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間接

 俺はずっと握られて離されることのなかった手を顔の近くに寄せて、そっと唇を手の甲に一瞬だけ、当てた。


「ほら、行くぞ!」

「え、あ・・・うん・・・」


 俺は周りに見られている羞恥心から一秒でも早くこの場から立ち去る。


 瑞希はさっきまではあんなに騒いでたのに俺の動作以降ぴたりと鳴りやんだ。


 瑞希はさっきの行動が信じられないかのような、顔をしている。


 全く、自分から要求したくせに。


「あ、司先輩!いたいた!」


 結構離れたはずなのに、思ったよりも時間が経っていたらしく、遥紀達は意外と近くまで移動してきていて、駆け出して数十秒もすると会うことが出来た。


「急にいなくなってすまんな」


「ほんとですよ!なんか長くなかったですか?」

「なかなかトイレの場所見つけられなくてさ、迷ってたんだよ。ね、涼風さん?」


「はい、私の用事に付き合わせてしまってすみません」


 俺があんなことをしたのは瑞希のわがままが発動してたってのもあるけど、一番はインパクトのあることをして瑞希の頭を冷やすことだった。


 良かった。


 あんなことまでして結局瑞希の酔いが覚めずにこの場でバレたりなんてしたら、恥のかき損になるところだった。


 さっきの一言だけで瑞希の酔いが覚めて、優等生モードに戻ったのが分かった。


「あ、いやいや全然大丈夫だよ。じゃあ行こっか」


 それからも瑞希は酔いなんて一ミリも見せずに気丈に2人には振る舞った。


「あ、私ホットドッグ食べたい」


 時間もいい感じに昼時になって、しっかり朝ごはんを食べた俺達も小腹がすいてきた頃になった。


「俺も隣のポテトでも買おうかな」

「じゃあ私はそのまた隣で飲み物買ってきてます!」


 俺達は近くの屋台で各々買いたいものを買いに行った。


 瑞希は俺に着いてきて、俺とは違うコンソメ味のポテトを買っていた。


 特に座って食べられる場所もないし、食べるのにそこまで苦労しない食べ物だったので、買った後は歩きながら買ったものを食べることにした。


「あ、靴紐がほどけちゃいました」

「水上さん、俺飲み物・・・」

「ありがとうございます」


「涼風さん、そういうジャンクな食べ物食べるんだ。ちょっと意外」

「私だってたまにはこういう食べ物を食べますよ」

「ごめんごめん、確かにポテトくらい誰でも食べるよね」


 一瞬瑞希がまたボロを出したかと思って焦ったが、多少イメージと違ったってポテトを食べるくらいなんともないよな。


 あーなんか変に焦ったら、のど乾いた。


 隣にいた遥紀を見てみると、片手には電球の形の飲み物が入った可愛いボトルを持っていた。


「ちょっと貰うわ」

「あ・・・」


 俺は遥紀が持っていたボトルに刺さっていたストローを咥えて飲み物を吸う。


 いつも俺が買ったペットボトルやら水筒の中を勝手に飲まれているから、これくらいは許してくれ。


 遥紀の返答は待たずに口に飲み物を運んだ。


「美味しかった、ありがとう」


 飲み終わって顔を上げると、やっちゃったなという顔をしている遥紀とその奥でぷるぷると震えている希の姿があった。


「それ、水上さんの・・・」

「あ・・・」


 案の定、やらかし過ぎていて声が出なかった。


「希、ごめん!」

「そ、そんな申し訳なさそうな顔しないでください」


 そう言って、希は遥紀に持ってもらっていた飲み物を受け取ってぱくっとストローを咥えた。


「わ、私だってもう高校生ですよ?か、間接き、キ、くらいで動じたりしませんから!」


 その割には間接キスは言えてないけどね。いい子なんだから。


「あ、そうだよね、高校生なんだからそんなの気にする年齢じゃないよな。すまんすまん、俺が神経質すぎたわ」

「そ、そうです!そうです!」


 俺が気を遣わないように必死に誤魔化してくれていることを感謝しながら、そのことには気づかないふりをした。


「私はそんなの気にしてないです!・・・だ、だから、飲みたかったら・・・もう1回飲んでくれても・・・いいんですよ?」

「っ・・・!」


 気にしていないのをアピールするために、じゃあもう1回とは流石に言えなかったが、自分で言って恥ずかしかったのか、俺のために羞恥心でいっぱいになった顔をなるべく傷つけないようにに言葉を選んで言った。


「じゃあ、またのどが乾いたら頼むかも」

「はい!待ってます!」


 2人の間に何とも言えない空気感が漂った。


「ねえ、早乙女君こっちの味も食べたいって言ってたよね?どうぞ?」

「ん?そんなこと・・・」


 その静寂を破ったのは瑞希の声だった。


 瑞希の顔を見るとなんだか迫力が凄かったのでここは素直に乗ることにした。


「ああ、そうなんだよ。コンソメ味も食べたいと思っててさ。ありがとう」


 俺が瑞希の持っているポテトの袋に手を伸ばそうとすると、先に瑞希が袋に手を入れて、ポテトを手に取って、手渡してきた。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとう」


 瑞希は俺がポテトを受け取ると、その手に付いた粉をペロッと舐めた。


 手渡しする必要あったか!?

122話も読んでいただきありがとうございます。

お待たせしました!これまで溜めてきた分今日はこれだけじゃないですよ!

これからも応援よろしくお願いします。

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