手がかり
再掲
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「瑞希っ!」
何かの冗談なんだろ?
そうやって言えば俺が焦ると思って書いているんだろ?
今もどこかの後ろに隠れていつ出てきてやろうか機を伺っているんだろ?
俺は懸命に家中を探すが、瑞希の気配は全くと言っていいほどなかった。
電話をかけても瑞希が出ることはなかった。
・・・まさか、本当に?・・・噓だよな?
その瞬間、インターホンが鳴る。
なんだ瑞希のやつビビらせやがって、隠れるためにわざわざ家の外に行ってたのかよ。
少しの安堵を含みカメラ越しに確認すると、心のどこかでは分かっていたが、やはり俺の求めていた人物とは違っていた。
「司~、暇だったから早く来ちゃった」
「・・・入ってくれ」
「お邪魔しまーす」
「・・・」
「何これ!めっちゃ美味そう。しっかり涼風さんの分も作ってあるし。・・・ってあれ?涼風さんは?部屋にいるの?」
「いない」
「買い物行ってるとか?」
「いや、今日起きたらこれが・・・」
遥紀に先ほど見た置手紙を見せた。
「えっ、なにこれ・・・?・・・ドッキリとかじゃなくて?」
俺は静かに顔を横に振った。
これからどうしていけばいいのだろう。
今どこにいるのか分からない。連絡も取れない。
動揺でまともな案が浮かんでこない。
「・・・うしっ!じゃあ探しに行くか!手始めに駅前とか!」
「えっ・・・」
状況を今知って混乱しているはずの遥紀から出たはっきりとした声に反応できなかった。
「えっじゃねえよ、探すんだろ?考えるのは後でもいいんじゃないか?」
「・・・・・・そうだな、なんかどうかしてたわ」
探さないでどうするんだよ、ごちゃごちゃ考えるのは会ってからでも遅くないはずだ。今は見つけることが最優先事項だ。
それから俺と遥紀は、二手に分かれて辺りを捜索し始めた。
駅前やよく行ったショッピングモール、学校まで、思いつくかぎりの場所を探しつくした。
だが、日が暮れてきても瑞希の姿を見つけることが出来なかった。
「あとここら辺で涼風さんが行きそうなところは?」
「・・・もう分からない」
もう思いつく場所は全て行った。でも諦めることは出来ずに足は動き出す。
「あっ!おいどこ行くんだよ」
「とりあえずここの周辺を探す」
「こんだけ探したんだから闇雲に探しても見つからないって」
「でも・・・」
はいそうですかとはいかない。
遥紀に何と言われようとも、夜が来たとしてもそのまま家に帰ることは出来ない。
もう一度駆けだそうとすると、ポケットに入れていたスマホが着信音と共に振動する。
そんな通知など無視しそうになるが、走り出すまであと一歩のところで頭は少し冷静になった。
グループのメッセージは着信をOFFにしているし、個人から頻繁にメッセージが届くなんて、遥紀と瑞希くらいしかいない。
遥紀はここにいてメッセージを送らないとなると・・・
急いでスマホを開いて、発信元を確認すると、そこには瑞希の文字があった。
『言い忘れていたことだけど、今私はお母さんがいる、おばあちゃんの家にいます。もし探してくれていたらごめんなさい』
これだけの短い文章が送られて来ていた。
居場所は分かった。
もうすぐ日も落ちて寒くなるのに、行くところもなく彷徨ってはいないと知ってひとまず安心した。
でも・・・
「なんだ、涼風さんおばあちゃんの家にいるんじゃん。じゃあそこに行けば解決だな。おばあちゃん家ってどこなんだ?」
「鳥取」
「マジかよ、随分遠いな。でも行くしかないけどな」
「・・・しか分からない」
「ん?しかって、まさか鳥取ってだけで住所は分からないのか!?」
「ああ」
瑞希から鳥取とだけ聞いた。詳しい場所は聞いてない。
「でも、行くしかない」
「お、おい!ちょっと待てって。今からじゃ新幹線も飛行機も予約を取れやしないし、行ったとしてもそこから探すなんてそれこそ不可能だ」
「じゃあどうすればいいんだよ・・・」
瑞希のお母さんの連絡先を知っているわけでもない。聞き出すことも不可能だ。
「落ち着け、一度家に戻るぞ」
***
「それで、何か心当たりはあるのか?」
「いや、全く。昨日まで普通だった」
大晦日の大体の流れを遥紀に話した。
「・・・夜遅くまでゲームをして、寝落ちをして、起きたらもう姿はなかった」
今思えば、あんなに強引に夜中のゲームに誘ったのは朝、俺の家を出るときに俺が起きないようにだったのか。
「それは直接聞くしかないか。でも場所は・・・」
「分からない」
やはり、今から駅に向かって、がむしゃらにでも探しに行くべきか?
いや、遥紀の言ってた通り、今日は元旦でどこも予約はいっぱいか。行く手段もない。行っても見つけるまでに何日かかるか分からない。
瑞希も俺が場所を突き止めることが出来ないと知っているから居場所を明かしたんだろう。
じゃあ本当にこのまま会うことは出来ないのだろうか。
・・・ん?元旦?
「あっ!」
「どうした?」
「一番早い鳥取に行く新幹線か飛行機を取ってくれ!」
俺は一目散に玄関の扉を開けて、外に飛び出した。
あるじゃないか。今日しか使えない今日なら使えるおばあちゃん家の住所を知る方法が。
112話も読んでいただきありがとうございます。
読者の皆様はこの方法気づきましたでしょうか?簡単過ぎたでしょうか?
これからも応援よろしくお願いします。