表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/143

1人の暮らし

「明後日のお昼に新幹線なら空いてたぞ」

「じゃあそれを取ってくれ」


 瑞希に会いに行く場所、時間が決まった。


 本当は明日が良かったのだが、時期が時期のため、そんなにうまくはいかなかった。


「まあ、丁度よかったんじゃないか?明日中考える時間が出来たと考えれば」

「・・・確かにそうだな」


 今現状ではなぜ瑞希が急にこの家を出て行ったのか分からない。


 喧嘩は特にしていない。小さいことが積み重なったとしたら、瑞希は直接言ってくるタイプなので、こうやって黙ってどこかに行くとは考えにくい。


 それに、手紙に書いてあったもっとふさわしい人って・・・?


「そんじゃこれ以上、俺がいたって何も変わらないようだし、帰るわ」

「すまんな、今日は初詣行く予定だったのにこんなことになって」


「気にすんな、初詣は今年中に行ってくれれば初詣になるからな。この件が終わったら3人で行ってくれればそれでチャラだ」

「・・・おう。ありがとうな」


 こういうセリフを言うのだから遥紀の友達はやめられない。


 遥紀が帰り、家の中が1人になると、急にお腹の減りを感じた。


 そういや、今日1日何にも食べていなかった。


 そんな気力は出ないと分かっていながらも、惰性だけでキッチンに立ち、簡単な料理を始めた。


 以前の俺ならここで料理をするという選択肢は生まれなかっただろう。


 それほどまでにこれまで2人で過ごした時間は俺に影響を与えていた。


「よし、何とか出来た。あとは盛り付けてっと・・・」


 完成した料理を皿に盛り付けていく。


「あーくそっ」


 自分の分を皿に盛りつけ終わっても、鍋の中にはもう一人分が残っていた。


 もっとふさわしい人って誰だよ。


 この家にはお前以外、相応しい人なんていないだろ・・・


***


「あっ・・・もう朝か」


 昨日の夜もう一度考えてみたがやはり原因は分からない。


 深く考えているうちに自然と眠りについていたらしい。


 時刻を確認するともうお昼時で、寝た気はあまりしないが、体を起こして部屋を出る。


「おはよう」

「・・・」


 当然「おはよう」の声が返ってくることはないのは知っていたが、なんとなく「おはよう」は言わないといけない気がした。


 そうして、朝ごはんを1人分を作った。


 当たり前のことだが、2人より1人分を作る方が楽だ。


 だけど、2人分を作る方が俺には心地が良かったことに気づいた。


「くっそ、何すりゃいいんだよ」


 新幹線のチケットは明日だ。今日俺に何かできることはない。


 遥紀も今日から親戚の集まりでこっちにいない。


 明日の鳥取にも当然遥紀は来ない。用事ががなかったとしてもこれは俺達の問題で、これ以上遥紀に付き合わせるわけにはいかない。


 今日一日予定はないし、するやる気もわかない。


「することもないし、寝るしかないか」


 さっき起きたばっかりだというのに寝れば時間は経過するため、この孤独感を感じなくて済む。


 そう考え体が実行に移そうとしたとき、スマホの着信音が鳴る。


 遥紀か?瑞希なはずもないし・・・


 スマホを手に取って確認する。


『司先輩、初詣行きましょう!今日!桜井先輩と黒瀬先輩も呼んで4人でどうですか?』

『遥紀は親戚のところにいるから初詣は無理だぞ』

『じゃあ、司先輩だけでいいです』


 妥協した感じを出すな。


『俺も今日はちょっとな』

『何か予定ある感じですか?』


『いや、それはないけど』

『じゃあ行けるじゃないですか!ところで今はおうちにいるんですか?』


『まあ、いるけど』


 もしかして、俺の家まで来ようとしているのか?


 それだけは阻止しないと。


 すると、俺が何か対策を講じるメッセージを追加で送る前にインターホンが鳴った。


 嫌な予感が・・・


「司せんぱーい!来ましたー!初詣行きましょー!」


 もう来てんのかよ。


「今日は無理」


「なんでですか!?今日暇なんですよね!?行きましょうよ!」

「そうだぞー、こんなに美少女の2人が来てあげてるのに!」


 初詣には先約がある。でもそれを言ったら誰と行くのか詰められるので言えない。


 だが、この2人の表情からは諦める気持ちがなさそうだ。


 このままエントランスで粘られると、この2人の容姿も相まって、噂されかねない。


「分かった、分かった。とりあえず、上がっていいから」


 全くもって本意ではないが、これが取れる最善手。


「ほんとですかっ!?」

「ほんとだから、そんなテンション上げるな」


 人の家に上がるだけそんな嬉しいものか?


「おじゃましまーす」

「お邪魔します!」


「あれ?司のことだから部屋はもうちょっと散らかってると思ったのに意外ときれいにしてるじゃん」


 この前に大掃除をしたし、そうじゃなくても瑞希と暮らすようになってリビングの周りはある程度綺麗にしてある。


 瑞希は家を出るときに自分のものを全て持って行ったから、瑞希がこの家にいたという痕跡はない。


 本当は同居がバレないこの状況を嬉しく思うはずはずだが、俺はなんだか不満のような気持ちを抱いた。

113話も読んでいただきありがとうございます。

累計100万PVまであと約3万PVになりました。

達成した時には感謝として以前同様、複数話更新を予定しております。

これからも応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ