えながらその横を通り過ぎようとしたところ、その新聞を見ていた生徒は俺に気づくと一斉に顔をこちらに向けた。


 その異様な光景に俺は目をそらすようにみんなが見ていた新聞に目を向けた。


 そこには大きな見出しで衝撃的な文言が書いてあった。


『学校1の美女がまさか浮気される!?』


 そこには噂になっていた俺と瑞希が同じマンションに入って行く写真に加えて、この前の美琴先輩を送ったときの一緒に入口にいる写真が載せられていた。

139話も読んでいただきありがとうございます。

遂に司の関係が学校中に知られる事態に。

この困難に司達はどう立ち向かっていくのか、ご期待ください。

これからも応援よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
前半美琴先輩が可愛いなぁって微笑んでたら後半で急展開でびっくり仰天…本当に続きが楽しみすぎる 更新お疲れ様です!これからも応援してます
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