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いい流れ

 はぁーあ、相変わらず教室に入った時の男子の『あいつ、戻ってきたぞ』的な視線は辛いな。


 瑞希はもうすでに教室にいて、先ほど約束していた女子と仲良さそうにお昼を食べていた。


 俺はため息交じりの息を吐きながら自分の席に座る。


 迫る昼休みのタイムリミットに若干焦りを覚えながら、俺も昼飯を食べようと鞄を漁る。


「ねぇ、早乙女君」

「うん?」


 見覚えのない声が聞こえて、返事と共に顔を上げた。


「早乙女君ってお昼これから?」

「うん、まぁそうだけど・・・」


 俺に話掛けたのは女子2人組で名前はえっとー、確か大川さんと植本さんだったはず。


 女子のクラスメイトの名前覚えてるなんて流石、俺!(※当たり前)


 でも喋った記憶なんてないし、何の用事だ?まさか俺に直接文句を言うつもりなのか?


「良かったら私達と一緒に食べない?」

「え・・・?」


 突然のお誘いに驚いて固まってしまった。


 一緒にお昼を食べて隙を見て、毒でも入れるつもりか?


「だめかな?」

「いや、遥紀と食べる予定で・・・」


「じゃあ黒瀬君も一緒に4人でならいいかな?」

「遥紀がいいって言うなら」


 なにがなんだか分からなかったが、ここで断ってしまうとまるで嫌ってるみたいになるし、ここまで言われると断れる選択肢はなかった。


 後は遥紀が上手く断ってくれたらありがたいんだけど・・・


「もちろん、いいよ。4人で食べよっか」

「「やったー!」」


 おい遥紀、絶対わざとやってるだろ!


***


「早乙女君って下の名前司って言うんだよね?これから司君って呼んでいい?」

「あ・・・うん。いいよ」


 それからわけのわからぬまま、4人の食事は進んでいく。俺は大川さんと植本さんからの質問攻めにあってるし。


 さっきから救援信号を出しているのだが、遥紀は一向にそんな素振りを見せずに俺が困りながらなんとか返答していく様子をニコニコしながら見ている。


 俺、遥紀を怒らせるような真似したっけ?心当たりはいっぱいあるけど。


「それでさ、司君はアルバイトしてるんだよね?」

「えっ!?それをどこで?」


 まさか、りらホットにいるところを見られたとか!? 


「えっー、司君が言ったんじゃん。文化祭の打ち上げの時にバイトしてるって」

「あ、そうだった」


 思い返せば、そんなこともあったような。


 喋ったことバリバリあるじゃん。流石、俺!なんて浮かれてる場合じゃなかった。


「なんのバイトしてるの?」

「それは・・・」


「そろそろ昼休み終わる時間だから早めに戻った方がいいよ。ほら次、英語で加島先生だから」

「それもそうだね、じゃあまたね。司君、黒瀬君」

 

 最後の最後で遥紀が助けてくれたおかげで何とかボロを出さずに乗り切ることが出来た。


***


「で、あれは何だったんだ?」


 その後は特に目立った出来事があったわけではなく、放課後に突入したので、遥紀に今日のお昼のことについて問いただしてみる。


「これはいい流れが来てるんだよ」

「何のことだ?」


 俺には全くと言っていいほどいい流れだとは思えないが。


「女子との交流なんて1ミリもしてこなかった司だから、今まで女子は話しかけずらかったんだよ。だけど、涼風さんと交流があることを知って、話しかけてもいい人だと思ったのか、それとも焦ったのか、話しかけてきたってことだな」

「それだと、あの2人は前から俺に興味があったってことにならないか?」


「あの2人だけじゃなくて、もっといると思うぞ」

「いやいや、そんな冗談には騙されないから」


「司は超鈍感だから分からないと思うけど、文化祭の後くらいからクラスでの司の評価は女子の間でだいぶ高くなってたぞ」

「マジで?」


「大マジ。それにちょっと身なり良くなったし。それも相まってさ」


 確かに1年の時に比べて、瑞希と一緒に暮らすようになってからは、少しばかり身なりにも気を遣うようになった。


「まぁ、一旦それは置いといて、それの何がいい流れなんだ?」


 今のところ原因が増えて、もっと視線が厳しくなるだけだと思うのだが。


「司は異性で涼風さんだけが仲がいいってのも問題なんだよ。そのせいでより特別感が出てる。異性の友達が増えれば『ああ、涼風さんも友達の1人なだけか』って思われてだいぶ今の状況も良くなるはずだ」

「なるほど」


「そもそも今回は男子からの嫉妬がえぐいだけで、女子からはそこまで向けられていないだろ?」


 確かに、いつも感じていたのは男子から視線だった。瑞希は相当女子のファンもいるはずなのに。


「というわけで、今の状況をいち早く脱したいならクラスの女子ともっと仲良くなることだな。それじゃ」

「あ、ちょっと」


 遥紀はそれだけ言って、スタスタと自分の家の方向に帰っていく。


 解決法は分かったが、はいそうですかと即実行するわけにもいかないんだよなぁー


***


 夜ご飯の支度をしていると、玄関から音がして、部活を終えた瑞希が帰ってきたらしい。


「おかえり」

「・・・・・・ただいま」


 いつもは元気過ぎるくらいなのに、今日は聞き取れるかギリギリの声で瑞希が返事をする。


 空気を含ませて、ぷくーっと顔を膨らませている。何かご立腹なことがあったのだろうか。


「どうした?部活でなんかあったのか?」

「・・・あの2人なに?」


「あの2人?」

「植本さんと大川さん。楽しそうにお昼なんか食べちゃって」


 瑞希の目にはメラメラと炎が宿っているのが感じられた。

136話も読んでいただきありがとうございます。

まだまだこの編は色んな展開が控えてます!

次話はそれほどお待たせすることなく更新いたします。

これからも応援よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です!瑞希ちゃん嫉妬してる所見て永遠とニマニマしてます!本格的に暑くなってきたので体調にはお気を付けて!
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