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「それで!どうなんですか?」


 あのままあの場所で話されると、せっかく落ち着かせた俺の評判が再燃しかねないので、校舎裏の人気のない所に場所を移した。


「こんな人気のない場所に連れてくるなんて、まさか真実を知った私に乱暴しようと・・・」

「しないから!あと、俺と涼風さんが付き合ってるって言う噂はデマだから!」


「ほんとですか?」

「本当」


 俺は一個下の齋藤さんのあまりの迫力に気づくと正座をしていた。


「あ、いたいた」


 すると、見覚えのある声が聞こえた。


「鈴ちゃんと司せんぱ・・・なんで正座なんてしてるんですか!?」

「希、なんでここに?」


「さっき、鈴ちゃんに呼ばれたからです。司先輩に乱暴されそうだから来てって」


 人聞きの悪いことを。


「それで、なんで司先輩は正座してるんですか?まさか本当に乱暴しようとして、お説教されていたんですか?」


 乱暴しようとするのになんでお説教なんか聞いてるんだよ。


「いや、なんか迫力に負けてと言いますか・・・」


「迫力?」

「ねぇ、水ちゃん」


「は、はい」


 希もその一声だけで、足を綺麗に畳んで、俺と同じく正座した。ほらね、


「なんだか、涼風先輩と早乙女先輩が付き合ってるって噂があるんだけど、水ちゃんはどう思う?」

「鈴ちゃんそれは、勘違いだよ!デマなんだって!司先輩がそう言ってた」


「そのことは今早乙女先輩から私も聞いた。そうじゃなくて、水ちゃんはその噂を聞いてどう思ったのってこと」


「えっと、デマで良かったなぁ~って?」

「それだけ?」


「それだけって?」

「だって水ちゃん付き合ってるんでしょ?もうちょっとあるじゃん嫉妬とか」


 齋藤さんの迫力に負けないでうまく誤魔化すんだぞ、希、


「付き合ってる?だれと?・・・・・・あっ!司先輩とね!」


 のぞみ~~~!!!


 完全に忘れてやがったな。


 まあ、嘘のデートしたのもだいぶ前だし、それから偽装工作とか何もしていなかったから忘れるのも無理はないけど。


「水ちゃん、今忘れてたよね?あれっきり早乙女先輩との恋人っぽい話全然聞かないし、もしかして・・・」


「はい、ごめんなさい!強がって、嘘ついてました!」


 耐えきれなかったのか、すぐに希が自白した。


「やっぱり!なんかおかしいと思った!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「ごめんなさい」


 俺も謝るしかなかった。


「私を騙した罪は重いよ。とりあえず水ちゃんは串刺しにするとして、早乙女先輩は・・・」


 怖っ! 今の女子高生って怒ると友達串刺しが当たり前なの?それなら俺はどうなっちゃうの?


「で、でも司先輩に彼女がいなくて良かったってのは本当だもん」


 希がぼそっとそんなことを口走る。


 齋藤さんはそれを見ると、今まで怒っていたような表情が途端に優しい顔に変わった。


「もう、冗談だよ。そんなに怒ってないよ」

「じゃあ串刺しにしない?」

「しないよ」


 本気で信じてたのかよ。希って少し天然なとこあるよな。


「でも、もう強がって嘘とかついちゃダメだからね」

「うん。約束する」


「早乙女先輩、水ちゃんのわがままに付き合ってくれて、ありがとうございました。あと、さっきは取り乱しちゃってすみませんでした」

「いやいや、誰でも友達の浮気かもと思ったら、冷静でいられなくなるから気にしないで」


 この件も一件落着かと思ったその時、希が焦ったように話しかけてきた。


「あ、あの!司先輩、さっきの言葉はその・・・あの・・・」


 さっきの言葉?ああ、俺に彼女がいなくて良かったってやつね。


「大丈夫、分かってるから。俺に彼女がいたら、付き合い悪くなるかもって心配したんだろ?そもそも彼女が出来たって、急にそっけなくなったりしないから」

「あ・・・そうですか。それなら良かったです」






「・・・水ちゃん大変だろうけど、頑張ってね」


***


「お疲れさまでした」


 今日もりらホットの勤務時間が終わり、バックヤードに戻った。


「あ、司君も上がり?」


 美琴先輩が同じくバックヤードで最後の事務作業をしていた。


「はい」

「私ももう終わるから一緒に帰ろ?」


***


「司君今日あんま元気なかったでしょ。なにかあった?」


 美琴先輩との帰り道、俺の顔を覗き込むようにして、心配そうに言った。


「分かるんですか。そんなに顔に出てましたか?」

「いや、そんな分かりやすくは出てなかったよ。私以外は分からなかったと思うよ」


 流石、美琴先輩は後輩思いのいい先輩だ。


「で、どうしたの?人生経験豊富な美琴先輩に話した方がいいかもよ?」


 俺は、あの噂のことを話すか少し迷ったが、美琴先輩の先輩力に負けたのか、打ち明けることにした。


「学校で・・・」


 そうして話始めると、意外と長くなってしまって、話の途中で俺と美琴先輩の家の分かれ道に到着してしまった。


「分かれ道まで来ちゃったね」

「はい。途中まででも聞いてもらってありがとうございました」


「いやいや、私が聞いたんだから最後まで聞くよ。司君の家まで送っていくよ」

「それはダメです。せめて俺が聞いてもらっているので、俺が美琴先輩の家まで送っていきます」


 美琴先輩は申し訳なさそうにしていたが、俺が譲らない姿勢を見せると、折れてくれて、美琴先輩の家の方角に2人で歩き出した。


 後々、この行動を悔やむとも知らずに。

138話も読んでいただきありがとうございます。

更新遅くなって申し訳ありません。

次話は早く更新します。

これからも応援よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です!久しぶりの美琴先輩が体に染みる…最後若干不穏だ…楽しみ
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