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沈黙

 瑞希のメラメラと燃える目に若干たじろぎながらも、俺は放課後に遥紀から説明されたことをそのまま瑞希に説明した。


「ふ~~~~~ん」


 もう説明は全て終わったんだが、なんだか瑞希さんの機嫌は直ってはいないようだ。


「だからさ、俺の意思じゃないんだ。機嫌直してくれよ」

「私、怒ってませんけど?」


 めっちゃ怒ってるじゃん。


「そもそも、それの何に怒ってるんだ?」


 せっかく隣の席になって俺をからかおうと思ったのに、他の女子と話していたらそれが出来ないからか?


「だから怒ってないって」

「分かった。そんなに学校で俺をからかえなくなるのが嫌なら、家で気が済むまでからかってくれていいから」


 もちろん、ただで引っかかってやるつもりはないけどな。


「そうじゃなーい!」

「じゃあなんだよ」


 瑞希は顔をうつむきながら、ボソッと言う。


「・・・呼びかた」

「呼び方?」


「あの2人司のこと司君って呼んでた」

「それは向こうがそれでいい?って言うからその流れで・・・」


 でも、それの何が引っかかってるんだ?別に名前で呼ぶくらい高校生なら割と普通な気がするが。


「仕方ないから司君は一万歩譲っていいけど、呼び捨てで司って他の子に呼ばせるのは絶対ダメだから」

「なんで?」


「なんでも!!!」


 なんだか勢いが凄くて理由は聞けなかったけど、ここは素直に聞いておいた方がいいだろう。


「でも、もう司って呼んでる遥紀と桜井さんはそのままでいい?」


 これからの新規は受け付けないとして、今更あの2人に呼び方変えてって言うのもなぁ。


「黒瀬君はいいけど・・・そっか~桜井さんがいたかぁ~」


 瑞希はそのことをすっかり忘れていたようで、う~んと頭を抱えていた。


「そうだ!」


 そのうち、何かをひらめいたようで、ジェスチャーと共に元気な声を出した。


「私が呼び方を変えればいいんだ!」

「変える?」


 これ以上呼び方のバリエーションなんてあるのか?


「そう。これからは司のことをダーリンって呼ぶことにします!!」

「おい、大丈夫か!?」


 なんでか理由は分からないけど、とにかく暴走し始めたことは分かる。


「大丈夫だもん。イギリスとかでは普通の呼び方だもん!」

「そうなのか!?」


 そうであったとしても、ここは日本だし、なんでその呼び方になったのか全く理解が出来ん!

  

「とにかくそういうことだから!私はお風呂入ってくる!」


***


「「いただきます」」


 お風呂から出てきた瑞希は時間が経ったのか、先ほどの暴走していたような感情は落ち着きを見せていた。


 でも、本当に俺のことダーリンなんて呼ぶのか?そんなバカな、ただの冗談だろ。


「そういえば、瑞希は古典のプレゼン順調か?」

「もちろん。なんてったって私が優秀過ぎるからね。逆につか・・・」


 今、普通に司って言おうとしたのにさっきのことを思いだして、言葉に詰まってる。まさか本当に言うつもりか!?


「ダー・・・」

「ダー?」


 恥ずかしくてしょうがないのに、自分で言いだした手前、引っ込めることも出来なくなってるな。


「もちろん。なんてったって私が優秀過ぎるからね。逆にダー◇#はどうなの?」

「ん?」


 なぜか始めから言い直したし、肝心のダーリンの部分は早口すぎて後半何言ってるか聞き取れない。


「だから!もちろん。なんてったって私が優秀過ぎるからね。逆に☆♯♭●はどうなの?」


 もっと早くなってるし。まるっきり聞こえなくなった。


 瑞希から言い出したんだし、ちょっと煽ってみるか。


「俺のことダーリンって呼ぶんでしょ?」

「いや・・・うん・・・そうなんだけど」


「ほら、早くー。瑞希から言い出したんじゃん」

「そ、そうだけど」


「ほら~」


 やっぱり恥ずかしくて言えないだろ。仕方ないからここらで助け舟でも出してやるか。


「これに懲りたら・・・」

「だ、だーりん」


「「・・・・・・」」


 一瞬にして2人の間に沈黙が生まれた。

 

 1人は自分で言ったことに恥ずかしがって顔を真っ赤にしているやつ。


 1人は全然構えてなくて、きっと構えててもこれの攻撃力が高すぎて、致命的なダメージを受けているやつ。


「・・・普通に司呼びに戻してもらっていいですか?」

「・・・うん、そうだね。戻した方がいいね」


「「・・・・・・」」


***


 あー昨日は本当に心臓に悪かった。瑞希が折れずにあのまま続けてたらどうなっていたことか。


 切り替えて行こう。今日を乗り越えれば、明日は日曜で休みだし、いち早く噂を消すためにも!


 そんなことを考えながら登校していると、学校の正門に齋藤さんが誰かを待つように立っていた。


 齋藤さんは希の1番の友達だから、きっと希を待っているのだろう。でも、同じクラスだし教室で待っていればいいのに。


 俺は知らん顔をしながら、斎藤さんの前を素通りしようとする。


「ちょっと待ってください!」


 俺は制服の裾を僅かな力で引っ張られながら、引き留められた。


「斎藤さん、どうしたの?」

「どうしたの?じゃないです!涼風先輩と付き合ってるんですか!?」


「いや、それは・・・」

「先輩は水ちゃんと付き合ってるのになんで!」


 あ、やっばい。


 めっちゃ人目あるし、やばい予感しかしない。

137話も読んでいただきありがとうございます。

この編では過去のあれがここに来て・・・!ってことがこの先もちょくちょくあります。ご期待ください!

これからも応援よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
新婚夫婦ですか?!新婚夫婦ですよね!!!尊い…最後にやばい展開が…!これからが楽しみ。更新お疲れ様です!応援してます
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