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 瑞希不在だからこそ水上希と桜井鈴賀を家の中に入れることが出来たわけだが、初詣に行こうと強引に来たこいつらをどう諦めてもらおうか。


「司先輩のご両親はお仕事ですか?」

「いや、両親は仕事場がここからじゃ少し遠いから違う家に住んでる」


「え、じゃあこの家に1人暮らしってことですか?」

「まあ、そうなるな」


「1人にしては広すぎませんか?」

「もしかして、彼女と同棲してるとか?」


「え!?そうなんですか!?」


「いやいや、してないから。鈴賀、適当言うな。彼女もいないし」

「ああ、そうですよね。よかった」


「良かった?」

「あ、あ!良かったって言うのは高校生の身でありながら、男女で2人っきりで暮らしてるなんて変態じゃなくて良かったって意味です!」


 変態・・・

 俺達はそういうのじゃないから!


「じゃあ、初詣行こっか」

「だから行かないって」


「なんで?用事ないんでしょ?」

「それはそうだけど・・・」


 素直に理由を話せるかっての。


「あ!」


 俺がどうやってこの窮地から逃げようかと頭を凝らしていると希が何かを見つけたような楽しそうな声を上げた。


「あれは、スウィッチじゃないですか!」

「そうだよ」


 希は俺の家にあったゲーム機を見つけると、分かりやすくテンションを上げた。


「やりたいです!」

「え、いやでも・・・」


 今日は早く帰ってほしいのだけど・・・


「私、子供の頃からゲームとかあんまり買ってもらえなくて周りの子がゲームやってるのところ見てていいなーって思ってたんです」

「うっ」


 そんな悲しそうに優等生の苦悩なんて聞かされてもダメなものはダメだ。


「かわいそうな、水上さん。いいよ、ゲームやっても」

「やったぁ!」


「ちょ鈴賀、勝手に許可出すな」


「こんなにかわいそうな水上さんのお願いも聞けないの?それとも初詣行ってくれるってこと?」

「・・・ゲームやってもいいです」


 早く帰ってもらうことはもう諦めた。初詣を行かないことになっただけで満足しよう。


***


「ほら、司も早くこっち来て。やるよ」

「俺もやるのか?」


「当たり前でしょ、何のために3人いるのよ」


 いや、別にゲームするためじゃないだろ。


 でも、何かやってなければ瑞希のことを思い出してしまいそうになるから、おとなしくゲームをすることにした。


「水上さん、何やりたい?」

「えーっと、これやりたいです!」


 選ばれたのはカートに乗って順位を競う超有名レースゲームだった。


 希が慣れない手つきでコントローラーを操作してソフトを起動させようとした。

 

『遊ぶアカウントを選んでください』


 俺のゲーム機に登録されているアカウントが3つ表示された。


Tukasa Haruki Mizuki


「Harukiって黒瀬先輩ですよね。お2人仲いいですよね」

「でも、隣のmizukiって・・・」


 まずい!


「司、これ誰?女の人の名前だよね?」

「か、母さんだよ」


「ゲーム好きなお母様なんですね」

「そ、そうなんだよ」


 瑞希はともかく、同学年の鈴賀は瑞希の下の名前は知っているはずだけど、まさかそんな人物が俺のゲーム機にアカウントを作っているなんて微塵も思わなかったのか、幸い気づかれずに済んだ。


***


 ゲームが始まってから結構な時間が経つが2人は飽きることなく楽しそうにゲームに熱狂していた。


「おりゃぁー!」


 でも、こんだけやっているのに希は全然最初の頃からうまくなってない。


 鈴賀はだいぶ慣れたのか、俺と競うくらいには上手くなっているが、希の方は未だにカーブを曲がるときは体が激しく傾いている。


「うわぁ!」


 激しいカーブを曲がるときに希は体を傾けすぎて、こちらに倒れかかってきた。


 そして、あぐらをしていた俺の足の中にすっぽりと横顔が埋まった。


「ちょ、おい!」

「あはは、すみません。体も一緒に動いちゃいました」


 そう言いながらも、希は体勢を戻すことなくゲームを続行する。


「なんで戻らないんだよ」

「だって、こうしとけば体が傾かないで済むじゃないですか」


 それはそうだけど、この体勢は色々とまずいから早く戻ってくれ。


「ってもうこんな時間じゃないですか!」

「そうか?」


 そんなに時間が経ってたかと思い、時計を見ると16時を指していた。


 まあこれくらいだよな。それとも、この後予定でもあるのか?


「私門限17時までなんですよ!もうそろそろ帰らなくちゃいけないです!」


 流石希、高校生で門限が17時とか優等生すぎる。


「じゃあ私も一緒に帰ろうかな」


 希が俺の足からようやく抜けて2人とも帰る支度を始めた。


「次は一緒に初詣行ってくださいよ」

「分かった、次は行くから」


 それまでに本当の初詣は済ませておかないとな。


「司、ここら辺にコンビニない?買うものあるんだよね」

「それなら出て右に曲がってまっすぐ行くとあるよ」

「ありがと」


「そういえばこの近くに涼風先輩も住んでいるんですか?」

「え、あの涼風さんが!?」


 突然希の口からその名前が出てきた。


 近くというかここだけど。


 まさかこのマンションに入っていくところを見られたとかか!?


「い、いやー知らないなー?どうしてそんなことを?」


「そうだったんですか。この前4人で帰っているとき、コンビニの辺りで後ろに涼風先輩の姿を拝見したので、家がこっちなのかなと思っただけです」


 え?


「一緒に帰った時?」

「はい、土曜日の偶然下駄箱で先輩たちと会って帰った日です」

「あーあの日ね。司が私のクラスにいきなり来た次の日で、私に告白したんじゃないかって翌日には噂になってたよ。ほんとは逆なのにね」


「その噂、結構有名だったりする?」


「どうなんだろう。私のクラスでは結構聞いたから他のクラスでも友達が多い人とかは知ってるくらいだと思うけど・・・」


 確かその日、俺が帰った時やけに瑞希のテンションが低いような気がした日だ。


『司の家に住むのはもっとふさわしい人がいると思うから』


 俺の頭の中で色々なことが繋がっていった。

114話も読んでいただきありがとうございます。

たくさんの応援本当にありがとうございます!めちゃくちゃモチベ上がりました。100万pv達成時には予定よりいっぱい投稿したいと思います!

これからも応援よろしくお願いします。

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