表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/143

大掃除

「ただいまー」

「おかえり・・・」


 なんだか、おかえりのテンションがいつもよりも低い気がした。


「なんかあったのか?」

「うん?何もないよ?」


 俺の気のせいだったか。


「あ、そうだ、瑞希今週の週末暇って言ってたよな。付き合って欲しい場所が・・・」

「ごめん、週末予定入っちゃって」


 なんだかいつもの瑞希とは違う感覚を覚えたが、その正体は分からずじまいだった。


***


「じゃあ、三学期も元気で来るように。以上」

「気を付け、礼」


 12月の下旬になり、年内の学校は終了した。


「きたぁ~二学期終了だ~!」

「テンション高いな、お前は」


 遥紀はいつも通り、テンションが激高だった。


「だって、二学期終わったんだよ。大晦日だよ!お正月だよ!」

「だからなんだよ」

「司の家にお泊りでも行こうかな」


「え、ダメ」

「ダメって言われても行くから」

「ダメって知ってる?」


 こういう時に遥紀の国語力は著しく低下する。


「あと初詣行こうぜ、涼風さんと3人で」


 俺は初詣なんか寒くて人も多い時に行ってられないので、いつもは年を過ぎて、初詣と呼べるかギリギリのラインで神社にお参りに行っている。


 でも瑞希の好きそうなイベントだ。どうせここで俺がOKを出さなくても瑞希に直接聞くに違いない。


 俺がここで何を言っても結果は変わらないのだ。


「じゃあ、今年は行きますかな」


 判断は諦めて、初詣を楽しむことにした。


***


 日付は過ぎ去り12月31日。


「今日は年越しだから、晩ご飯は年越しそばでーす!」

「やったー」


 俺が元気がないと勘違いした日の翌日には瑞希の様子は元通りになっていた。


 それが本当に俺の気のせいだったのか、それとも何かがあったのかは今になっては分からないが、ともかく元気なったのなら良かった。


 そんなわけで今日は大晦日だ。


 大晦日と言えば、コタツに引きこもって、大晦日の豪華なテレビ番組を見るほかにない。


 まだお昼だってのに、番組はいつもと顔ぶれが違って楽しい。


 今日はひたすらこれで過ごそう。


 と思ったら、素早くコタツが解体されて、俺の身体に冷たい風が当たる。


「おい!俺の楽園を何するんだよ!」

「司、コタツに入りすぎ。今日は大掃除する約束でしょ?」


「だから、この番組見終わったらやるって」

「それ言ってもう3日も大掃除から逃げてるよね」


「今日は本当だって」

「ぜったいだめ。今日やらなかったら新年迎えちゃうんだよ?だからコタツは大掃除が終わるまで解体したまんまにしておきます」

「そんな」


「そんなに絶望したような顔したって、無駄。ほら、やるよ」

「はーい」


 それから、俺達は3時間もの間、掃除に取り掛かった。


「この家無駄にでかいんだから、掃除が大変」

「無駄とか言うな」


「だって、私が来る前は司1人で住んでたんでしょ?私がいたって広いのに」

「それは、遥紀とか来てたし・・・」


「うわっ、家に来る友達、黒瀬君しかいないんだ。かわいそう」

「おいこら、お前なんか猫被って友達1人もいないじゃねえか!」


「きゃー司が怒ったー逃げろー」

「待てゴルァ」


 瑞希を追いかけると、通りがかった瑞希の部屋が半開きになっていて、自然とそこに視線が吸い寄せられた。


「めっちゃ綺麗じゃん」

「え?ま、まあ当たり前じゃん」


 部屋はとても綺麗にされていて、埃1つ見えない。窓も綺麗に拭かれていて、まるでその部屋だけは新築のような輝きをしていた。


「あれ?トランクなんて持ってたっけ?」


 瑞希の部屋の隅に置かれたトランクを見つけた。


「えっとーそれは、この前買ったの。この先旅行とか行くかもしれないし1つくらいは持っておかないと思って」

「まあ確かに」


「それより司の部屋はもちろんこれくらい綺麗だよね?」

「えっ!も、もちろんじゃん」


「じゃあ行ったっていいね」

「あ、それは別に必要ないと思うよ。だって綺麗だし」


「だってが意味不明すぎ。散らかっているのかくてーい。はい、片づけるよ」

「そんな~」


「私だって鬼じゃないから物が床に落っこちてなきゃいいから」

「・・・それが大変じゃんか」


 そうして、追加で30分の時間を使って、ようやく大掃除は終了した。


「はぁ~おかえり俺のコタツ」

「帰ってきたのはコタツじゃなくて司の方でしょ」


「うるさい、元々コタツを亡き者にしたのは瑞希だ!」

「その元凶は司が掃除しなかったからでしょ」


「うっ、すみません」


 ぐうの音もでない反論に俺は反論する言葉が見つからなかった。


「認められたのは良しとしよう。ご褒美に年越しそばのてんぷらはいっぱいにしてあげよう」

「やったー!」


「じゃあ、買い物に行ってくるから待っててね」

「いや、俺が買ってくるよ」


 立ち上がろうとした瞬間、瑞希に止められる。


「いや、私はてんぷら以外にも他買い物あるし、司はそばの方の準備をしておいて」

「そういうことなら分かった」


「じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


***


 それにしても、瑞希の部屋は綺麗だったな。


 でも、あんなに綺麗だったら次に使うときに躊躇いそうだ。

110話も読んでいただきありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、よろしければブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。私のモチベが爆上がりします。(感想もぜひぜひ)

これからも応援よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
瑞希、お前消えるのか……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ