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激動

「そんなわけだから戻って来い」

「・・・できない」


「えっ?」


「だって、今回は私の勘違いだったけど、これからは分からないじゃん」

「それって・・・」


「司にもし将来お付き合いする人が出来たとしたら、今回みたいに私が出て行かなくなちゃでしょ?」

「そんなことしなくていい」


「司は優しいからそう言ってくれるよね。でもね、そんな優しい司だから、そもそも好きな人が出来たとしても私に遠慮しちゃうでしょ?私のせいで司が幸せになれないなんて、私は耐えきれないから・・・」


「大丈夫だ。そんなことにはならない」

「なんでよ!分かんないじゃん」


 分かるんだよ!だって・・・!


「だって、俺はお前のことが・・・!」


 その刹那、玄関の扉が開く音がして、真由美さんたちが帰ってきた。


「「・・・・・・」」

「あら、仲直りしたみたいで良かったわね」


 めちゃくちゃ気まずい空気感だったのに、どこを見たらそんな感想が出るんだ。


「司君、今日は泊まっていくでしょ?」

「え、いや、今日はホテルにでも・・・」


 まだ、予約はしていないが今から探せば1つくらいは空きはあるだろう。


「もう何度も瑞希とは屋根の下で一緒に寝てるんだから、今更渋ることもないでしょう」

「・・・はい、お世話になります」


「決定ね。これから夕飯作るから待ってて頂戴」

「はい」


 流れるままに宿泊が決まってしまった。


 そして先ほど口から出かけた言葉は再び喉の奥に戻ってしまった。


 それからは瑞希の料理上手の師匠である真由美さんの料理に舌鼓を打った。


***


「司、さっきのこと・・・」


 夕飯も食べ終わり、誰もいない寝室で眠りにつこうとしていると、扉が開いて瑞希が入ってきた。


「えっ!さっきのこと!?」

「うん。お母さんが帰ってくる前に言いかけてたこと・・・何・・・?」


「え、えっとー。俺は高校卒業まで彼女作るつもりはないから、安心して戻ってこいって言おうとしたんだよ」


 あの言葉がもう一度戻ってくることはなかった。


「そうなの?彼女作る気ないの?」

「彼女作る気があったら、桜井さんの告白受けてるだろ?」


「た、確かに。あんなに可愛い子の告白を受けないなんて、本当に男の子なのかなって思ったけど、そう言うことだったか」


 それは言い過ぎだろ。


 瑞希は俺に聞こえない声量でごにょごにょ口を動かす。


「じゃあ、その期間私が近くにいれば、大チャンスかも!?」

「なんだって?」


「教えない!分かった。司の家にもう一回お世話になる」

「おう。それは良かった」


 今俺から告白したとしても、それは瑞希を家に戻す口実に聞こえてしまうかもしれなかった。


 そうやって告白をしなかった自分を言い聞かせた。


「あっ!」

「今度はどうした!?」


「・・・どうしよう」


 瑞希の顔はとんでもなく焦った顔をしていた。


「私、引っ越し先のアパート決めちゃった・・・もう申し込んじゃった・・・」


「早すぎないか!?」


 まだ瑞希が出て行ってから3日位しか経っていないぞ!?


「だって、だって、学校ももう少しで始まるし!手続きとか時間かかると思ったから!」

「契約したのか?」


「基本的なのは全部終わってお母さんの許可がいるから、後のことはお母さんに任せた・・・」

「オーマイガー」


 真由美さんのことだ。そういうことは後に回すことなく、さっさと終わらせてしまうだろう。きっと今頃は同意書を出した後なのだろう。


「・・・キャンセルって出来るかな・・・?」


 同意書まで出した後ならば向こうの方で手続きが終わってる可能性が高い。


 最悪、違約金が発生してしまう。そうしてまで俺の家に戻って来いなどとは俺からは言いにくい。


「と、とりあえず不動産会社に連絡を・・・」

「もう営業時間すぎちゃってる・・・」

「だよなー」


 2人して頭を抱えていると真由美さんが部屋のすぐそばを歩く音が聞こえたので、すぐさま扉を開けて話しかけた。


「お母さん!」

「真由美さん!」


「あら、まだ起きてたの」


「お母さん、いつ同意書出した!?」

「あのアパートの?」

「そう!」


「まだ出してないわよ?」

「えっ?」


「司君が来てくれると思ったからよ。何のために年賀状出したと思ってるのよ」


「「よかったぁー」」


 初めから真由美さんの手のひらの上だったわけだ。


 年賀状を出したのも瑞希から事前にこっちに来る連絡を貰っていて、俺に居場所を教えるために送ったもので、初めからこの展開になると分かっていたというわけだ。


「瑞希は早とちりしすぎなのよ」

「・・・ごめんなさい」


「それにしてもこんな時間に2人でいるなんて、まさか・・・」

「ち、違います!」


***


「あれ?このイヤホン誰のかしら?」


 年が明けてから初めての出勤でりらホットに行くと、スタッフルームの机にイヤホンが置いてあった。


「ああ、それ早乙女君のだよ。忘れちゃったみたい」

「届けてあげてもいいですか?」


「世森さん、早乙女君の家知っているの?」

「もちろんです。1回行ったことありますし」


 ほんとは知らないけどね。1回行ってみたいと思ってたんだよね。


「じゃあ困ってるだろうし、届けてあげて」

「はい。ところで何号室でしたっけ?忘れちゃって」


 司君と話してて、マンションに住んでいるってことだけは知ってるんだけどね。


「えーっと、405号室だね」


 店長は予想通り、従業員の情報が書いてある紙を取り出して、私に教えてくれた。


 私も後ろから店長が見ているその紙を見て、司君の住所が分かった。


「あーそうでした。ありがとうございます」


***


「司君、留守かー」


 バイト終わりに来てみたけど、インターホンを押しても応答がなかった。


 ちぇー、司君のびっくりする声が聞きたかったのに。


 今日は諦めるしかないかと思って、立ち去ろうとすると、私の後ろにいた上品そうな2人が私と同じ部屋番号を押した。


「あれ?我が子の応答がないぞ」

「だから言ったでしょ。事前に連絡しなさいって」


 私は気が付くとその2人に話しかけてしまっていた。


「あの!司君のご両親ですか!?」

「・・・そうだけど、綺麗なお嬢さんは司の何なのかな?」


「司君の・・・彼女です!」

116話も読んでいただきありがとうございます。

このままで行くと100万PVまであと1週間程で達成できそうです!(おそらく大丈夫ですが、只今PVを計測するページに不具合が発生していて正確には分からないかもしれません)

これからも応援よろしくお願いします。

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