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酔い

「おい!しっかりしろ!」

「ん?私はいっつも~しっかりしてるけど~?」


 あ、全然しっかりしていない。声だけで完全に分かる。


「えっ!水上さん上手くない!?」

「ふっふん!私これだけは小さいころからやってきてるんで上手いんです!」


 少し前を見てみれば遥紀と女子たちがキャッキャしながらスーパーボールを掬っている。


 後ろでも振り返られたら、いつもしゃきっとしている瑞希が今はへにょにょになっているため、秒でバレるだろう。


「もうすぐスーパーボールすくい終わるぞ!いつもの優等生な瑞希に戻れ!」

「なーに言ってるの?私はいつでも優等生だよ?」


 どこがだよ!家ではだらだらしてるところしか見てないっつーの!


「あっ!ポイが破けちゃいました」

「私も!」


 3人はいよいよ本格的にスーパーボールすくいも終わりそうになっていた。


 こっち(俺だけ)は大ピンチなのに少し向こうはとんでもなく、楽しそうに穏やかな雰囲気が流れていた。


「ちょっとこっちに!」


 俺は瑞希の手を引っ張って、今いる場所から少し離れた場所へ駆け出す。


「見てください!司先輩!私こんなに取れまし・・・あれ?」

「どうしたの?」

「司先輩が見当たらないんです」

「ほんとだ。近くの屋台でも行ってるのか?」


 すると俺のスマホに司からメッセージが届いた。


『すまん。瑞希がちょっと緊急事態で少し離れる』


「あ~司達はちょっとトイレだって。先行ってていいって」

「分かりました」


***


 ふぅー、ここまで来れば希と鈴賀に見つかることはないだろう。


 先ほどの屋台から離れたとこの休憩所に腰を掛けた。


 それにしてもこいつ、アルコールに弱すぎだろ。甘酒一杯でここまでなるなんて将来絶対に普通のお酒は飲ませられないな。


 簡単に持ち帰られてしまう。


「はい、水でも飲んで早く正気に戻れ」

「うん?ありがと~」


 さっきから少し気になっているのだが、もちろんこいつを連れ出すために手を握ったのは俺だが、休憩所について、手を放そうとしても、瑞希側から放してくれる気配がなく、手は依然として握られたままになっていることだ。


「あの~瑞希さん?もう移動は済んだので、手を放してもいいんですよ?」

「うん。分かってるよ?」


 それなのに俺が手を振り払おうとすると、より握る力を強くして、ちょっと睨んでくる。


 言葉と行動が真反対過ぎる。


 水を飲んだのにも関わらず瑞希の意識はふわふわしたままだ。


「ねぇ!」

「はい!」


 突然瑞希が大きな声を出して、俺にぴったりとくっついてきた。


 俺は驚きで素っ頓狂な声を上げて返事をしてしまった。


「司は~!あの子たちとどういう関係なの!」

「えっ・・・友達・・・?」


「嘘つき!」

「おいおい、どうしたんだよ」


「あんなかわいい子達と一緒にいてただの友達なんて信じられない!浮気だ!浮気者!」

「ちょ!周り人いるから!」


 遥紀達から離れたとはいえ、周りには通行人がうろちょろしてる。


 瑞希の容姿と浴衣のせいで注目を浴びてるってのに、そんな子が浮気者とか言うから周りの視線が痛い。


「だいたい付き合ってもないのに浮気とか出来ないから!」

「えっ?私達付き合ってないの?」

「ああ、そうだろ」


 いったい、誰と勘違いしているんだ?


 瑞希は酔うとあることないこと言うようになる。酔った瑞希の言葉はとんでもなく当てにならない。


「フーン、そんなこと言うなら、じゃあもう口ききません」

「おい、勘弁してくれ」


 俺が白旗を上げても瑞希は許してくれることなく、意地を張っている。


「なぁーもうそろ戻らないと不審がられるからさ。一緒に戻ろうぜ、な?」

「・・・・・・」


「機嫌直してくれよ」

「・・・どうしても許して欲しい?」


 ここまで来たら瑞希の思う通りにやってあげた方が早いだろうと思い、瑞希の茶番に付き合ってあげることにした。


「はい、許して欲しいです」

「ふーん、そうだよね!そうだよね!」


 俺が下手に出るとあからさまに調子に乗り始めた。


「だから、いつもの瑞希に戻って、あいつらの元に行くぞ」

「許して欲しいならこれをやったら許してあげる」


「これって?」

「ちゅー」

「置いていきます」


 落ち着け。瑞希は別に普段から俺とキスがしたいわけじゃなくて、酔ってるからとんでもないことを言っているだけだ。


「ねぇー!許して欲しいんじゃないの!?」

「それは欲しいけど・・・」


「じゃあ、早くちゅー!」


 瑞希が大声で言うもんだから、周りの視線が再度こちらに向く。


 そして今回は発言の内容のせいで、憎悪の視線がえぐい。


『あんなに可愛い子が言ってるんだから早くしろよ』『なに渋ってるんだよ』的な怨念が漂っている。


 こんなに人目があるところでなんて絶対にしたくないが、それをしないと瑞希が正気に戻ってくれそうもない。


 うーん。俺の中で葛藤が廻ったあと、意を決した。


「しょーがないな!」

121話も読んでいただきありがとうございます。

私事で大変申し訳ないのですが、昨日からパソコンが激調子悪く、修理に出したため、スマホから投稿しております。その関係上、予定していた投稿スケジュールで投稿できない可能性があります。ですがあと7日間で7話、これは絶対に絶対に絶対にお約束させていただきます。(ご迷惑をおかけした分、追加で数話投稿します)

これからも応援よろしくお願いします。

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